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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
生徒会の仕事は地味な方が重要
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第八十二話 籤引(drawing lots) 紅壱ら、班分けのクジ引きを行う

忌み血の特性の一つである、魔力の吸収

一見すると便利な能力ではあるが、暴走の危険性も孕んでいた

実際、かつて、怪異の魔力を吸収しすぎて、自らの魔力が暴走し、魔人と呼ばれる存在になった術師がいたらしい

その魔人を討伐した、謎の七人に瑛が憧れを抱いている事を知った紅壱

その七人の正体を察した紅壱が、瑛には話せないな、と思ったのと同時に、恵夢が準備が終わった事を告げてきた

 やっと、鳴を元気づけ、室内に戻ってきた愛梨は目の前の光景に、開いた口が塞がらなくなった。

 親友と後輩は、先輩の胸の中で痙攣しているし、もう一人の後輩は部屋の隅に体育座りし、暗いオーラを纏っている。


 「おいおい、これはどういう状況だ」


 驚きながらも、まず、自分がすべき事は理解した愛梨は、テンパりすぎて周囲の呼びかけが耳に入っていない恵夢から、紅壱と瑛を救い出す事にした。もちろん、恵夢へ襲い掛かろうとしていた鳴の意識を、首絞め(チョーク)でブラックアウトさせるのも忘れなかった。



 「メグ先輩、自分のおっぱいが凶器だって事、忘れないで下さいよ」


 「きょ、凶器って言い方は酷くない?」


 「現に、アキとコウイチ、死なせかけたじゃないっすか」


 「・・・・・・面目ないよぉ」


 しゅんと落ち込んだ恵夢に、ようやく、息遣いが平時に戻った紅壱は歩み寄り、「メグ副会長は悪くないっすよ」と慰める。


 「そうです、元はと言えば、私が辰姫に対して、ムキになったから」


 「いや、俺が折れなかったのが」


 懲りずに、またしても、責任の奪い合いを始めようとした紅壱と瑛だったが、恵夢の瞳が潤み、胸からの威圧感が増したのを感じ取り、すぐさま、口を噤み、目配せする。今度、あの胸に頬が押しつけられたら、恵夢の母性に屈し、赤ちゃん返りしかねない。


 「大丈夫です、もう言い争いはしません」


 「本当に?」


 「もちろんです。なぁ、辰姫」


 コクリと肯いた紅壱は、「ほら、もう仲直りしましたから」と、瑛の手へハイタッチする。

 パァァンッ、と気持ちの良い音が小屋の中に響く。


 「!!」


 掌の接触は、その瞬間だけではあったが、瑛の耳を熱くするには十分だった。

 尊敬している会長が赤面しているのに気付き、自分が何かミスったのか、と焦る紅壱。

 しかし、これ以上、彼の傍にいさせたら、友人が火達磨になりかねないな、そう判断した愛梨は紅壱に夏煌を立ち直らせるよう、命じた。それに戸惑う紅壱だが、愛梨に「ほれ、さっさとしろ」と邪険な手つきで追い払われてしまったら、どうしようもない。


 「おい、ナツ、どうした」


 瑛の方を振り返りたい衝動を堪えながら、まだ部屋の隅にいる夏煌に近づいていく紅壱の良くも悪くも親しい、惚れた女への接し方に、愛梨は嘆息する。


 (アキの奴、ちょっと不意打ちで、手ぇ触られただけで、こんなに真っ赤になっちうって初心にも程があるだろ。

 キスなんかしたら、それこそ、紅壱を体内から消し炭にしちまうんじゃないか)


 紅壱と瑛が接吻する姿を想像した愛梨は、紅壱の穴と言う穴から真赤あかい炎を噴き出し、皮膚が爛れ、肉が焦げ、骨が剥き出しになっていく様まで思い浮かべてしまい、ブルッと身を竦ませた。だが、不思議と、コウイチなら燃えたくらいじゃ死なないかな、とは思った。

 ありえない考えを打ち消し、愛梨は「手、手、手」と繰り返している瑛を扇いでいる恵夢を手伝う。



 瑛が恵夢の「いいこいいこ」で威厳を整え直し、夏煌が紅壱にコンビニでフライドチキンを買う約束をさせた事で立ち直り、鳴が愛梨によって呼び戻されたのは数分後であった。


 「よし、色々と脱線もしたが、業務を始めるぞ」


 「うっす」


 「はいっ」


 「・・・・・・」


 「は~い」


 「おう」


 返事こそしたが、紅壱、鳴、夏煌の一年生トリオは、自分たちが何をするのか、したらいいのか、まだ理解しかねていた。

 

