逝き先は人の居るところ・・・の筈だったみたいです。
自身が幽霊だと自覚し、しばらく茫然とした後に周辺の探索を始めました。
目の覚めた場所はだだっ広い草原。文字通り草花以外何もない場所でした。
これまたしばらく歩い・・・もとい、飛んで行くと今度は森がありました。
草原に居たときも感じたことですが、地球の知識にはない植物や動物ばかりです。
初めてのことばかりだと言うのに湧くのは好奇心ではなく恐怖心でした。
当然と言えば当然ですかね?
一つだけでも知識にあるものがあれば多少は安心できると思うのですが、そこらに落ちている石ころですら、明らかに地球には存在しないでしょう。
なんと言うか、こう、ね?
なんで君はそんな形になっちゃったのかなぁ?と聞きたくなる形なんですよ。
そして、それを見て思うことは一つ。
「死んでて良かった!幽霊で良かった!グッジョブ私!!ナイスデッド!!」
その転がっている石ころと言うのがですね、明らかに「石化されて砕かれちゃいました!てへ!」なんて言っていそうな鳥類か何かの残骸なんですよ。
表面は羽毛、中は一部が骨だったのかスポンジ状の空洞が見受けられます。
あらら、こっちに落ちてるやつなんか目玉の原型保っちゃってますねぇ。
わーい!!その近くにはパズルが落ちてるぞぉ!!!
でも、すり抜けてしまうのでやれません!!
まあ・・・周辺に落ちてるものから推察するに、組み立てたら頭の中身になりそうなので、触れたとしても絶対やりませんがね(泣)
そんなこんなで森をずっと進んでいくと、いかにも人の住む場所に続いていそうな街道らしき道にたどり着きました。
森には精神的に猛毒なものばかりでしたので、ようやく一安心。
しかし例の石ころの製作者も、その製作現場も見ずに済んだのは喜ばしい限りです。
それでは道端まで行って、もはや必要のなくなってしまった休憩を取るとしましょうか。
人が居たら、私を認識できるかも確認したいですし。なるべく目立つように道のど真ん中、陣取ってやりますよ!ハッハッハッ!!
・・・人、通りますよね?
私のこの心配は現実になってしまいました。
太陽の昇降作業を鑑賞すること十数回。
まるで人が通る気配ありません。
それどころか、道なりに沿って移動しているのにも関わらず人の住む場所に辿り着く気配もありません。
って、おや?あれは・・・。
「森からおいでますは!なんと!ドラゴン様じゃないですか!おはようごさいまーす!!!今日の獲物は・・・これはなんと見事な!!それってグリフォンですよね?旨いんですか?そりゃ旨いから狩ってるんですよね!失礼しましたっ!!!ハッハッハッ!!」
『・・・これまたずいぶん喧しい幽霊が居たものだな。食えんし殺せん以上、黙らせられんとは質の悪い』
どうやらドラゴン様の機嫌を損ねてしまったらしいですね。
少々五月蝿くしすぎましたか。
「あ、すみません。今すぐ黙りま・・・ん?」
『ほう、自ら黙るとは珍し・・・む?』
「・・・・・」
『・・・・・おい』
「・・・・・はい」
呼び掛けに返事をしたところ、ドラゴン様が目の前まで近づいて参りました。
改めて見るとデカイ。
「私に体があったら丸飲みされてますね、これ」
『・・・丸飲みなぞ品性の欠片もない真似出来るか。それに、そんなことをしては味もわからんだろう。我等はグルメなのだぞ?』
「なるほど。だからあの時のドラゴン様もウサギを焼いて食べていたのですね。・・・あの、これって、やっぱり言葉通じてますよね」
『理解したのなら良い。肉は焼くと旨みが増すのでな。やはり肉は焼くに限る。・・・うむ。通じておるな。それはそうと我は今、ものすごく。そう、ものすごくだ。言いたいことがある』
「奇遇ですね。私もです。」
「『何故会話が成り立つ!!!?』」
まさかのドラゴン様との共感。
奇跡って起こるのですね。出来れば奇跡ついでに身体下さい。