162話 リアルお姫様
「ごめんなさい。」
メリーが深々と櫓に頭を下げて言った。
先走って暴走したメリーにフェリンの事を説明して、誤解が解けたのだ。
お詫びに奢ると言う事で、今は喫茶店の様な場所に入り、櫓は高級な果汁水を楽しんでいた。
「どう考えたら俺がエルフを奴隷として捕まえるって言う発想になるんだ。」
「いきなりだったからつい、それに櫓君も人間だからもしかしてって思っちゃったのよ。」
「前にエルフが奴隷として捕まってたら助ける様にするって言ってた気がするんだがな。」
「うっ・・、謝ったんだから許してよ!」
「そのくらいにしてそろそろ本題に入りませんか櫓さん?」
このままではメリーが櫓にイジられ続けるのを見ていなければならないと思い、藍が本題を促す。
「フェリンを落札したのはいいが、この後どうすればいいのかと思ってな。エルフの事はエルフに聞くのがいいと思って探してたんだ。」
フェリンの住んでいた場所に送ろうかと場所を尋ねたのだが、人間の地名でなんと言うのか分からないのと、捕まって遠くまで連れてこられたらしく帰り方も知らないと言う。
「名誉挽回のチャンスね、私に任せなさい。貴方の住んでいた森の名前は覚えているわよね?」
「はい、ティアーナの森です。」
「あらら、結構遠くまで連れてこられたのね。」
メリーにはその場所が何処なのか分かるらしいが、他の者達は聞いた事も無い。
「森の名前と同じって事は、重要人物なのか?」
フェリンの名前にもティアーナが使われていたのを疑問に思って口に出したのだが、その言葉でメリーの動きが固まった。
「森と同じ名前・・?え、ちょっと待って・・。フェリンさん?貴方の名前をもう一度教えていただいても?」
壊れた人形の様に首がゆっくりと動きフェリンの方を向くメリー。
「私はフェリン・ティアーナと申します。」
「なっ!?」
メリーが驚いた声を上げたかと思うと、テーブルに頭を擦り付けんばかり下げている。
「ししし、失礼しました。まさか姫様とは知らず、失礼な発言を。」
「か、顔を上げてください、気にしていませんから。」
メリーの態度にフェリンもおろおろと慌てている。
「姫?フェリンってお姫様だったのか?」
「ちょっと櫓君!言葉遣いに気を付けなさいよ!」
「い、良いんです、今は私のご主人様ですから。」
それからフェリンについての事を教えてもらった。
メリーの言った通りでフェリンは、ティアーナの森のお姫様だと言う。
調査の魔眼では姫かどうかなど視え無いので櫓が分からないのも仕方ない。
エルフの森の名前と同じ家名を持っている者達は、その森の長の一族と言う事らしく、人間で言うところの王族なのだそうだ。
箱入り娘で森から出た事が無かったフェリンだったのだが、興味本位で出てしまったところを運悪く人間に見つかってしまったらしい。
「お姫様って事は、早く帰さないとヤバいんじゃないか?」
「ヤバいなんてものじゃないわよ大変よ!下手すれば他の森に救援要請をして、捨て身覚悟で人間の街を襲う可能性もあるわ!」
櫓が思っている以上に事態は深刻そうであった。
「簡単に森同士で連絡を取る手段を持ち合わせているのですか?」
「ううん、連絡は徒歩でするしかないわ。だから直ぐに事を起こす心配は無いと思うけど、一つの森で戦いを挑んでも無謀もいいとこだし。」
「お姫様が捕まってからどのくらい経っているんだ?」
「二週間程でしょうか?」
見た目が完全に子供にしか見えないユスギの質問にも丁寧に答えるフェリン。
今回は地雷を踏む事は無かった。
「まだ猶予はありそうなのかメリー?」
「戦いを仕掛ける事になるのか分からないけど、そうなったとしても他の森との連携は一ヶ月くらい掛かると思うからギリギリかな?」
「だったらそのティアーナの森にフェリンを二週間以内に送り届ければ、特に問題は無さそうだな。」
「場所は何処にあるのですか?」
「え?えーっと・・。」
藍に質問されたが、そこでメリーは直ぐには答えずフェリンの方を見る。
「その前に確認をしておきたいのですが、本当にご主人様は私の事を森に帰してくださるおつもりですか?」
フェリンは一端メリーの視線の件を置いて櫓に確認を取る。
「そのつもりだが?」
「しかし私を購入する時に大金を支払っていました。申し訳無いのですが私にはとてもお返しする事が出来ないのです。」
エルフの文化では物々交換が基本でお金を扱うと言った事が無い。
なので櫓に出費した額を払う事が出来ないのだ。
「それくらい私が代わりに払いますよフェリン様!櫓君幾らしたの?」
「白金貨五枚。」
ある程度予想していた額を遥かに上回る額を聞いてメリーは固まり、藍とユスギは目を見開いて驚いている。
「え?」
「だから白金貨五枚だ、金貨で五百枚。」
「冗談だよね?エルフが高値で取引されてるって言ってもそこまでする?」
「あの、ご主人様が払われた白金貨五枚と言うのは大変なお値段なのですか?」
不安そうに尋ねるフェリンの言葉を聞いてそれが本当の事だと理解する。
「代わりに払うのか?俺は助かるけど。」
「ど、道中の警護を精一杯やるわ。一緒にフェリン様を無事に送り届けましょう?二人共良いわよね?」
メリーは誤魔化して藍とユスギに確認を取る。
二人は櫓とは目を合わせず黙って頷くのだった。
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