163話 扱いやすいエルフ
「それでティアーナの森は何処にあるんだ?」
櫓がメリーに聞くが、やはり直ぐには答えずフェリンの方を向く。
「この御三方ならば大丈夫ですので、教えて頂けますか?」
「分かりましたフェリン様。三人共今から場所について教えるけど、絶対絶対ぜーったい他の人に喋ったらダメだからね。」
「直ぐ答えなかったのはそう言う事か。」
「確かに人間である我々に話すのはデメリットが大き過ぎますからね。」
エルフの森の場所が知られてしまえば、奴隷として捕まえようと多くの人間がその場所を訪れる危険がある。
三人の事を信用しているメリーであっても簡単に話してはいけない内容なのだ。
「それなら場所について話す前に一つ確認させてくれ。俺には他に三人のパーティーメンバーが居るが、説明はどうすればいい?」
ネオン達に限って言いふらしたりしないと思うが一応聞いておく。
「どうしますかフェリン様?」
「元々ご主人様には寛大な処置をして頂いているのです。文句ばかりも言っていられません。それに私のスキルが最善の判断だと言っていますから。」
フェリンを調査の魔眼で見た時に一つのスキルを所持していたのを櫓は確認していた。
スキルに関しては本や人伝に情報を仕入れまくっているのだが初めて見るスキルだった。
スキル名を天啓と言い、自分がスキルを発動させながらやりたい事を思い浮かべると、幾つかの行動の選択肢と予想される結果を教えてくれると言うものだ。
あくまでも予想なので多少の違いはあるが、より良い未来を常に選択出来るのだ。
しかしこのスキルは常時機能している訳では無いので、使わないと効果を発揮しない為、人間に捕まってしまったのだ。
「分かりました。良く聞いてね皆、フェリン様が住んでいるティアーナの森は、五大都市で言う所の鉱山都市ミネスタの近くにあるわ。」
「ミネスタですか、懐かしいですね。」
「私は他の五大都市には行った事が無いから少し楽しみだよ。」
「そのミネスタと言う場所は遠いのですか?」
フェリンは人間の国の名前で言われてもどの場所にあるのかは分からない。
櫓とユスギは行った事が無いが、メリーと藍は昔行った事がある様だ。
「馬だけならば一週間、馬車ならば十日前後と言ったところでしょうか。」
エルフ達が戦いを起こすかどうか分からないが、連携を取るまでに残り二週間程しか無いので、馬車の移動となればギリギリとなる。
「早速移動した方がいいのではないでしょうか?」
「途中でトラブルが起きないとも限らないもんね。」
「私も今直ぐに向かうべきかと思いますが、どうしますかフェリン様?」
希望の光の面々は、今から鉱山都市ミネスタへ向かう事を提案している。
問われたフェリンは櫓の事を見ている。
今は奴隷なので主人である櫓の判断を聞く為だ。
「今日明日を旅の準備、明後日出発にしよう。」
櫓の意見はメリー達とは違い随分ゆっくりしていた。
「ちょっと、時間が無いって言ってるでしょ!そんなに時間掛ける余裕は無いわよ!」
「流石にこれはメリーに同感かな。間に合わなかったら戦争になるかもしれないんだしさ。」
メリーとユスギは櫓の意見に文句を言ってきている。
と言ってもこうなる事は簡単に予想出来た。
「藍は反対しないのか?」
「櫓さんの事です、何か考えがあってそう提案しているのでしょう?」
「まあな、準備の期間でちょっと馬車を改良したい。そうすれば馬車でも五日程で着けると思うぞ。」
櫓の言った事に皆が驚いている。
本来馬車で掛かる時間の半分で着けると櫓は言うのだ。
「ほ、本当にそんな事出来るの?」
「ああ、お前達も馬車に乗る事が前提だけどな。」
櫓はオークションで奴隷以外にも何個かの素材を落札していた。
それらは馬車の改造に使おうと思っていた物で、性能が更に上がる事になる。
現在の段階でも馬車の中が空間魔法によって広くなっていたり、馬車が重力魔法で軽くなっており馬への負担を減らしていたりと、普通の馬車とは比べ物にならない性能を持っているのだがそれを更に伸ばせるのだ。
「馬車で五日ならば明後日でも良さそうですね。」
「うんうん、馬にずっと乗りっぱなしだとお尻痛くなってきちゃうしね。」
「ならそれで問題無いな、いいよなフェリン?」
「ご主人様の決定に文句等ありません。」
全員と言うか特に希望の光が了承したのを見て、櫓はボックスリングから取り出したわら半紙に文字を書いていく。
「何書いてるの?」
メリーに聞かれて、書いた紙を渡す。
「なんか素材がいっぱい書いてるわね。」
「馬車の改良に足りない素材だ。快適な旅をしたいから集めるの宜しくな。」
櫓はおつかいを頼むノリで言うが言われた側は分かりましたとはならなかった。
「希少な素材が多いですね。」
「明日でこれ全部集めろって言うの!?キツすぎるでしょ!」
「すこし高い馬車代と思えば、Aランクパーティーなら払えない額じゃないだろ?それにエルフのお姫様を何日も馬車に乗せるなら少しでも環境を良くした方が良いんじゃないのか?」
言った事に嘘は無いが、タダで馬車の素材を大量に入手出来るチャンスと言う下心が無い訳では無い。
フェリンの為だと言われればメリーには否定する事は出来無い。
「藍、ユスギ、今から取り掛かるわよ。」
「はぁ・・、やはりそうなりますよね。」
「お兄さん、これでショボい馬車だったら許さないからね!」
メリーが勢い良く歩いて行き、その後ろを溜息を吐きながらの藍と捨て台詞を吐いたユスギが追いかけて行った。
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