155話 ハーレム目的では無い
希望の光にユスギが加わった日の翌日は、適当に冒険者ギルドで依頼をこなして過ごして、オークション当日となった。
「待たせたか?」
「いや、時間もあるし問題無いぜ。」
オークションが行われる会場前で店員と落ち合う。
「なら良かった、それと悪いんだがもう一人連れてってもらえないか?」
櫓の後ろにはシルヴィーが居た。
シルヴィーはロジックで開催されていたオークションには都合が合わず一回も参加した事が無く、前々から興味があったらしい。
ちなみにネオンはミズナの食べ歩きに付き合わされていて、二人でマギカルの街に出掛けている。
「ったくしょうがねーな、兄ちゃんには儲けさせてもらったし特別だぜ。」
「感謝致しますわ。」
「おう、じゃあ早速入るか。」
オークション会場に入ってからの流れは、ロジックで参加した時と変わらない。
先ずは出品したい物を係りの者に渡すのだが、リビングアーマーの鎧や恩恵の宝玉が数十個、他にも盗賊が持っていた魔法道具やお宝に自作の魔法道具等、様々な魔法道具を大量に出品したので、係りの者達が複数人で大慌てで処理していた。
その後はオークションが始まるまで席に着いて待つ。
「初めてですからワクワクしますわ。」
「ロジックの時は俺もそうだった。今は大量に資金があるから気になった物があった時は直ぐ言ってくれ。」
「分かりましたわ。」
出品した物が落札されれば更にお金が入ってくるので、多少の散財は気にする事も無い。
ここにネオンが居たら文句を言われたかもしれないが、ミズナのお守りで忙しいのだ。
「まだ始まるまで少し時間があるからこれでも読んでたらどうだ?」
店員の男が数枚の紙を櫓とシルヴィーに渡してくる。
紙と言えばこの世界では中々に貴重な品だが、配られたのはわら半紙で材質も相当悪いが書いてある内容は分かる。
「マギカルのオークションにはこんなのがあるんだな。」
「今日の目玉商品や注目商品を予め数点教えてくれるんだ。」
流し読みしていると、櫓が出品した物についても書かれている。
(高価な魔法道具が大量出品お見逃しなくか。俺達には必要無い物だが、なるべく高く買って欲しいものだな。)
そんな事を思っていると横に座っているシルヴィーに小声で話し掛けられる。
「最後の紙見ましたか?」
櫓は未だ途中だったが、言われて最後の紙を見てみる。
それは主に奴隷の出品について書かれている紙だった。
全体的に女性で若い者が多く、十歳に満たない子供まで居る。
「犯罪奴隷で無いのであれば、お願いしますわ。」
「分かっている。」
シルヴィーが今回のオークションに参加したいと言い出したもう一つの目的がこれである。
見た目が良い女性や有用なスキルや魔法等を使える能力の高い奴隷は、店売りよりもオークションにて高額で取引される事が有る。
そしてそう言った奴隷の中には、ネオンの様に生活が苦しくて奴隷に落ちた者も居るが、メリーの話にあった様な非合法な手段で捕まえられて無理矢理奴隷にされた者なども居る。
犯罪をした訳でも無いなら、酷い目にこれ以上合わない為にもそう言った人達を買って、やり直す機会を与えたいとシルヴィーに頼まれ、自分が旅の途中に稼いだお金は全てその資金にしても構わないとまで言われた。
お金に関してはちょっとした貴族の資産程も溜まっているので気にしなくて良いのと、シルヴィーの性格は分かっているので二つ返事で了承した。
(頼まれるまでもなく俺もそうしただろうしな。)
この世界出身では無い櫓からすれば、酷い扱いを受けている奴隷を簡単に見過ごす事が出来ない。
手段が有るならば出来るだけ助ける方向で動こうと決めていたのだ。
(そもそもシルヴィーがそう言った考え方をする方が異常な事なんだよな。他の貴族で同じ事する奴なんて居無いだろうし。)
この世界では奴隷と言う存在は日常的なもので、ご主人様と奴隷と言う様に上下関係もしっかりしている。
奴隷はご主人様の命令に絶対服従の道具と言う印象が当たり前で、それを助ける為にお金を使うと言う考えを持つ者の方が圧倒的に数が少ないだろう。
奴隷と言えど一人の人生を買うのでお金もそれなりに掛かり、一般市民は手が出しにくく貴族等は危険な事をさせて更に利益を生む為の道具として購入するのが現状だ。
「俺の魔眼を利用すれば犯罪を冒したかも分かるからな。」
「購入した方々はロジック同様に、この街で商店をさせますの?」
「それも考えたが一旦ロジックに全員送ろうと思う。サリアにもロジックを発つ前に言ってあるからな。」
ロジックの拠点である櫓商会を任せているサリアには、旅先で人材や物資を確保したら送るかもしれないので、その時の対処を任せてある。
どう言った風に人材や物資を活用するかは任せてあるが、元奴隷のサリアが奴隷達を酷使したりはしないだろう。
櫓が奴隷に対してそう言った扱いをするのを嫌っている事を身を持って経験しているからだ。
「色々と話し合っているところ悪いがそろそろ始まるぜお二人さん。」
ステージを見ると丁度司会者らしき者が歩いて来ていた。
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