21話 試験開始
「ランクアップ試験?名前から察するに今のFランクから上がるための試験ってことだな?」
「その認識で大丈夫です。冒険者登録をなさる方には前の職業などで既に実力をつけ、Fランクの実力を超えている方も多いです。その様な方々のためのシステムです。一気にランクを上げることも可能ですが、今のランクは自分には合わないとか、依頼をこなすのが面倒だから受けさせろと言われる方もたまにいらっしゃいます。ランクアップ試験をその都度行なうほどギルドも余裕はないのでランク帯があっていなさそうな方には声をかけているんです。」
そう言ってアリーネはランクアップ試験を勧めてきた。
「こちらからすれば高いランクの依頼が受けられるから是非お願いしたいところだな。ネオンはどうだ?」
「私は櫓様と違ってそこまで高ランクに上がらないと思いますよ?」
「受けてみるだけ受けてみてもいいんじゃないか?アリーネさん受けられるのは俺だけか?」
「ご一緒のパーティを組まれている様ですし問題ありませんよ。ただランクアップ試験には少しお金がかかってしまいますのでそれでもよろしければなんですけれど。」
「ちなみにどのくらいかかるんだ?」
「上がるランクによって変わってきます。試験を受けるにあたって銀貨十枚、ランクが上がらなくてもお支払いしてもらうことになります。そして一ランク上がるごとにプラス銀貨十枚となります。Bランクまでは試験で上がることができるんですけど、もしBランクだとするならば銀貨五十枚ほど必要になります。」
「まあ払えないこともないし二人で受けるとしよう。」
「かなり出費することになりますけどよろしいんですか櫓様?」
「さっきの素材や魔石も少しは足しになるだろうし大丈夫だ。他にも売れるものならあるしな。」
「わかりました、せっかく櫓様が受けさせてくれるんですから私も頑張ります。」
ネオンが小さい拳を握って気合いを入れている。
「気合いが入るのはいいが無茶するなよ?別に無理してランク上げすることもないんだからな。」
「大丈夫です無茶はしません。それでも銀貨十枚も無駄にしたくはないので。」
ネオンは奴隷として生きてきた期間に銀貨などの大金を持つ機会などなかったため受講費を無駄にはしたくないと思っていた。
櫓はネオンに怪我されるよりは、銀貨くらい無駄になっても構わないと思っていたが無茶はしないと本人も言っていたので、それを信じることにした。
「ではお二人とも受けると言うことでよろしいですか?」
「ああ、試験は明日とかに来ればいいのか?」
「担当の者が二日後から用事がありますので、それまでの間でしたらいつでも大丈夫です。今からでも問題ありませんよ?」
「ちなみに試験内容はなんだ?」
元々依頼が終わったら装備を見に行こうとしていたので、時間がかかるようなら試験は明日にしようと考えていた。
「ランクアップ試験はモンスターとの戦闘です。そのランク帯のモンスターと戦ってもらい、試験官が判断いたします。」
「なるほど、それなら時間もそんなにかからなそうだな。なら今日受けていくか、いいかネオン?」
「私は大丈夫ですよ。」
「それじゃ軽く酒場の方で食事してくるからその後試験を頼む。帰ってきたばかりで昼飯がまだなんでな。」
「かしこまりました、昼食が済みましたらまた声をかけてください。」
アリーネと別れて二人は酒場の方に行き、パンや串焼きなどの軽く食べられる物を注文する。
「まさかランクアップ試験なんてシステムがあるとは思わなかったぞ。」
「私も知りませんでした。でもランクが上がれば報酬の高い依頼も受けられますからラッキーでしたね。」
「まあな、てかあの素材の量でFランク以上とみなされるんだな。」
「量もあると思いますけど、移動も含めてたった半日しか経っていないからと言うことだと思いますよ?Fランクのパーティなら一日〜二日かけて人数も五〜六人くらいで同じ量行けるかどうかではないでしょうか?」
「通りで驚かれるわけだ。」
雑談しつつ食事を終わらせた二人は再びアリーネの元に向かう。
「お待ちしてました、試験官をお呼びしてもよろしいですか?」
「ああ頼む。」
アリーネは確認をすると奥の部屋に入っていく。
待つこと数分、一人の男を連れて戻ってくる。
「お前たちが試験を勧められた冒険者だな。私は試験官のマークだ。早速試験を始めるぞ付いて来い。」
マークに連れられて着いた所はギルドの裏手にある広場のような場所であった。
「ここで試験を行う。ここは試験や冒険者が訓練などを行うための場所だ。魔法道具により死ぬことはないため存分に力を発揮してくれ。」
マークはこの場所の説明をするとどちらから試験を受けるのかと聞いてくる。
櫓は少なからず緊張しているように見えるネオンのために先に受けようと思い名乗り出る。
「まずは俺から受けさせてくれ。」
「いいだろう。Eランクの相手はホブゴブリン二体、Dランクの相手は・・・。」
「Bランクで頼む。」
櫓は対戦相手の説明も聞かずに宣言する。
マークは今までにもいきなり試験で一番上のBランクを受けようとするものを見て来ている。
大抵はあっさり負けて銀貨十枚を無駄にしていた。
櫓は見た目では強そうに見えないので、今回も自分の実力を弁えていない奴が来たとマークは思っていた。
「Bランクの相手はオーガ二体との戦闘だ本当にいいのか?」
「ああ問題ない。」
「なら試験を始めるぞ。私がモンスターを召喚するので、魔物が現れたら試験開始だ。魔物を倒せたら試験クリア、倒せなかったら失敗だ。」
そう言うとマークは地面に魔法陣の様なものを書いていく。
(Cランクのホーンボアを楽々倒せたんだしCランク帯の実力はあるんだろう。さてBランクはどれくらいのものか。)
そんなことを考えているとマークが魔法陣を書き終え詠唱をし始める。
「我が魔力を糧とし、我の呼びかけに応え、我が敵を打て、来たれオーガ。」
魔法陣から四メートルはありそうな魔物が二体出てくる。
櫓は神眼で調査の魔眼を発動させる。
種族 オーガ(魔物)
スキル なし
名前や年齢が表示されない。前にアイアンアントを見た時も表示されなかったので、普通の魔物にはないものなのだろう。
片方の魔物は召喚が終わると櫓に向けてその大きな拳を叩き込んでくる。
「破却!」
その拳に向けて突っ込み、魔装で強化した回し蹴りを放つ。
ぶつかった拳と脚であったが直後オーガの肘から先が櫓の蹴りの威力により爆散する。
「なんだ、スキルもないから元々の強さが高いのかと思ったがこの程度か。」
オーガは自分より遥かに小さい生き物に傷を負わされると思っていなかったため、右腕を亡くされて怒り狂っていた。
次は足で踏みつぶそうとしてくる。
櫓はボックスリングからロングソードを取り出しつつ後ろに下がって交わす。
「実力差はなんとなくわかったしもういいか。天剣三式・弥生!」
櫓は剣の柄頭の部分を蹴り抜く。
ロングソードは真っ直ぐ攻撃を交わされたオーガに向かい、その首を貫く。
直後大きな音を立てながらオーガは倒れた。
もう一体のオーガも櫓を倒そうと向かってくる。
「お前ももういいや、雷撃」
櫓は雷帝のスキルで手に纏わせた雷を残ったオーガに向けて放つ。
オーガは一瞬にして黒焦げになり崩れ落ちる。
櫓の戦闘は一方的な蹂躙で終わった。
閲覧ありがとうございます。
ブックマークやポイント評価よろしければお願いいたします。