 「話し合いで班分けをすると、また揉めるのは判りきっているので、クジを使おう」


 瑛は棚の戸を開けると、そこから竹の筒を取り出す。それには、十数本の竹串が入っていた。皆に背を向けた彼女は竹串の先端に塗られている色を確認し、赤と黒の三本ずつ、六本だけを筒の中に残す。


 「二つの班に分かれ、作業する。

 出た色は絶対なので、文句も交換も受け付けない事にする」


 いいな、と瑛に念押しされては、誰にも拒めない。


 「では、まず、アタシから引くぞ」


 手を挙げた愛梨へ、瑛は竹筒を差し出す。愛梨は何の躊躇いもなく、一本を引き、先端を指で摘まんで隠した。


 「じゃ、私ぃ」


 「次は俺で」


 「・・・・・・」


 「会長と同じ班になれますように」


 そして、最後に残った一本を瑛が引く。


 「よし、皆、色を見せよう」


 黒の竹串を引いたのは、愛梨、恵夢、夏煌だった。

 つまり、赤の班になったのは、瑛、鳴、紅壱と言う事になる。

 願いが通じ、瑛と一緒に作業が出来るのは嬉しいが、お邪魔虫となる存在が、よりにもよって、毛嫌いしている異性になってしまったものだから、鳴は自分のクジ運がいいのか、悪いのか、判断に迷っているようだ。

 そんな複雑そうに下唇を噛んでいる鳴を他所に、紅壱は夏煌に「頑張ろうな」と声をかけていた。


 「・・・・・・」


 紅壱と一緒に作業が出来ず、ショックを受けていた夏煌であるも、彼にエールを送られた事でやる気も出たらしい。

 ふんすっ、と鼻息を荒くし、先輩二人を急かし出す。


 「おっ、やる気だな、ナツキ」


 「わぁ、お尻押さないで、なっちゃん」


 どうやら、黒の班の作業は小屋の外で行うようだ。


 「何でもします。コイツより、いい仕事するので、任せて下さい!!」


 「魔晶を作るのは分かりましたけど、まず、何をすれば?」


 鳴からの敵愾心を易々と受け流す紅壱。もう、彼は鳴の挑発にイライラするのも、バカらしくなっていた。彼が食って掛かってこないので、どうやら、鳴は「勝った」と判断したようで、「ふっ」と嘲りの笑みを自信満々に浮かべた。

 それにも表情は変えず、紅壱はおもむろに、下位魔属の死体の山に目をやった。

 これを素材にするのは察しが付くが、どのように作るのかは、想像できない。


 (そもそも、魔力がろくに使えない俺が作って良いのか?)


 さすがに不安になってしまった紅壱へ、瑛が差し出してきたのは、ありふれた形状の歯ブラシと市販の物ではなさそうな洗浄剤、数枚の無地のハンカチだった。


 「これは?」

 

 戸惑っているのは、紅壱と同じモノを瑛から手渡された鳴も同じようだ。瑛から貰える物は何であっても嬉しいが、物が物で、しかも、紅壱も同じとなれば、素直に喜びづらいようだ。


 「我々は、素材の剥ぎ取りと洗浄を行う」


 にこやかに笑う瑛は、手にペンチを握っていた。彼女ほどの烈しい気を纏う美少女だと、ペンチを持っていても、かなり絵になる。

 うっとりとしている鳴に、少しヒキつつ、紅壱はペンチをどう使うのか、それに気付く。


 「この死体をそのまま、魔晶作りに使うんじゃないんですね」


 そうだ、と頷いた瑛は近場にあったゴブリンの頭部を持ち上げた。当然だが、彼女はゴム手袋をしている。鳴がますます、恍惚の表情となったので、自然と紅壱は彼女から数歩ばかり遠ざかってしまう。


