156話 お嬢様の嫉妬?
「他に入札はありませんね?それでは金貨二十枚で落札となります!」
オークションが始まってから各品物毎に次々と入札が飛び交い、相当な盛り上がりである。
今もダンジョンから発掘された魔法武器が高額で落札されたところだ。
オークションでは自分がどうしても欲しい物に対して、金に糸目を付けない者ばかりなので、高額落札が殆どである。
櫓の出品した物も全て高額で落札されていっている。
「現状で落札額の合計が金貨五十枚を超えましたわね。」
「落札された分だけでも大分入札出来そうだな。」
奴隷の購入以外にも良さげな物が有れば入札しようかと思っていたが、今のところ気になった物が無いのでしていない。
「何に入札するんだ?買いたい物でもあるのか?」
「そういえば言ってなかったか、買いたいのは奴隷だ。」
「奴隷か、今回は普段よりもレベルが高いから値が張るだろうな。」
店員は奴隷の出品情報が書かれた紙を見ながら言う。
「それと犯罪奴隷は無しだ。それ以外の奴隷を全て落札する。」
「全てだと!?」
「ああ、入札は任せたぞ。」
「おいおい、分かってるのか?奴隷自体が中々値が張るっていうのに、犯罪奴隷じゃないって時点で更に高くなっちまうんだぞ?それを全員買い占めるって、一体幾ら掛かるか分からんぞ?」
奴隷の売値は、殺しや重罪を犯して犯罪奴隷となった者とそれ以外とでは値段が変わってくる。
犯罪を過去に犯している者とそうでない者のどちらを買いたいかと言われれば、後者を取る者が大半だろう。
そうなると犯罪奴隷ばかりが売れ残ってしまう事になるので、値段が大幅に下げられるのだ。
「金なら結構蓄えがあるし、オークションに出品した物の落札された金も入ってくる。一人一人の値段が跳ね上がらない限りは足りる筈だ。」
「そんなに買う必要が有るのか?兄ちゃんの周りには充分綺麗どころが揃ってるじゃねーか。養う分くらいは残して置いた方がいいと思うぜ。」
一瞬何を言われたのか分からなかったが、直ぐ言われた事を理解した。
出品情報に書かれている奴隷は若い女ばかりなので、ハーレム等の目的で買い占めようとしていると勘違いされたのだ。
それとパーティーメンバーの三人もそう言った目的の者達と勘違いされていた。
「言っておくがシルヴィー達はパーティーメンバーだ、ハーレムとかでは無いぞ。奴隷も別にそう言う目的で買う訳じゃ無いからな。」
「そ、そうですわ、勘違いですわ。」
「分かってる分かってる、まあ程々にしといた方がいいぜ。」
全然分かっていないなと思いつつも、これ以上言っても無駄だと諦める。
そして櫓は気付いていなかったが、シルヴィーは少しだけ頬を赤らめていた。
「さあ続いては奴隷の出品が続きます。最初は二十歳の女で種族は人間。スキルや魔法等は全然ですが容姿は相当良く更に処女です。金貨十枚からスタートです。」
司会者が言い終わると怒涛の入札ラッシュが続き、どんどん値段が上がっていく。
「あの方は犯罪奴隷ですの?」
「いや違うな、普通の奴隷だ。」
調査の魔眼で確かめてから答える。
「なら入札するのか?」
「ああ、頼んだ。」
「俺がか?兄ちゃんがやればいいじゃねーか。」
「俺がやって良いのか?」
「ああ、問題ないぜ。他のオークションではどうか知らないが、ここでは会場内の奴なら誰でも参加出来るからな。」
ロジックで参加した時はアリーネにしか入札する権利は無かったので、街によってルールが少し変わっている様だ。
「金貨二十八枚と銀貨五十枚まで出ました。他に入札は有りませんか?」
値段がかなり釣り上がり、入札の声も少なくなった。
スタート時の約三倍にもなっているが、未だ商人らしき者同士が張り合っている。
入札しているのは、どちらも丸々と太っている中年の男で、ステージに居る奴隷の女の子の顔は暗い。
落札された後の事を考えれば、どちらに落札されるのも嫌なのだろう。
「コール、金貨三十枚!」
銀貨で少しずつ釣り上がっていた入札額が櫓の入札により一気に跳ね上がる。
そしてステージに居る女の子の顔も分かりやすい程に明るくなっている。
櫓は強そうに見えないだけで、若くて顔立ちもイケメンと言える程に良いのだ。
片方の商人は、奴隷一人にこれ以上は出せないと降りた。
「こ、コール、金貨三十枚と銀貨十枚!」
「コール、金貨三十一枚!」
もう一人の商人も金貨一枚単位で増やしていく櫓には敵わないと渋々降りた。
「十八番から金貨三十一枚が出ました。他に入札される方は居ないですか?では十八番の方の落札となります。」
落札された女の子がホッとしているのが離れていても良く分かる。
司会者に連れられてステージから退場する時に、櫓に向けてウインクを飛ばして来た。
「気に入られて良かったですわね。」
シルヴィーにも見えたらしく、微笑んで言ってきたが目が笑っていない。
「あ、ああ・・。」
咄嗟になんと返して良いのか分からず、口からは曖昧な返答しか出なかった。
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