171話 自己完結
魔人を倒し終えた後に村を見て回ったが、黒尽くめの男の手掛かり等は見つからなかった。
そして村人の生き残りも見つからず、全員が呪いによって命を落としていた。
このまま放置しては村人全員がゾンビとなってしまうので、ネオンのスキルで村を丸ごと焼いて供養した。
その後は馬車に戻って情報を共有したが誰も黒尽くめの男について知っている者はいなかった。
村人は助けられなかったが紗蔽はメリーのおかげで呪いの進行を止められているので、エルフが住むティアーナの森を目指して進む。
途中でメリーが紗蔽に掛けた呪いの効果が切れてしまったが、掛け直す事によって再び呪いの進行を止められた。
そして四日目の朝方には鉱山都市ミネスタの近くまで来ていた。
「もう直ぐ見えてくるはず・・、あったわ、あの森よ。」
メリーが指差した方角に大きな森が見えて来る。
現在は御者をメリーがして、隣に櫓が座っている。
ティアーナの森に行っても櫓達人間は歓迎されないだろうと分かっている。
そしていきなり攻撃を仕掛けられる可能性もあるので、一先ず櫓とメリー以外の者達は馬車内で待機してもらう事にした。
「普通の森に見えるな。」
「近くに行けば分かるけど結界が張られてて、ティアーナの森自体は隠されてるのよ。」
「なるほどな。」
近くには五大都市の一つである鉱山都市があるので、対策をしていなければ大勢の人間が押し寄せて来てしまうので当然の事だ。
森の近くまで来てから馬をゆっくり歩かせて進んで行く。
「ん?なんか不思議な気持ちだな。これ以上進みたく無くなってきたぞ?」
「それが結界の効果よ。人間にこれ以上進むと危険だと錯覚させる効果を持っているの。」
メリーは説明しながらもそのまま進んで行く。
「今結界を通り過ぎたから効果は無くなったでしょ?」
「ああ、それに景色も少し変わったな。」
森の中なのは変わらないが、結界を通る前までと違って道があった。
そして急に遠くに複数の気配が感じられる。
「あっちに複数の気配を感じるから取り敢えず進んでみるか。」
「分かったわ、と言っても結界を通り過ぎた私達に気付いて向かって来ると思うけど。」
馬車をゆっくり進ませているとメリーの言う通り此方に何人か向かって来ている。
「そこの馬車よ止まれ!」
木の上から良く通る声で言われた。
メリーは指示に従って馬車を止める。
声のした方を見ると弓に矢をあてがった状態のフードを被ったエルフが居る。
一応人間である櫓が見えているので正体を隠しているつもりらしいが、調査の魔眼でエルフと視えている。
周りの木にも同じく弓や杖を構えていつでも攻撃出来る状態の者達が見える。
「今すぐ来た道を戻れ!これ以上進めば攻撃を開始する!」
「待って、争いが目的じゃ無いの。話を聞いてちょうだい。」
「人間と話す事など無い!」
「私は人間じゃ無いわ、貴方達と同じエルフよ。」
メリーはそう言って全身ローブの頭の部分を後ろに捲り上げる。
「エルフだと!?だがティアーナの森のエルフでは無いな?」
「ええ、それよりも話を・・。」
「人間の奴隷に降り、別のエルフの森の情報を流したと言う事か。」
「え?いやそんな事・・。」
「遠慮はいらん、エルフ共々やってしまえ!」
此方の話を一切聞かず勝手に話を纏めてしまい、周りのエルフ達に攻撃の指示を出すと一斉に矢と魔法が馬車に向かって放たれる。
しかし櫓が金を掛けて作った馬車には、自動障壁を展開して馬車を守る機能が付いているので、馬車を引いている馬も御者台に座っている櫓とメリーも無傷である。
「馬鹿な!?攻撃が効いていないだと!?」
「だから勘違いなんだって、私の話を・・。」
誤解を解く為に再び話し掛けるが相手は聞く耳を持たない。
「黙れ裏切り者め!総員攻撃の手を緩めるな!」
メリーの言葉をぶった斬り仲間へ攻撃の司令を出す。
馬車はまた集中砲火を受けて障壁がそれを受け止める。
「ううう、櫓く〜ん。」
話を聞いてもらえず裏切り者扱いされたメリーは涙目で櫓の方を見ている。
フェリンを攫われたティアーナの森のエルフ達を刺激せず穏便に事を運ぶ為にメリーが話し合いをする事になっていたのだが、相手が全く取り合ってくれずにどうしていいか分からない様だ。
「話し合いは無理そうだな。」
「ど、どうしよう。」
「少し荒っぽい方法で良いなら俺がやるぞ。勿論怪我をさせるつもりは無い。」
「しょうがないか、お願いするわ。」
メリーからの許可が降りると櫓は威圧のスキルをエルフ達に向けて使う。
すると雨の様に降り注いでいた攻撃が一瞬止まる。
その隙を見逃さず、雷帝のスキルで足に雷を纏い御者台から移動して、エルフ達に指示を飛ばしていた指揮官らしきエルフの背後に回り込む。
「全員動くな、このエルフの首が飛ぶぞ!」
櫓は霊刀をエルフの首に突きつけ、周りのエルフ達に向けて言い放った。
効果的面でエルフ達は武器を下げてくれたが、メリーはやり過ぎだと顔を手で覆っていた。
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