174話 万能薬ゲット
フェリンの祖父でありティアーナの森の村長が住んでいる家に案内され中に入れてもらえたのだが、かれこれ十分以上フェリンが家族に怒られていた。
「結界の外に出てはいけないとあれ程言って聞かせたというのに。」
「反省しておりますからもう勘弁して下さい。」
櫓達の前で永遠にお説教されるのは恥ずかしいらしい。
フェリンは羞恥で顔が赤くなっている。
「本当に感謝します櫓殿とお仲間の方々。」
「何も無い所だけどゆっくりしていってね。」
フェリンの父母は櫓達に向けて頭を下げて感謝している。
「気にしないで下さい、成り行きですから。」
櫓は珍しく敬語を使って答える。
普段使わないだけで、目上の人に対しては拙いながらも使う努力はしているのだ。
フェリンの父母は見た目がフェリンと殆ど変わらず、二十歳前後と言われても違和感が無い程の美形だ。
しかし調査の魔眼を使って視たので二人の年齢が三百歳を超えているのを櫓は知っている。
そして櫓以外にメリーとシルヴィーが一緒に居るのだが、櫓が敬語で喋っているのが面白いのか笑いを堪えるので必死だ。
「お父様お母様、お説教は後で幾らでも聞きますから、お祖父様の下に行かせて下さい。櫓様達がこの森を訪れたのはもう一つ理由があるんです。」
「理由?」
「道中複数の呪いを受けた女性に出会ったのですが、持っているポーションでは治療が出来なかったので、万能薬を譲って頂ければと。」
櫓がフェリンの後に続いて説明をする。
「そう言う事か、それならば父上の許可を得るまでも無い。娘の命の恩人にならば喜んで差し出そう。」
そう言ってフェリンの父が目配せをするとフェリンの母が部屋から出て行き木箱を持って戻って来た。
「この箱の中に万能薬が入ってるから、その子に使ってあげて。」
「助かります。」
櫓は受け取るとボックスリングの中に仕舞う。
「ティアーナの森に滞在している間は、是非うちの家で過ごしてくれ。フェリン、空いている部屋への皆さんの案内は任せたぞ。」
「その前に万能薬を使ってあげなくちゃね。それと村の中も案内してあげたら?エルフの森に入る機会なんてそう無いでしょうし。」
「そうですね、一先ずは馬車に向かいましょう。」
フェリンの父母と別れて部屋を出る。
「万能薬は高価なポーションと聞いていましたから、簡単に頂けて拍子抜けしましたわ。」
「エルフからすれば使い道がそこまで無いのよ、大怪我をする事なんて無いからね。冒険者をやるようになってから有り難みが分かったけど。」
冒険者は常に死と隣り合わせの職業だ。
ポーションの中で最も優れている万能薬を所持出来ていれば、安心感は計り知れない。
「ほっほっほ、万能薬は人間達にとっては国宝物じゃろうて。」
声のした方を見ると長身短髪のイケメンエルフが立っていた。
エルフにしては珍しく身体付きがしっかりしており、良く鍛えられているのが分かる。
ティアーナの森を訪れてから見た中で一番の実力者と一目で判断出来る。
「お久しぶりですお祖父様!」
「と言う事はこの方が村長さんか。」
「そう言う事じゃな、孫娘を無事送り届けてくれた事には感謝しとるぞ。」
差し出された手に応じて櫓も手を差し出し握手する。
お祖父様と言われている村長だが、年寄りの衰えなど一切感じさせ無い。
一体何歳なのかと櫓は調査の魔眼を使って村長を視た。
なんと年齢は八百歳を超えていた。
エルフは長命種だと知っていたがここまで長生きだとは知らず驚いた。
「それにしても大事な家族を連れ帰ってもらって万能薬一つとはケチくさいと思わんか?」
村長はそう言ってフェリンを見る。
「え?それは、お渡し出来るのでしたら幾つか増やしたいですけど。」
フェリンとて櫓達には感謝している。
お礼に便利な万能薬を沢山あげたいと思っているが、そもそも家に置いてある数がそんなに無いのだ。
万能薬は便利であるがエルフ達が使う事は稀なのと、作るのに非常に時間と手間が掛かるという理由で量産してはいないのだ。
「なにも万能薬として渡さなくても良いじゃろう。世界樹の葉や世界樹の枝と言った素材を渡せば、あの変わった馬車を作ったお主なら作れるじゃろう?」
そう言って櫓の方を見る村長。
「なんで馬車を作ったのが俺だと分かったんですか?」
「馬車が若干の魔力を帯びておったのを見てな、お主の魔力と同じだったので作ったのがお主なのではと思ったのじゃよ。」
馬車を作る際に櫓は魔力を多量に使用したが、それから時間が大分経っているのに、その残滓を見て判断したと言う。
櫓とてそんな少ない魔力を見る事は出来無い。
これだけでも村長が只者では無い事が良く分かる。
「貰えるので有れば俺も有り難いですけどね。」
「そうじゃろうそうじゃろう。他にも何か欲しい物が有れば遠慮無く言うといい。」
「それなら是非俺達に稽古をつけてほしいですね。」
明らかに強いと思える村長と手合わせ出来れば、自分達の成長にも繋がるかもしれないと思い提案した。
櫓の言葉を聞いて村長は不敵な笑みを浮かべた。
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