153話 一緒に食べたかっただけ
「それで盗賊は全員倒したのか?」
「ええ、ここに居た者達は私が全員倒しました。」
「拠点みたいな場所にも何人か居たから、冒険者達に協力してもらって全員拘束済みよ。」
先程メリーがロンメルの仲間達を引き連れていたのは、拠点を制圧しに行った帰りだったらしい。
メリーは敵の自由を奪うサポートが得意なので、前衛が居ると戦いやすいのだ。
「なら俺の出番は無さそうだな。」
「せっかくだし上まで護衛してよ、どうせ入り口に戻るんでしょ?」
「ああ、いいぞ。」
その後この場と拠点で倒した盗賊達を縛り上げてダンジョンの入り口を目指す。
盗賊達はかなりお宝を溜め込んでおり、地図も複数所持していた。
ダンジョン探索に入る前に聞いた盗賊はこいつらの事の様だ。
襲われた者達に関しては、男は殺され女は散々弄ばれて心が壊れていた。
幸いこの街の出身者ばかりだった為、知り合いが礼を言って引き取ってくれた。
そして入り口でそわそわして待っていたロンメルが仲間達を見ると号泣して喜び、しつこいくらい礼を言ってきた。
有り金全部お礼にと差し出して来たが、櫓は何もしてないからと断り、メリーと藍も気にしないでいいと断っていた。
「じゃあパパッと売ってくるわね。」
メリーは盗賊達を引き連れて、ダンジョン入り口に店を開いている奴隷商店に入って行く。
数は二十人程居たので、これだけでも中々の額になるだろう。
「それでなんでこの街に居るんだ?俺達とは逆方向に行ってなかったか?」
「ええ、来る予定は無かったのですが、魔法都市マギカルの周辺でダンジョンが見つかったと言う情報を得まして、メリーが行き先を変更したのです。」
「振り回されて苦労するな。」
「いえ、私もダンジョンから入手出来る恩恵の宝玉には興味が有りますから。」
スキルが手に入る恩恵の宝玉はAランクパーティーと言う強者でも欲している。
藍はメリーと違い冷静で用心深い性格なので、スキルを得て戦い方の選択肢を増やしておきたいのだろう。
「それなら上の階層は競争率が高くて宝箱を見つけるどころじゃ無いから、なるべく下の階層を目指した方がいいぞ。」
「その様ですね、三回層に降りるまでで一つも見つけられませんでしたから。」
一、二階層辺りに出る魔物のランクはEやFと低めだ。
その為駆け出しの冒険者や戦いの心得があまり無い物でも探索する事が出来るので、人の数がかなり多く宝箱は早い者勝ちなので見つける事自体が困難である。
「なになに、ダンジョンの話?」
メリーが奴隷商店から出て来て話し掛けてきた。
手には奴隷を売却したお金が入った袋を持っている。
「ええ、経験者からアドバイスを貰っていました。」
「そんなに大した事教えてないけどな。」
藍も感じていた当たり前の現状を言ったに過ぎない。
それにAランクパーティーの二人ならば放っておいても直ぐに下の階層に行くだろう。
「ねえねえ、櫓君これから予定ある?」
「いや、用はもう済んだから宿に帰るところだ。」
「ならちょっと付き合ってよ、ご飯でも一緒にどう?」
「良いですね、盗賊を倒して臨時収入も入りましたし私達が出しますよ?」
「こんな美人が二人も誘ってるんだから断らないわよね?」
自分で言うのかとも思ったが実際二人共ケチの付けようが無い美人なので何も言わないでおく。
「まあいいけど。」
何故こんなに誘ってくるのか分からなかったが、断る理由も無いので了承しておく。
店は前に三人で食べた場所と似た造りになっている個室制の高級店だ。
こう言った店でもなければエルフのメリーはフードを外して食事が出来ない。
「ふぅ、やっぱりフードを外しての食事は解放感があっていいわね。」
「毎回こう言う店に入ってる訳じゃ無いのか?」
「毎回入ったら食事代で稼ぎが消えちゃうでしょ。」
Aランクパーティーの稼ぎからすれば大した金額では無いと櫓は思ったが、相手は自分と違って女の子だ。
当然様々な物にお金が掛かっていくので、幾らあっても足りないのだろう。
「それで俺を誘った理由ってなんだ?ただ食事したかった訳じゃ無いだろ?」
「ただ食事したかっただけよ?」
暫し無言でお互いを見る櫓とメリー。
櫓はまた何か頼み事をされるのだろうと考えていたが、メリーは純粋に食事に誘っただけの様だった。
メリーにとってはパーティーに勧誘したい櫓と仲の良い関係を築く以外の目的は特に無い。
「ただの食事だったのか?」
櫓は藍にも確認の意味を兼ねて聞いてみる。
「その様ですね、私は何かしら情報を櫓さんから聞く為に誘ったのかと思っていましたけど。」
藍もまさかただの食事だとは思わなかったらしい。
「何かしらの情報って、何か藍は聞きたい事あるの?」
「私達と櫓さん達は違う行動を取っているのですから、私達が知らない有益な情報を持っているかもしれません。我々のパーティーに勧誘出来そうな方やダンジョンでのオススメの攻略情報等です。」
魔法都市マギカルには櫓達の方が先についている。
最近のマギカルに関する事であれば二人よりも知っている事が多いと藍は判断したのだろう。
「なるほど、流石は藍ね。そう言われると何か教えて貰いたいけど、何か無いの櫓君?」
「唐突だな、まあ無い事もないと思うけど。」
櫓は何を話そうかと考えながら目の前の肉料理を口に運んだ。
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