34話 人の金で食う飯は旨い
ギルドで騎士団所属の貴族と揉め事を起こした後、武器屋に向かいネオンの装備の新調をした。
折れた剣の代わりにそこそこ値が張る剣を購入し、防具の類を一切身につけていなかったネオン用に動きにあまり支障が出ない革装備も購入した。
櫓はネオン以上に速度重視の戦い方をする為、防具の類はほぼ身につけていない。
それでもせっかくだから何か購入しておくかと思い、手には耐性の手袋をつけているので、履いていた普通の靴ではなく、魔物の素材で作った丈夫な靴を購入する。
武器屋を後にした二人は宿屋に戻り休息を取り、翌日再びギルドに来ていた。
新調した装備の具合を確かめるべく適当な依頼を受注し、いつも通り昼には依頼完了の報告にギルドに戻ってきた。
「アリーネ依頼達成の確認を頼む。」
「おかえり二人とも、ちょっと待っててね。」
アリーネは慣れた手つきで櫓達の依頼の処理を行なっていく。
「どうだった新しい装備は?」
「普通の靴より丈夫だから多少手荒に使っても問題ないのがいいな。」
「私の剣も前のより切れ味が良くていい感じです!」
「そっかそっか、よかったね二人とも。じゃあこれ報酬ね。」
依頼の報酬が入った袋を櫓に渡す。
礼を言って受け取った袋をボックスリングにしまい、受付を離れようとするとアリーネが呼びかけてくる。
「ちょっと待って二人とも、お昼一緒にどう?」
「なんだまた奢らせる気か?そんなに受付嬢の給料は安いのか?」
「そりゃ少なくはないけど満足できるかと言えば・・・ゴホン、それは置いといて今日は私が奢るから大丈夫、昨日のお詫びよ。」
給料の話をしていたら遠くから上司の視線を感じて話を逸らす。
アリーネは昨日自分が櫓達に持っていった面会の話でトラブルに巻き込んでしまった事に責任を感じていたため、食事に誘ったのだった。
「別にアリーネが気にする事じゃないけどせっかくだし奢ってもらうかネオン。」
「ご馳走になりますアリーネさん。」
「おっけーおっけー、じゃあ行こう。」
ギルドの中に設けられている酒場に移動して料理の注文をする。
初めてアリーネから奢られるということで、容赦なく注文していく櫓。
「ねえねえちょっと注文しすぎじゃない?ちゃんと食べられるんでしょうね?」
「当たり前だろ残したら悪いからな。」
「こんなに頼んでいいんでしょうかアリーネさん?」
「も、もちろんよネオンちゃん、沢山食べてね!」
櫓が普段より沢山注文するため戸惑っていたネオンだったが、アリーネから問題ないと言われ安心して食べ始める。
ネオンは細いのに意外とよく食べる方なので、多少多めに料理が出てきても問題ない。
もちろん自分が想定していた量より沢山注文されたアリーネは大丈夫ではない。
財布と料理を交互に見てネオンにバレないように櫓を睨んでいるが、睨まれている本人は気付いていないフリをして料理を味わっている。
奢ると言ったのは自分なのだから仕方ないかと割り切り、アリーネもやけ食いのように料理を食べていく。
あらかた食べ終えるとアリーネが昨日の事について話し始める。
「ネオンちゃん謝って済むことじゃないのは分かってるけど、昨日は危ない目に合わせて本当にごめんね。」
「そんな、アリーネさんが謝ることじゃないですよ、気にしないでください。」
「それでも話をもっていったのは私だから。」
「私は櫓様のおかげで被害はないんですから本当に気にしないでください。あっ、なら今日ご馳走してくれたんですから、これでそのお話は無しです。」
「・・・わかったわ、ありがとう。」
アリーネはネオンのことを撫でながら言う。
嬉しそうに撫でられているネオンを見ていると本当に気にしていないんだなとアリーネにも伝わってくるため、幾分か気持ちが楽になる。
「まあネオンが気にしてないって言ってるんだ気にするな。それより聞きたいことがあるんだがいいか?」
「私に答えられることなら何でも聞いて。」
「昨日騒ぎを起こしたあの騎士どうなったかとか知ってるか?」
「ごめんね、詳しいことは知らないわ。一介の受付嬢には貴族関係の話なんて降りてこないもの。ギルマスやギルドの上司達なら知ってるかも知れないけど。」
「そうか、まあ知らないならいいか。また突っかかってくるならその時考えよう。」
「・・・私は知らないけど、知ってる人が今向かって来てるの。会ってくれない?」
「ん?向かって来てる?」
アリーネと話をしているとギルドに一人の女性が入ってくる。
その女性は辺りを見回すと櫓達が座っているテーブルに真っ直ぐに向かっていく。
緊張しているためか、それとも昨日の事を思い出してか、動き方がぎこちない。
アリーネが櫓の問いにギルドの入り口を指差して答える。
櫓とネオンは振り向きその姿を見ると、櫓が一気に不機嫌になっていくのがネオンとアリーネには感じられた。
それでも昨日のように殺気を振りまいたり、立ち上がって威圧したりはしていない。
向かってきている女性からは直接的には何もされていないためである。
少しすると昨日騒ぎを起こした騎士に付いてきていた女性、女騎士リンネ・コーラルが櫓達のテーブルの前で立ち止まった。
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