 「この魔属らの体は、エネルギーが実体を得た物だ。

 しかし、その肉体を純度の高い魔晶を作るためのエネルギーに戻せるか、と言うと、そうではない。

 現時点で、魔属の肉体をエネルギーに再変換する技術、道具、術式は誰も作りだせていない。

 だが、『組織』は現に、魔晶を作りだせるようになっている」


 「つまり?」


 「肉体すべてはエネルギーに出来ないが、その魔属の特徴、シンボルと言っても良い肉体の一部は、エネルギーに変えられるようになったのだ、長い研究と多くの実験の末にな」


 ほんの一瞬だけだが、瑛の顔に翳りが浮かんだのを、紅壱は見逃さなかった。

 瑛は、人の世界へ遠慮なく踏み込んで来ただけでなく、民に害なす怪異を討つ、己の生き様に真っ直ぐな誇りを抱いている。

 だからこそ、人に危害を加えていなかったにも関わらず、乱暴な手段で捕まえられ、魔晶精製の実験に酷使された怪異に同情し、なおかつ、非人道的な『組織』に憤怒いかっているのだろう。

 瑛の感情に気付いたからこそ、紅壱はあえて、そこに触れなかった。瑛の雰囲気が、それを拒んでいたからだ。きっと、今の自分に『組織』の腐りきった部分を切除できるだけのチカラが何も無い事を、瑛は悔しがっている。そんな彼女の疼く心に、土足で踏み込んで無礼に荒らすほど、紅壱も外道ではない。


 「シンボルっすか」


 「そうだ、このゴブリンで言うなら、ここだな」


 瑛が指さしたのは、ゴブリンの小さな角であった。


 「これから、魔晶が」


 すると、鳴がまたしても、「あんた、何も知らないのね」と罵倒をぶつけてきた。


 「オーガならまだしも、ゴブリンの角一つじゃ、Fランクのクズ魔晶だって作れないわよ」


 「そうなんですか?」


 「まあ、豹堂の言い方はアレだが、間違ってはいない。


 さすがに、ゴブリンの角一つから抽出したエネルギーでは、魔晶にならないな」


 「なるほど・・・・・・豹堂、お前、博識だな」


 唐突に、紅壱から褒められ、鳴はギョッとし、リアクションに窮する。紅壱も自分の事は嫌っているだろう、と思い込んでいたからこそ、彼が自分を褒めてくるなんて、思ってもいなかったのだろう。

 素直に喜べもしないが、驚く事すら出来ず、目を丸くしている鳴への興味も、すぐに失い、紅壱は死体の山に近づく。


 「Cランクの魔晶を作るのに、この量・・・・・・結構、手間がかかるんですね」


 「あぁ、今の技術には無駄が多すぎる。

 さすがに、『組織』の研究班も、その辺りは承知していて、より少ない素材から、多くのエネルギーを抽出できないか、実験しているようだが、そう簡単には結果が出ないようだ」


 苦々しい溜息を漏らす事で、ひとまず、『組織』への不満は飲み込んだ瑛は説明を続ける。


 「シンボルだけあって、ゴブリンの角は簡単に抜けるものじゃない。だが、折れやすいから気を付けるように」


 手本を見せよう、と瑛はゴブリンの角をペンチで挟むと、躊躇いなく、引き抜いた。彼女が掌に乗せて見せてくれた角には、肉片こそこびりついていたが、亀裂の一本も入っていなかった。


 「右に捻って、真っ直ぐじゃなくて、上に軽く折るような感じで抜けばいいんですね」


 「よく見てたな」


 言葉で説明しようとしていたのに、紅壱が長年の経験と失敗で、自らが発見した、最もゴブリンの角を損傷わさない抜き方を的確に説明したので、瑛は目を瞬かせた。

 当然である、惚れた女の手の動きを、紅壱が漫然と観察している訳がない。

 紅壱が褒められ、鳴は悔しそうに歯軋りしていた。

最上級生である恵夢に、魔晶作りの準備をさせてしまった責任は、自分にある、と言い合う紅壱と瑛

そんな仲の好い二人の言い争いを止めたのは、恵夢の巨乳であった

彼女のデカッパイの恐ろしさを肌身に感じた二人は、もう、諍いは起こさない、と約束する

ひと段落した一同は、外で作業するグループと、内で作業するグループに分かれるべく、クジを引く

その結果、紅壱と同じグループとなったのは、瑛と鳴であった

果たして、この三人で、作業を穏便に進める事は出来るのだろうか?

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