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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
生徒会の仕事は地味な方が重要
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第八十四話 仮定(supposition) 紅壱は、もし、瑛と修一が同時にピンチの場合、どちらを助けるのか

クジを引き、瑛、鳴、紅壱の班、愛梨と恵夢、夏煌の班に分かれた生徒会

瑛らの班の仕事は、魔王の一部を狙い、学園を襲撃するも、生徒会の奮戦の前に屈した魔属の屍から、魔晶の素材にする、肉体の一部を切り取る事だった

瑛から、各魔属から採取する部分と、傷つけない取り方を教えられた鳴と紅壱は、早速、仕事に取り掛かる

小屋の中では、黙々と作業する彼らの素材を採取する音だけが響くのだった

 「会長、すんません」


 自分を呼んでくれた紅壱の声に、テンションが上がり、地味な作業で磨り減った心が一気に回復したのを実感しながら、それはしっかりと隠蔽して、瑛は振り向いた。すると、そこには頭にぽっかりと穴が開いた小鬼ゴブリンと、犬歯がなくなっている犬頭土精コボルドの生首を十五、六個ばかり放り込んだ籠を持ち、直立っている紅壱がいた。

 一般女子だけでなく、並みの学生術師であっても、修羅かデーモンか、と勘違いするほど人相が柔和やわらかくない紅壱が魔属の頭を鷲掴みにして、自分にいつの間にか、足音もなく近づいてきていたら、悲鳴の一つくらいは発していただろう。

 でも、瑛はそんな紅壱を見て、キュンと来てしまったようだ。本人は抑制したつもりでいたが、頬の赤味は少しだけ濃さを増していた。

 頬が紅潮している瑛の色っぽさにドキッとしながらも、小屋の中が少し暑いのと、集中していたからだ、と自分を誤魔化し、紅壱は魔属の首を掲げる。


 「そろそろ、溜まってきたんですけど、これは外のナツ達に預ければいいんですか?」


 あぁ、と瑛が頷いたので、紅壱はオークの首が詰まっている籠も持ち上げる。


 「ついでに、持って行きますよ」


 制そうとした瑛の手をやんわりと下ろさせ、紅壱は籠を担ごうとした。けれど、それを横から掻っ攫ったのは、鳴だった。


 「これは、私が持って行くわ」


 「それは構わねぇけど・・・・・・持ち上げられるのか?」


 「バカにしないでよねッ!」


 紅壱の言葉に、激昂する鳴。しかしながら、彼女の素の腕力では、持ち上げる事は出来ないようだった。何度か、顔を真っ赤にしてトライするも、底は床から精々、3cmほどしか浮いていなかった。


 「無理するなよ」


 呆れ笑いを紅壱にされ、カチンと来たのだろう、鳴は「キシャッー」と威嚇してきた。咬まれたり、引っ掛かれたりするのは御免だったので、紅壱は素早く、籠へ伸ばしていた手を引っ込めた。


 「会長!」


 「な、何だ、豹堂」


 「術を使っても良いでしょうか?」


 豹のような気迫で威嚇をしている鳴へ、紅壱へ籠を返せ、と言っても、素直に応じそうもないな、と察した瑛は「仕方ない、許可する」と肩を竦めた。


 「ありがとうございます」


 嬉しそうに笑った鳴は、紅壱に「見てなさいよ」と挑発してくるような目を向け、腕力を強化する呪文を唱えた。


 「スパーク・デリーブ・シンティッラ・ドリフテン」


 以前、愛梨から教えて貰った呪文とは違う事に気が付きつつも、紅壱は軽く落胆ガッカリした。


 (魔力を発動させる気配が感じ取れるかと思ったが、ダメだったな)


