134話 豪華優勝商品
「真正面から受け止めて耐えられたのはお兄さんが初めてだよ。」
攻撃を上げる付与魔法を使った一撃はAランク冒険者のシルヴィーでさえ、耐え切る事が出来ずに吹き飛ばされてしまった。
戦う範囲が決められていなければ、シルヴィーもこれで負ける事は無かったかもしれないが、狭い範囲であの一撃を受け切るのは厳しいだろう。
「何発も受けるのは厳しそうだけどな。」
櫓は自分の腕を見ながら言う。
ユスギの拳を受け止めた腕が痺れていて動かしにくい。
外傷は無いが戦闘中に思う様に身体を動かせないのは危険だ。
「それならもう終わらせてあげるよ。STRエンチャント!せやあっ!」
距離は離れているが、ユスギは淡く光った拳を櫓に向けて突き出す。
拳圧によって突風が起こり櫓を場外に押し出そうとする。
足に力を入れて踏ん張らなければ簡単に吹き飛びそうなので身動きが出来ない。
「AGIエンチャント!」
櫓が動けないでいる間にユスギが付与魔法を使い、消える様にその場から移動する。
「STRエンチャント!つよつよキック!」
ユスギが櫓を蹴り付け様と足を少し上げたがそれ以上足が上がらない。
それどころか足以外も一切身体を動かす事が出来なくなった。
神眼で選択した呪縛の魔眼を使いユスギの動きを止めたのだ。
ユスギは何が起こったのか分からず混乱している。
拳圧によって引き起こされた突風が弱まってきたので、それから脱出して反撃に移る。
ユスギに付与されたエンチャントも呪縛の魔眼で動きが止められている間に切れている。
「破脚!」
回転して遠心力を乗せた回し蹴りを放つ。
「VITエンチャント!」
呪縛の魔眼の効果が切れたが完全な防御は間に合わないと判断し、防御力を上げる付与魔法を自分に掛ける。
直後櫓の回し蹴りがユスギに当たるが、鉄の塊を蹴った様な手応えが返ってきて、ユスギもダメージをあまり感じている様子は無い。
「かってぇ。」
動かなくはなっていないが、少し足が痺れている。
「口まで動かせないとは危ない危ない。」
呪縛の魔眼で動きが止められると、身体の自由が全て奪われてしまう。
そのため魔法を使う為に口を動かす事すらも出来ない。
ユスギは追撃を警戒して距離を取る。
「ここまで苦戦するとは予想外だよ、魔力が切れそうだ。」
櫓の身体は女神に弄られて普通の人間と比べて遥かに魔力量が多い。
なので普通の人間であれば櫓と戦い続けていれば先に魔力切れを起こしてしまうのだ。
ユスギは櫓と戦っている間に攻撃防御移動と付与魔法を多用し、魔装も複数回使っている。
魔法を使う際の魔力は自然界に存在している分で半分を補うので、自分自身の消費魔力はスキルを使うよりも少なくて済むが、多用していたため魔力切れが近いのだ。
「魔力的にも次で終わりにさせてもらうよ。」
ユスギの両足に魔力が集まり魔装される。
「いいぞ、付き合ってやる。」
櫓も雷帝のスキルを使い、両足に雷を纏わせていく。
「AGI&STRエンチャント!」
魔装された両足が光り輝く。
五秒と言う短い時間の輝きだが、光り輝いている間は何にも勝る絶大な威力を発揮する。
ユスギが地面を蹴り、壇上が爆音と共に割れる。
櫓も合わせて地面を蹴り風を置き去りにする程の速度で移動する。
「つよつよキック!」
「破魔閃雷脚!」
二人の足がぶつかり合い、耳を劈く程の爆音がコロシアム全体に響き渡る。
互いに一歩も譲らず、二人の力は拮抗している。
だが時が経過する毎にユスギの足の光の輝きが弱まり
少しずつ押されていく。
「くっ、まだまだぁ!STRエンチャント!」
残り少ない魔力で更に足に付加魔法を使うが、櫓の足に纏わる雷の威力は衰えず、押し返す事は出来ない。
「ぐっ、ううう!」
「はあっ!」
櫓の足に纏わる雷が更に膨れ上がり、ユスギが後方に物凄い速さで吹き飛ばされていく。
壇上に足を付けて減速を試みるが全く速度は緩まらず、そのまま壇上の外に吹き飛んで行き、壁に爆発音を上げながらぶつかりクレーターを作る。
「ぐあっ!?」
壁から地面にドサリと落ちて気絶するユスギ。
「ユスギ選手場外により、勝者櫓選手!魔法都市マギカル、トーナメント戦優勝は櫓選手です!」
司会者のアナウンスが響き渡ると、会場から大歓声と拍手が壇上に降り注ぐ。
観客席にいるネオン達も立ち上がって喜んでくれている。
「優勝した櫓選手には優勝商品として、白金貨一枚と魔法道具を差し上げます。」
司会者が台車に優勝商品を乗せて運んできた。
白金貨とはこの世界に存在する一番高価な貨幣なので、嬉しく無い訳がない。
(なっ!?これは。)
しかし隣に載せられている魔法道具には更に目を奪われた。
城塞都市ロジックのオークションにて、櫓が奴隷達に使う為に複数落札した魔法道具と全く同じ物が複数載っていた。
それは使用した者にスキルを与える、恩恵の宝玉だった。
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