140話 攻略情報
櫓達は早速二人の探索者に聞いたネクロマンサーを倒そうと、八階層に降りてきた階段と反対の壁付近を目指して歩いていた。
「攻撃が効かない魔物ってどうやって倒すんでしょうか?」
「そもそも攻撃が効かないと言う情報自体が真実かは分かりませんわ。」
「あのお二人はそう言ってましたよ?」
「他人から聞いた情報も参考にしますけれど、私は自分の目で見た光景が一番信用出来るのですわ。」
攻撃が効かない敵が居たとするならば、倒す事は出来ずに逆になす術もなくやられるのを待つしか無いと言う事になる。
シルヴィーにはそんな敵が居るとは思えなくて、何かしら見落としや突破口が有るのではと考えていた。
「おそらく攻撃が効かないのではなく、効く攻撃をしていないのだろう。」
「どう言う事ですか?」
「例えばだが死んでいる敵を何度斬りつけても、既に死んでいるのだから意味が無い。攻撃が効かないのは操られている魔物達が既に死んでいるからと言う可能性もある。」
言ってみたが全て正しいかは櫓にも分かってはいない。
魔物の名前であるネクロマンサーの意味から想像したに過ぎないためだ。
それも調査の魔眼で視てみれば直ぐに分かる事ではある。
「その仮説が正しいとしましたら、アンデッドが相手と言う事ですわね。」
「確か聖属性の攻撃が有効でしたよね?私は使えないから役にたてなそうです。」
「聖属性以外にも跡形も無く消し飛ばす方法もある。ネオンなら燃やし尽くすくらい訳ないだろ?」
「なるほど、任せてください!」
出会った頃は掌に乗る程度の小さな火の玉しか出せなかったが、今では数も大きさもほぼ自由自在だ。
「ん?」
少し離れた場所だが櫓達の進む方角から四人の冒険者が走ってくる。
重症の者は居ないが全員全身切り傷だらけであった。
遠くから「あんなに多いとは。」「倒せる訳無いだろ。」などの文句が聞こえてくる。
「あれはネクロマンサーにやられたのでしょうか?」
「そうかもな、反対側の壁は見えてきたし。」
八階層に降りてきた階段のあった壁と同じ作りの壁が見えてくる。
しかし地面には様々な武器が散らばっていて、戦場跡地の様な有様だ。
「ネクロマンサーに返り討ちにあったり、逃げれたが落としていった武器だろうな。」
「相当な数ですわね。」
「っ!?前方に魔物の臭いです。」
ネオンが言った瞬間に何も無かった場所に突如として全身ローブを纏い杖を持った骸骨が現れる。
名前 ネクロマンサー
スキル 死霊術 同族召喚
状態 平常
調査の魔眼で視てネクロマンサーだと確認する。
骨の口をカタカタと打ち鳴らしながら杖で地面を突く。
すると地面に複数の魔法陣が浮かび上がり、そこから魔物が召喚されてくる。
櫓は再び調査の魔眼で召喚された魔物達を視回す。
「魔物の種類は様々だが全部アンデッドだ。」
予想していた通りの結果となった。
これではただ斬ったり殴ったりしてもダメージを与えられ無いのは当然だ。
「対処方法が分かればどうって事無いですね。狐火!」
両手を上げてバランスボール程の巨大な火球を作り上げ、魔物の群れに向かって投げつける。
着弾した周辺の魔物達は瞬時に炭となり、辺り一体の温度が急上昇していく。
「私は時間稼ぎくらいしか出来ませんわね。」
「私も・・・。」
アンデッド達は身体が切り離されたとしても再びくっ付いたりするが、それには時間が必要になるので時間稼ぎは出来ている。
そして正確に言えばシルヴィーとミズナはアンデッドを跡形も無く消し飛ばす事が出来無い訳では無い。
しかしその攻撃方法は規模が大きいので、広い空間になって居るとは言え、地下で使うのは生き埋めなどのリスクを考えて止めておいた。
「皆が時間稼ぎしているうちに本体を叩くか。」
櫓は霊刀を持ちネクロマンサーに向けて走る。
途中で魔物が割り込んでくるが霊刀を一閃して斬り伏せる。
そして霊刀には聖属性が付加されているため、斬られたアンデッドは糸が切れた人形の様にもう動く事は無い。
「お前も聖属性は効きそうだな。」
櫓が一閃した霊刀は骸骨の持つ杖で受け止められた。
聖属性の効果を持っていてもアンデッド本体に当たらなければ意味は無い。
櫓はそれなりの速さで振るったつもりだったのだが、ネクロマンサーの動きも遅くは無い。
カタカタと骨の口を鳴らすと、骸骨の周りに黒い炎が複数現れる。
「ちっ、魔法か。」
調査の魔眼では魔法についての情報が視え無い為、ネクロマンサーが所持しているかどうか分からなかった。
黒い炎が櫓に向けて飛んで行くが全て回避する。
躱された黒い炎が地面に当たると、接触している土や石がドロリと溶けていく。
「危ない魔法を使いやがるな。」
櫓は再び魔法を使われる前に距離を詰めて霊刀を一閃する。
骸骨は再び杖で受け止めようとするが、当たった箇所からスパッと杖が切断され、そのまま骨の身体も胴体を斬られ分断される。
「少し魔装して強化すれば余裕か、本体のレベルはBランクってとこか?」
先程のはただ霊刀を振るっただけの攻撃だったので、高ランクの魔物であれば受け止めてもおかしくは無い。
しかし少々魔装した一撃を受け止める実力が無いのであれば、アンデッドで厄介とは言えAランクとまではいかないと判断出来た。
未だAランクの魔物との戦闘を櫓は経験し事が無いが、シルヴィーの話を聞く限りタイマンで戦って勝てるか分からない程の強さと言っていた。
「これなら対処方法を伝えれば、他の探索者も倒せるだろう。」
今回倒した事でここにはネクロマンサーが出る事は無くなるかもしれないが、下の階層にネクロマンサーが出ないとも限らないのでダンジョンを出たら情報を公開しようと決めて、倒した事で現れた階段を降った。
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