 自分が魔力を使えないからなのか、それとも、やはり、自分の魔力の質が瑛達と言うよりも、人間のそれと異なるせいか、と思い悩む紅壱。

 魔力が一定量以上で、呪文を正確に詠唱できれば、術は正しく発動する、瑛の説明は理解しやすかったが、どうにも、実戦向きじゃないよな、と紅壱は考えてしまう。

 自分が術師と敵対したのなら、呪文を唱えているタイミングを狙う。わざわざ、相手に攻撃するチャンスを与える必要がどこにあるのか。

 呪文を唱えている間は、肉弾戦が得意なメンバーや、詠唱速度が速いメンバーが弾幕を張る、瑛の言う対処はセオリーで、それなら不利ではなくなる。

 けれど、術師が無詠唱で魔術を発動させれば、逆に騎士や戦士と言った前衛職の働きがより活かされる、とも彼は考えた。

 仲間と協力して勝つ、それも大事だと分かっていたが、基本的に連携が得意ではない紅壱としては、魔術も武術も同時に熟し、一人で戦いたかった。皆の迷惑になりたくないだけなのが、そんな虫の良い受け止め方はして貰えない事も承知していた。


 (そもそも、俺の場合は、身体能力を上げたかったら、闘気で済むからなァ。

 けど、他の奴の能力を上げれば、戦闘で有利になるのは確かだし、その手の魔術も覚えておいて、損が無いか)


 そんな事を考えている内に、鳴の詠唱は終わりに差し掛かる。


 「タフ・ソリッド・アウダーチェ・ゾリーデェ・ドゥロ」


 淡い白色の光に覆われていた鳴の両腕から、ボンッ、と音が発せられた。どうやら、彼女の腕力は魔術によって、無事に強化されたようだ。

 チラリと瑛を見れば、感心している面持ちなので、鳴の呪文は完璧で、発動までのスピードも中々のようだった。

 ドヤ顔を鳴は紅壱に向けた。ただ、魔術に疎い紅壱は、それが凄いのか、がピンと来ないらしく、表情が変化していないものだから、鳴は憮然とする。しかし、効果を見せれば、負けを認めるだろう、と切り替えたようだ。

 頭部だけとは言え、これだけの数が入っていれば、十分な重量になるはずだが、先ほどとは打って変わって、両手で籠を抱えた鳴は涼しい顔で出入り口に歩いていく。


 「じゃ、行ってきます」


 既に、鳴の腕力が魔術によって、どれだけ強くなっているか、に興味も薄れていた紅壱は瑛に一言かけてから、ゴブリンとコボルドの頭部を積み重ねた籠を片手で持ち上げた。

 先程は、紅壱の顔ばかり見ていたのか、彼が今しがた、鳴が運んでいった籠よりも重い筈のそれを容易く持っているのを見て、静かに息を呑んだ瑛。

 「重くないのか?」、つい、間抜けな質問をしてしまった、と羞恥心から赤くなった瑛を可愛いな、と悶えそうになりながら、紅壱は「いや、そんなに重くないですよ」、そう平然とした調子で答えた。

 常に最低限の闘気を纏っているのがデフォである紅壱は、自身の身体能力が桁違いである事態に疎くなっていた。

 実際、紅壱にとって、魔属の生首がたっぷりと入っている、その籠の重さの体感は、週刊少年漫画誌を十冊程度ほど束ねた物と同じだった。大きさと中身がアレなので、さすがにお手玉のような真似は厳しいにしろ、持ち手の革紐を指二本で挟んでも、難なく持ち上げられた。今、しっかりと握っているのは、可能性は低いにしろ、中身が何かの拍子に転がり落ちた時に拾い直すのが面倒だったからに過ぎない。


 「君は力持ちだな」


 「・・・・・・腕力だけが男らしさとは思っちゃいませんけど、いざって時に、大切な誰かを守らなきゃならない時に、細腕じゃカッコが付かないと思いませんか?

 俺は、会長と修一が崖から落ちそうって時は、両方とも助けたい欲張りなんですよ」


 「確かに、強欲にも程があるな。まぁ、嫌いじゃない。

 だがな、辰姫、君にそれだけの力があっても、一人の人間が、その手で掴める重さはたかが知れている。長さも同じだ。だから」


 「素直に、誰かへ助けを求めるのも大事ですよね」


 「!!」


 まさか、紅壱が自分の言わんとしている事を先読みし、にこやかに同意までしてくれるとは思ってもいなかったようで、瑛は「吃驚」としか表現しようがない表情になった。しかし、すぐに「あぁ、そうだ」と微笑み返す。

 その微笑に、またしても、心臓を掴まれ、紅壱は息苦しさすら覚えてしまう。


 (クソッ、なんで、この人、こんなに可愛いんだよ!?

