122話 信用されない
シルヴィーと合流するため森の中を透視の魔眼を使いながら探していると、遠くにハイオーガやオーガと戦闘中のシルヴィーを見つける。
近くにはオーガも数体倒れており、群れに襲われた様だ。
余裕は有りそうだがシルヴィーにとってもハイオーガはオーガと違って、楽に瞬殺出来る訳では無さそうだ。
加勢しようとも思ったが戦闘音に引き寄せられて近づいているハイオーガを見つけたので、そちらを倒しておこうと雷帝のスキルで足に雷を纏わせ素早く接近する。
「確か身体強化はパッシブスキルじゃ無かったよな。」
ハイオーガの首元近くに飛び上がって呟くと同時に、両手を魔装して首を別方向に無理矢理ねじ曲げる。
ゴキッと言う鈍い音がして首の骨が折れて、そのままハイオーガは地面に倒れる。
「不意打ちをされればスキルが発動出来ないから大した事無いな。ハイオーガなら首が変な方向に曲がっても、そのまま襲い掛かって来るかと思ったがそんな事も無かったか。」
絶命したハイオーガをボックスリングの中に回収して、シルヴィーの方に戻ろうかと思ったら、そちらの方からシルヴィーが現れた。
「なんだもう終わったのか?早かったな。」
「櫓さんが遠くから見ているのが見えまして、何か私に用が有るのかと早めに終わらせてきましたわ。」
「ハイオーガがいたのに流石だな。」
「少し強い個体が居たと思いましたらハイオーガでしたのね。」
シルヴィーは櫓と違って敵の情報を得るスキルや魔法などを持っていないので、少し強いオーガとしか思わなかった様だ。
「合流したと言う事は何か手掛かりを見つけましたの?」
「魔王に繋がる手掛かりかは分からないが気になるものは見つけた。」
櫓は先程見つけた、オーガやハイオーガが出入りしている大量の洞窟の事と、その洞窟に冒険者が入った可能性が有ると言う事を伝える。
「見殺しにするのもあれだから、その洞窟に入ってみようと思って誘いに来たんだ。」
「そのお気持ちは分かりますが、私達も危険では有りませんの?」
「透視の魔眼を使っていれば常に先手を打てるし、やばそうな状況が見えたら接触する前に撤退出来る。」
ミズナには出会った時に既にバレたが、仲間であるネオンやシルヴィーにも神眼の事は既に話している。
その時透視の魔眼については、我々には絶対使わない様にと二人に散々言われ、それから透視の魔眼を使おうとする度に言われ続けている。
「なるほど、それなら深追いし過ぎると言う事も有りませんか。」
「ああ、あまり遅くなっても二人に心配されてしまうし少し覗くだけだ。」
「分かりましたわ、ここから近いんですの?」
「直ぐそこだ。」
櫓はシルヴィーと共に先程見つけた洞窟の場所に向かう。
洞窟の周辺には殺されたオーガが何体か転がっており、近くに生きているオーガは居ない。
洞窟の中にいたオーガも殺されているので、生きて出て来た奴が居ないのだろう。
「全て綺麗に同じ様な殺され方をされていますわね。」
「こんな殺し方をしているんだし、魔物では無さそうだろ?」
「そうですわね、それにかなりの手練れの様ですわ。」
激しく動いて襲い掛かって来るオーガ達を全て同じ場所を攻撃して倒しているのだ。
戦闘に慣れている者でなければ中々出来る事ではない。
「手練れなら大丈夫かとも思ったんだが一応な。」
「櫓さんのその優しい所、私好きですわよ。」
「からかうのは止めろ。」
気恥ずかしくなってそっぽを向くと、シルヴィーはクスクスと笑っている。
その後二人で洞窟に入るが外と同じくオーガが魔石の有る胸部分のみに穴を開けて通路に倒れている。
「凄い数だな。」
「少し進んで来ましたがどうですの?」
「ちょっと待ってくれ見てみる。」
「絶対に後ろは振り向かないで下さいね。」
「分かってる分かってる。」
後ろにいるシルヴィーから念押しされる。
櫓は透視の魔眼を発動させて背後を見ない様に左右や下を見てみる。
他の洞窟から繋がっているであろう通路が幾つも見え、その通路では生きているハイオーガやオーガ達が行き来している。
そして櫓達が使っている通路は見える範囲では生きているハイオーガやオーガは見えず、また他の通路と繋がっている部分は岩で完全に封鎖されて壁の様になっていた。
「ここから見える範囲だと他の通路と繋がっている部分が封鎖されているくらいしか情報はないな。」
「新しいオーガ達との戦闘を避けるためですわね。此方としても余計な消耗を防げて助かりますわ。」
二人はもう少しだけ進もうと言う事になり洞窟を降っていく。
時々透視の魔眼を使っていると、少し進んだ場所が開けた空間に繋がって見える。
「終着点かもしれない、通路よりも開けた場所にこの先が繋がっている様だ。」
「どれ程の大きさですの?」
「まだ通路の出口付近しか見えてないから大きさは分からないな。だが俺達の通路の両隣にも別の通路があってその場所に繋がっている様だ、道中と同じく塞がれているけどな。」
岩で完全に封鎖されている両隣の通路にはハイオーガやオーガが居るのが見える。
しかし岩で塞がれていて壁の様に見えるためか、壊そうとしたりはせずに引き返して上に上がって行っている。
二人は透視の魔眼を使い今まで以上に慎重に進もうと話し合い、更に洞窟を降る事にした。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。




