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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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160話 やみつき料理

現れた男達は皆、手に短剣やナイフ等を持っている。


「おいおい、上玉ばかりじゃねーか。」

「当たりだったな、参加して正解だったぜ。」

「痛い目に遭いたくなかったら女達を置いて失せな。」


既に勝った気でいるのか、口々に好き勝手な事を言っている。

櫓達は前後を囲まれており、敵の数は三十人程と中々多い。

奴隷の女の子達は全員怯えた表情をしている。

せっかく櫓に落札されたのに、この者達の手に渡れば悲惨な目に遭う事は必須だろう。


「皆少し俺の方に寄ってくれ。」


櫓はチンピラの言葉を無視して呼び掛ける。

エルフの女の子も含めて素直に指示に従ってくれた。


「てめえ、無視してんじゃねーよ!」


一人のチンピラがナイフを構えて櫓に向かってくるが辿り着く事は出来ない。

途中でシルヴィーの持つ槍の石突で腹を殴られて、その痛みに悶絶している。


「我が魔力を糧とし、堅牢なる雷の檻を形成す。電牢(でんろう)!」


普通の美人だと思っていたシルヴィーが鋭い攻撃を放ってきて驚いている隙に詠唱を終える。

シルヴィー以外の十三人を囲う様に網目状に電気が走っている檻が現れる。

本来この技は対象に逃げられない様に捕獲する為の技として開発したのだが、簡単に壊す事が出来ないので防衛としても活用出来る。

実際に男達が攻撃しようとナイフや短剣を投げつけてきているが、全て弾かれて中に入ってくる事は無い。

ついでに同じ魔法でチンピラ達が逃げ出さない様に、全員を覆うだけの巨大な檻も形成しておく。

建物から建物に電気が伸びて道を塞いでいるだけで、その魔法による建物の被害等は無い。


「守りはこれで問題無いだろうから、シルヴィー任せたぞ。」

「分かりましたわ。」


シルヴィーはそう言うと獲物を見つけた捕食者の如く、チンピラ達に飛び掛かって行く。


「す、凄いな、魔法ってこんな事も出来るのか。」

「使い方次第だな、それと中から触っても感電するから近付かない方がいいぞ。」


そう言うと電気から皆が離れる。

少し広めに作ったので、窮屈になる事は無い。

すると寄って来た一人の奴隷から「くううぅぅ。」と言う音が聞こえてきて、顔を向けると恥ずかしそうに俯いている。


「腹が減ったのか?」

「だ、大丈夫です。申し訳ありませんご主人様。」


櫓は純粋に聞いただけなのだが、奴隷の女の子は必死に頭を下げて謝ってきている。

それを見るとネオンと初めて会った時の事やロジックで奴隷を購入した時の事を思い出して懐かしくなる。


「別に怒ったりとかしないから正直に答えてくれ。」

「・・はい、未だ今日は食事を取っていないので。」


オークションに掛けられるくらいの奴隷なのだから、健康的に見える様に毎日の食事はしっかり与えられているのかと思っていたがそうでも無いらしい。

毎日与えられていたのは安くて固いパンやくず野菜のスープ等で腹に溜まらなかったらしい。

今日に限っては落札された後に食事を貰えるだろうと、朝昼何も食べさせてもらえなかったと言う。


「相変わらず酷い待遇だな。」

「仕方がありませんよ、奴隷の身分では食事を頂けるだけで有り難いですから。」


櫓とそう歳が変わらない子が、贅沢を言わず安くて不味い食事に有り難みを感じていて、自分の元に居る間は幸せにしなければなと思った。

櫓は早速ボックスリングからテーブルを取り出す。

突如現れたテーブルに奴隷達が驚いているが気にしない。

その上に作り置きしておいた出来立ての料理を取り出して置く。

芋をこの街で大量に購入して作ったフライドポテトである。

ボックスリングの中は時間経過しないので、出来立ての状態である。


「ちゃんとした料理は宿で食わせてやるから、今はこれでも食っててくれ。」

「し、しかし・・。」

「奴隷がご主人様の前で食事をするなんてとか言うんだろ?先に言っておくが俺の前では今までの奴隷の常識は捨てろ。それに腹が減ってるんだから遠慮なんてするな、命令だ。」


櫓は今までに会った奴隷達の事を思い出して、あれこれ言われる前に先手を打っておく。

命令と言われれば奴隷が逆らう事は出来ないので、手っ取り早く無駄なやり取りを終える事が出来る。

女の子はフライドポテトを一つ手に取って口に運び、目を見開く。


「お、美味しい・・。」

「それは良かったな、好きなだけ食べるといい。他の皆も腹が減ってたら遠慮しないで食っていいぞ。この檻の中は安全だから外も気にしなくていい。」


周りで羨ましそうに見ていた奴隷達が許可が降りると、皿に集まって行く。

フライドポテトはこの世界に無いらしく初めて見た様だが、一口食べてしまえばもう一口更にもう一口と手が止まらなくなっている。

店員も「な、なんだこれ、普通の芋なのに手が止まらねえ!」と言いながらパクついている。


「酷いですわよ、私が頑張って戦っていましたのに。」


シルヴィーは櫓達を取り囲んでいたチンピラを全て叩きのめし終わってから、文句を言いながら近付いてきた。

フライドポテトは初出しだったので、食べた事の無かったシルヴィーは、宿に戻ってから自分の分を出してくれる様に要求してくるのだった。

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