127話 魔法都市でもトーナメント戦
「あー酷い目にあった。」
櫓は先程の事を思い出しながら言う。
痛みが引いてから四人で冒険者ギルドの中に運営されている酒場で昼食を食べていた。
「その方は十七歳だったんですよね?その歳で子供扱いされては怒る人は怒りますよ。」
「仕方がないだろ、知らなかったんだから。」
櫓の股間を蹴った女の子は身長的には百センチ程しかなかった。
櫓とシルヴィーは百七十センチ前後程あり、ネオンとミズナは百六十センチ程だ。
パーティーメンバーの誰と比べても小さく、ネオンと同い年とは外見からはとても思えなかった。
「調査の魔眼は使われなかったのですか?」
「そんな四六時中使っている訳では無いからな。」
調査の魔眼は何かと便利で神眼で使用出来る魔眼の中では使う率が高いが、使用すれば当然魔力が必要となり、常に使っていては直ぐに魔力が尽きてしまう。
それと会う人会う人に使っていっても、その情報全てを覚えきれる訳も無い。
「これとこれとこれお代わり・・・。」
ミズナは興味が無いため話に加わらず、店員に料理を注文して黙々と食べている。
冒険者ギルドの受付で幾らかの素材は買い取って貰えたので、その分のお金が入ったのだが、今回の一食分で消えそうなくらい既に皿が積まれている。
「そう言えば宿は結構近いのか?」
「大通りを少し歩けば見えてきますわ。」
「歩いてくる途中に何個か店があったんですけど、魔法に関する物ばかり売られてましたよ。」
魔法都市と言うだけあって、魔法使いが必要とする物は何処にでもあり、仕入れるのに苦労はない様だ。
「魔法道具とかその素材を扱っている店なんかは見たか?」
「ここに来るまでの道なりにはありませんでしたわね。」
「何か欲しい物があるんですか?」
「ここでしか手に入らない魔法書とかありそうだし、購入したいなと思ってな。それと魔法書もそうだが今まで購入してきた本を収納した本棚を並べられる部屋を馬車に増設したくてな。」
本はこの世界では骨董品の様に貴重な物だ。
元の世界の様にコピー機など無いので、同じ本を量産するだけでも、魔法やスキルを使ったりしなければならない。
その様な魔法やスキルも珍しいので、基本的には直接作者が手掛けた一点物が主流になるため、どうしても価格が高くなってしまう。
しかし櫓達のパーティーは出費が多い様に思えるがそれを上回る収入があるので、立ち寄った街では有用そうな本から娯楽系の本まで気に入った物は全て購入している。
購入した本は全てボックスリングの中に収納されているので、場所は取らないが全員が読みたい時に自由に読めない不便さはある。
「ロジックと同等の広さはありますから、探せば見つかると思いますわ。」
「でも空間魔法を付加させる為の素材って高価でしたよね?」
櫓達が普段利用している恐らく世界一便利で豪華な馬車には、空間魔法付加が複数使われている。
部屋を大きくしたり、新しい部屋を増設したりする度に使われる感じなのだ。
その為普通馬車には掛からない様な莫大な費用が掛かっており、櫓が女神から貰った白金貨も使われている。
「素材を売った金が大量に入ってくるから大丈夫だろう。まあそれ以外にも金策は何かしらやろうとは思っているけどな。」
皆で倒した魔物を売った金なので、本を櫓以外が読むとしてもそこから全部使うのは気が引けるので、他の方法で収入を得ようと考えていた。
「あ!それなら丁度良いものがありますよ。」
「宿のご主人から教えていただいた件ですわね?」
「そうです、近々魔法都市マギカルにあるコロシアムで腕自慢達によるトーナメント戦があるらしいですよ。」
「前にロジックでネオンが参加したやつだな?」
城塞都市ロジックで開催されたトーナメント戦には冒険者のランク制限が適応されており櫓は出場出来なかった。
その為腕試しにとネオンを参加させたのだが、日々の訓練の成果もあり準優勝と言う好成績を残してくれた。
「そうです、でもマギカルで開催されるトーナメント戦は誰でも参加可能らしいですよ。」
「上位入賞者への賞金も相当な額らしいですわ。」
「なるほど、それなら参加してみるのも良いかもな。」
櫓は未だこの様な対人戦の大会などには参加した事がない。
誰でも参加可能となると戦い初心者の様な者も多いだろうが、自分と同等もしくはそれ以上の強さを持った者も参加してくる可能性もある。
領主の屋敷で出会ったハイヌやオーガの森で出会った魔王クラメなど、自分よりも格上の存在が複数居るのを認識して、更に強くなるために強者との戦いは大歓迎であった。
「皆で参加しましょう!」
「誰が上位に残れるか勝負ですわね。」
「たまにはそう言うのもいいかもな。」
「私はパス・・・。」
空気を読まずにミズナは面倒そうだなと乗り気では無い。
元々好んで戦闘をしたがるタイプでは無く、見返りがあれば戦うタイプなのだ。
「一位になったら好きな料理を好きなだけ作って食わせてやるぞ?」
ミズナの扱い方はもう分かっているのでやる気にさせるのは簡単な事だ。
「私が絶対優勝する・・・。」
口元に料理のタレを付けフォークを握りながらガッツポーズをしてミズナが言った。
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