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うっかり女神に邪神討伐頼まれた  作者: 神楽坂 佑
1章 異世界転生
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157話 表と裏の感情

「コール、金貨三十七枚!」

「十八番から金貨三十七枚が出ました。他に入札される方は居ないですか?では十八番の方の落札となります。」


これで十人目の奴隷を櫓が落札した。

犯罪奴隷を除けば奴隷の出品は十人目なので、今のところは全員落札出来ている。

しかし他の奴隷を落札したいと思っている者達も、櫓ばかりが取っていくので、段々と意地になって入札して値段が釣り上がってきている。

奴隷商店では高い奴隷でも金貨十枚少しと言ったところなのだが、三倍以上での落札が続いており既に白金貨三枚分以上の出費をしている状況だ。


「おい兄ちゃん、既に物凄い額になっちまってるが大丈夫なんだよな?払えないと商品の受け渡しが無しになる上に違約金が発生しちまうぞ?」


オークション終了後に直ぐ取引が行われるので、金の受け渡しの期限を伸ばしたりも出来ない。

その場で払えなければ罰金が発生してしまい、次回からのオークション参加の時には目をつけられてしまうのだ。


「全然大丈夫だが、それでも心配なら落札分出しておこう。」


そう言って櫓は机の上に多めに見積もって白金貨を四枚出す。


「ほ、本当に払えそうだな。てか白金貨を一度にこんなに見たのは初めてだ。」


白金貨での取引なんてものはそうそう行われないので、一般市民は見た事が無い者も多い。

しかし高い買い物や複数の物を纏めて大量に購入する時等は、金貨を大量に出すよりも白金貨一枚を出した方が数える手間も省けて楽なので、幾らかは持っていた。


「金はまだまだ有るが後何人いるかだな。」

「渡された紙には犯罪奴隷かそうで無いかは記載されていませんからね。」

「だがもうそろそろ終わりだと思うぜ、毎回奴隷の数は三十人前後だからな。」


その後犯罪奴隷の出品が三回続いた。

全てスルーして次の出品を待っていると次が奴隷の出品としてはラストだと司会者が言った。


「さあ奴隷の出品は次でラストになります。間違いなく今回のオークションの目玉商品の一つでしょう。百二歳の女で種族はなんとエルフです。容姿は言うまでも無く更に処女。弓や魔法の扱いに長けており戦闘面でも充分期待出来るでしょう。金貨五十枚からのスタートとなります。」


今までの奴隷の落札額を遥かに上回る金貨五十枚からのスタートだと言うのに、オークションが始まってから一番入札が飛び交っており、既に金貨百枚に届きそうだ。


(エルフか、メリーの言っていた通りだとするならば、人間に見つかって捕まったのかもしれないな。)


エルフの女の子は百年以上生きているとは思えない程に美しい。

しかしその美しい女の子の目が腫れており真っ赤だ。

捕まってから散々泣いたのだろう、今も欲望丸出しの人間達を前に涙を溢している。

一応調査の魔眼で確認したが犯罪奴隷では無い。


「不愉快ですわね、直ぐに全員倒し解放してあげたいですわ。」


隣に座るシルヴィーが明らかに不機嫌そうな声で言う。

しかし感情に任せて行動を起こさないところを見ると、冷静さも残っている様だ。


「姉ちゃんの気持ちは分かるが、落ち着いてくれよ。次回からオークションに参加出来無くなっちまう。」

「それくらい弁えてますわ。」


店員にもシルヴィーの怒りが伝わった様で、たじたじであった。


「まあ分からなくもないけどな。その感情は落札した後に取っておけ。本人から拐った相手の情報を聞けば、お仕置きも出来るんだからな。」


無理矢理捕まえて奴隷にしたとすれば、それは立派な犯罪なので捕まえれば牢屋行き確定である。

なので落札さえしてしまえば犯人を捕まえられるかもしれない。

しかし既にオークションに出品されてしまっているので、落札して手に入れるしか方法は無い。

エルフの女の子が違法的な手段で奴隷にされた事を訴えても、オークション経営側や入札している参加者達は知らぬ存ぜぬで手放したりはしないのだ。

オークションにそう言った商品が持ち込まれる事は珍しくも無いので、参加者側は一種の暗黙の了解としている。


「そうですわね、それまでは我慢致しますわ。そうと決まれば早く落札して楽にさせてあげてください。」

「そうだな。コール、白金貨二枚!」


櫓の宣言にシルヴィー以外の者達の視線が一斉に集まる。

白金貨一枚を少し超えたくらいの額だったのが、一気に飛び跳ねたのだ。

隣に居る店員までもがそんなに勿体無いと言う顔をしている。


「コール、白金貨二枚と金貨十枚で!」

「コール、白金貨二枚に金貨十五枚だ!」


しかし今までとは違ってそう簡単に周りの者も引き下がらない。

それ程までにエルフと言う種族は魅力的なのだろう。

使い様によっては、入札に使った額を上回る金を生み出させる事も出来るかもしれないのだ。


「コール、白金貨三枚!」


櫓の持っている白金貨の数は九枚なので、そろそろ決着が付いてくれないと厳しい。


「コール、白金貨三枚と金貨・・。」

「コール、白金貨四枚!」


絶対譲らない意思を見せる為に被せ気味で更に吊り上げる。

櫓が参加した段階で大半の者は悔しそうにあきらめていった。

しかし貴族と思われる男が中々降りない。


「コール、白金貨四枚と金貨十枚だ!」


どうしてもエルフが欲しいのだろう、貴族の男は怒りながら櫓を睨みつけコールする。

コールする毎に態度に余裕が無くなっていっているので、そろそろ限界の額なのだろう。

逆に櫓はポーカーフェイスを崩していないので、それを見て余計感情が分かりやすくなっているのだ。


「コール、白金貨五枚!」


これが櫓の出せる最後の白金貨だ。

態度に表れてはいないが、心の中ではもう終わってくれ、勘弁してくれと叫んでいる。


「十八番から白金貨五枚が出ました。他に入札は有りませんか?」


司会者の言葉は櫓と対抗している貴族に向けられている。

櫓のコールを聞いた貴族の男は歯軋りしながら、睨みつけて来てはいるが、これ以上は出せないのかコールする事は無く、エルフの女の子は櫓に落札された。

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