123話 オーガの魔王
少し通路を進み開けた場所に繋がっている近くまで来た。
少し通路が曲がりくねっているため肉眼では未だ見えない。
櫓は透視の魔眼を使い再び通路の先を見る。
「っ!?」
「何か見えましたの?」
「ああ、外とは比べ物にならない程の死体の山だ。」
櫓の目に写し出された光景は、開けた場所にハイオーガやオーガが数え切れないほど殺されて横たわっている光景だ。
その他にも姿形が少し違うのが複数いるが、ハイオーガとは違うオーガの上位種族だろう。
「一応俺達の居る場所と反対側の壁まで見えたが立っている奴は居ない様だ。」
それでも二人は慎重に進んでいく。
通路を抜け開けた場所に出て確認してみるが一面死体のみだ。
「相当な量ですわね。」
「軽く百体は超えるかもな、て言うか全員同じ殺し方をされている所を見ると単独か?」
殺されている中でハイオーガの数も決して少なくない。
櫓やシルヴィーでさえこの数を一人で相手にするとなると魔力切れや致命傷を心配せざるを得ない。
「同じ倒し方をする者同士のパーティーと言う事も考えられますわね。」
無い訳ではないだろうが同一人物と見て良いだろうと櫓は思った。
「これをやった冒険者がいないな。」
「ここ最近の事では無い可能性もありますわよ?」
「そうだな、まあ死体が無いのなら良かった。」
それから二人でオーガ達が大量に発生している手掛かりが無いかその場所を探した。
洞窟の外で見なかった魔物に調査の魔眼を使うと、ジェネラルオーガやメイジオーガなどの上位種族であった。
そうして普通のオーガとは違う魔物を順番に見ていっていると目的の魔物が見つかる。
名前 ガルード
種族 オーガ(魔王)
年齢 二百八十歳
スキル 身体強化 全攻撃耐性Lv二 威圧
状態 死亡
一際大きなオーガの上位種族を見つけたかと思うとそれは魔王であった。
他のオーガ達と同様に魔石のあっただろう部分に大穴が空いている。
上位の魔物になるほど、その身体の中に持っている魔石は高純度で大きいため、普通より大きめの穴が空いているのだろう。
「ちょっと来てくれシルヴィー。」
遠くで調べていたシルヴィーに呼び掛ける。
「どうしたんですの?」
「こいつが魔王みたいだ。」
教えるとシルヴィーは驚いた様にガルードの死体を見る。
「魔王を倒したが持って行けなくて放置したと言う事か?魔王って放置しておいて何か不都合とかあるのか?」
「魔王と言えどこれ程の重傷でしたら問題ありませんわ。魔石が未だ有る場合ですと蘇生される可能性もあるかもしれませんけれど。」
そして魔石はその身体に馴染んでいる最初から持っていた物で無ければならない為、他の魔物の魔石で代用する事は出来ない。
そのためガルードを蘇らせるには少なくとも持ち去られた魔石が無くては始まらないのだ。
「ならこいつはここに放置でも大丈夫か、殺した奴が取りに来るかもしれないしな。」
「そうですわね。」
「はぁ、おそらくソウガの情報にあった魔王ってのはこいつの事だろうから、また情報収集からか。」
邪神の情報を魔王から得るために探していたのに、他の冒険者に先を越されて殺されてしまった。
これで今持っている魔王の情報は無くなってしまったのだ。
「残念ですが気持ちを切り替えましょう。それに魔法都市マギカルでも魔王の情報を得られるかもしれませんわ。」
「そうだな、オーガの大量発生の原因も死んでいる事が分かったし、上に戻って魔法都市を目指すか。」
二人は来た通路を登って洞窟の入り口を目指す。
道中に何体か外から入ってきたオーガが居たが瞬殺して進んでいく。
「外には居ない様だな。」
「そうですわね・・、なっ!?」
「どうしたシルヴィー?」
シルヴィーが上を見て驚いた声を出したので同じ様に上を見て固まる。
そこにはネオンとミズナに渡しておいた救援砲から放たれた光の玉が輝いていた。
何かあったら躊躇せずに打ち上げろと渡した時に「私が居るのに必要ない・・・。」と受け取ろうとしなかったミズナに無理矢理押し付けてきた物だ。
そのミズナが使ったと言う事は、お遊びの悪戯で無ければ非常に危険な状態である可能性が高い。
「先に行ってください、私も全力で向かいますわ。」
「分かった。」
櫓は雷帝のスキルで足に雷を纏わせて地面を踏み抜き、爆速で光の球の下を目指して移動する。
森の中を移動しなければならない為、木々が邪魔で直線での移動が出来ずにいつもの速度は出せない。
それでも普通に走るよりも遥かに速いので、結構森の奥まで入ってしまっていたが、十数秒で辿り着けるだろう。
移動しながらチラリと左の腕に嵌められた精霊の腕輪を見る。
ミズナがもしやられたのならば、実体を失い精霊の腕輪の中に戻ってくるはずだ。
そして櫓から魔力を受け取れば再び実体を作って活動できる様になる。
戻って来ていないと言う事は、未だ実体は保てているのだろう。
(いつ光球は打ち上げられたんだ?俺達が洞窟に入った時か?それとも出てくる直前か?どちらにせよ、頼むから間に合ってくれよ。)
櫓は風さえ置き去りにするほど更に加速して合流を目指した。