 自分の微笑みが、可愛いって自覚してねぇのか!!

 そんな天然なトコも、俺の好みすぎじゃねぇかッッ)


 胸に痛みを感じている事を、瑛に気取られ、心配されてしまったら、冗談抜きで体温が50℃に達すか、瑛を押し倒してしまいそうだったので、紅壱はわざとらしく、話を広げた。


 「けど、会長、その質問って前提がおかしいですよね」


 「?」

 「修一は、俺の手なんか借りなくても、ド根性で這い上がってきますよ、きっと。

 と言うか、助けを求めてきた時点で、俺、蹴り落としますよ」


 「さすがに、それを聞いたら、友達が泣くんじゃないか?」

 

 「どうっすかね。むしろ、俺が助けようと、手ぇ伸ばしたら、逆に自分から落ちるか、俺を落とす勢いで自分は助かろうとする奴ですよ、アイツは」


 あまりな物言いに、彼らの間には友情があるんだろうか、と不安になってしまう瑛。

 戸惑っている瑛も可愛いな、と胸中でニヤけながら、紅壱は言葉を続けた。


 「会長にしても、そうですよね」


 「まさか、私も君を犠牲にするとでも思っているのか?!」


 「いや、そんな訳ないですよ。見縊らないでください」


 演技ではなく、本当にムッとした紅壱に、瑛は慌てて、「すまない」と謝ってしまう。


 「しかし、君の中で、私はどういうイメージなんだ。

 女だからと侮られるのも我慢ならないが、あまり、女の子らしくない、と思われるのも、正直、堪えるんだが」


 「シンプルに憧れる異性ですかね、俺の中で会長は」


 「憧れる、か」


 ショックを受けるかと思いきや、その印象は瑛にとって「嬉しい」と思わせるものだったらしく、彼女の表情が和らぐ。


 「会長の場合、まず、自分が崖から落ちるようなヘマはしないでしょう。

 戦うとなったら、ちゃんと地形を把握して、位置取りも常に意識するタイプじゃないっすか」


 「そうだな。

 地形も確認せず、相手に追い込まれるようなマヌケだ、と自分では思っていない」


 ある意味、傲慢な物言いではあるが、凛とした女帝気質である瑛が口にすると、微塵も厭味を感じなかった。そんな一面に、好印象を抱く紅壱。


 「もしくは、崖から落とされるとなったら、敵も道連れにした上で、相手をクッションにして助かろうとするでしょう」


 彼の言葉に少し考え込んだ瑛は、しばらくして、真面目な表情で首を縦に振った。


 「・・・・・・きっと、そうするだろうな。

 君は私より、私の事を把握しているな。実に頼もしい」


 「あざっす。

 けど、いざ、先輩が敵と一緒に落ちそうになったら、俺も一緒に飛び降りちゃいそうな気がします」


 「おいおい」


 「いや、本当に」


 「そんな真似は許さんぞ」


 「けど、そう上手く、会長が敵を下に出来るとは限りませんよ。

 なら、後輩で、男の俺が、女の会長を守るのが筋じゃないっすか」


 「その気持ちが嬉しくない、と言ったら大嘘になってしまうな。

 ただ、やはり、私は君を犠牲にしてまで、助かろうとは思わない。もちろん、他のメンバーにも、同じ思いだ。

 だから、そうならないよう、崖や滝の傍では戦わないようにしよう」


 「それが一番っすね」


 ハハハ、と笑い合った直後だった、不意に声が途切れ、静寂が響いたのは。

 お互い、このタイミングだ、と思った。相手が何かを言おうとしているのは、見つめている目で察せたが、ここは譲れない、と両方とも先に口を開こうとした。


 「す」


 「つ」

魔属の死体から取った素材が溜まった為、紅壱は瑛に声をかける、籠を外へ持って行く、と

だが、瑛に良い所を見せたい鳴が、横から籠を奪おうとする

残念ながら、彼女の腕力では満杯の籠は持ち上げられない。そこで、鳴は瑛から許可を取り、魔術でパワーの強化を図るのだった

鳴が意気揚々と外へ出ている間に、瑛と紅壱は強さについて語り始める

そして、自分達が良い雰囲気になっている事を感じ取った瑛と紅壱

果たして、二人の告白は成功するのか!?

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