142話 宝箱に目が眩む
「よっ、あ〜ハズレですね。」
ネオンは宝箱からアクセサリーを取り出して櫓達に見せてから言った。
魔物に襲われないまま宝箱ガチャをしているが、最初以外に恩恵の宝玉は出ていない。
「どんな装備品ですの?」
「えーっと名前は秘匿の指輪で、装備した者の情報を隠蔽する効果がある。」
「櫓様の調査の魔眼などで視れなく出来る指輪って事ですか?」
「そうみたいだな、これは当たりだ。」
櫓は敵対する者を調査の魔眼で視る事で、最初から魔法以外の相手の手札を知る事が出来る。
戦う前から相手のしたい事がある程度分かる為、優位に立ち回る事が可能になるのだが、それを防がれてしまっては、相手のスキルを知っているからこそ出来た大胆な立ち回りなどが出来なくなり、慎重に動かなければならなくなる。
旅の途中で出会った強者達にも調査の魔眼で情報が視れない者が何名かいたので、それに倣い情報漏洩の対策はしておくに越した事はない。
「この魔法道具は全員分欲しいですわね。」
「俺のスキルで作れれば良かったんだが素材が見た事無い物ばかりだな。」
錬金術の名人のスキルは素材さえあれば一瞬で魔法道具を作成する事が出来るが、肝心の素材が無ければ意味は無い。
「一先ず誰か装備しておきますか?」
「ミズナでいいんじゃないか?精霊って事が広まると面倒だろうし。」
「私・・・?」
精霊は本来エルフ以外の者と契約はせず、エルフとする事さえも稀である。
そんな存在が平然と人間達と行動を共にしているのが知れたら騒ぎになる事は確定だ。
「ではミズナ様どうぞ。」
ミズナはネオンから受け取った指輪を嵌める。
櫓は秘匿の指輪を嵌めたミズナに調査の魔眼を使う。
名前 ???
種族 ???
年齢 ???
スキル ???
状態 ???
ミズナのステータス欄は全て?で埋まっており、何も視えなくなっていた。
「おおお、何も視えなくなってるな。」
「凄いですね、でも全員分手に入れれるでしょうか?」
「宝箱が独占状態なのですから可能性はありそうですわね。」
櫓達がネクロマンサーを倒したが九階層に他の者は降りて来ていない。
おそらくは倒した者にしか階段は使えず、他の者は倒し方が分からないので未だ降りて来られないのだ。
「宝箱はまた現れるんだし、今のうちに開けまくるか。」
「あっ、あそこにもありますね。」
ネオンは少し遠くに宝箱を見つけて走っていく。
この階層でトラップチェストは運が良いのか見ていないが、櫓はネオンが開けようとしている宝箱を一応調査の魔眼で視る。
名前 トラップフィッシュ
スキル 擬態
状態 平常
今までは宝箱としか視えなかったのだが、ここに来て魔物のステータスが視えた。
「ネオン待て!」
「えっ?」
櫓の静止させる声は間に合わずネオンは宝箱に触れてしまう。
するとネオンの足元の地面から巨大な口が出てきてネオンを丸呑みにしてしまった。
巨大なチョウチンアンコウの様な見た目で、光の部分が宝箱の形になっている魔物だ。
擬態のスキルで光の部分を自由自在に変えられる。
「ネオンさん!?」
「いや、焦ったが大丈夫みたいだ。」
「無事なのですね?良かったですわ。」
櫓は透視の魔眼でトラップフィッシュに飲み込まれたネオンの無事を確認してホッとする。
しかしこの状況が長く続くと大変な事になる。
トラップフィッシュの中のとある場所に小さな骨が大量にあるのが見えた。
この階層に魔物が全く居ないのは、トラップフィッシュが全て飲み込んでしまったからなのだ。
「ネオンさんは出られそうですの?」
「ああ、今両手に火の玉を出している。」
直後トラップフィッシュの身体が激しく揺れ、口から大量の煙を吐き出す。
ネオンが中から高火力で焼いているのだ。
その後何度かネオンの火の玉で中を焼かれると、トラップフィッシュは焼け死んで動かなくなった。
「出て来ませんわね。」
数分が経過したがトラップフィッシュの中からネオンが出て来ない。
何かあったのかと櫓が透視の魔眼を再び発動させようとすると、巨大な口からネオンが姿を現した。
「ふぅ、ビックリしました。」
「ビックリしたのは私達の方ですわ。もう少し注意深く行動を・・。」
「まあまあ無事だったんだし良かったじゃないか。」
ネオンの行動の浅さを咎めようと説教を始めようとしたシルヴィーを宥める。
シルヴィーは真面目なので一度こう言った事を話し始めると長いのだ。
「申し訳ありませんでした、注意を怠ったのは反省しています。」
ネオンも自分の行動を反省して素直に頭を下げている。
「反省してもらえるのであれば良いですわ。」
「それよりなんで出てくるの遅かったんだ?何かあったのか?」
トラップフィッシュは巨大だったので櫓も中身が全部見えた訳では無い。
「そうなんですよ!これ見てください!」
ネオンは背負っていたバックを開け中身を見せる。
なんとその中には恩恵の宝玉が二つも入っていた。
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