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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
生徒会の仕事は地味な方が重要
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第八十話 快復(recover) 瑛、魔晶の効果について語る

森の中に建てられている小屋の中に、山と積まれていたのは、学園を襲撃するも、瑛らに返り討ちにされ、エネルギーに還されていなかった魔属の屍

それは、魔晶と言うアイテムを作成するための材料であり、瑛に自分が勉強をしっかりとしている事をアピールすべく、鳴は意気揚々と語りだす

しかし、紅壱を貶めるつもりが、瑛をディスってしまった事にショックを覚え、ほぼ失神状態に陥ってしまった鳴

瑛関連では、途端にメンタルが絹豆腐よりも簡単に崩れる後輩の面倒を、愛梨に任せ(押しつけ?)、瑛は魔晶についての説明を始めるのであった

 「・・・・・・」


 「自業自得ってのは否定しねぇけどよ、さすがに同情するな」


 「―――――――・・・エリ、豹堂のケアを頼む」

 

 「おう」


 自信ありげに胸を叩いた親友に傷心の後輩の面倒を頼み、溜息を一つ二つと漏らしてから、魔晶への説明に戻ろうとする。

 しかし、それより、先に紅壱が頭を勢いよく下げた。あまりにも凄まじい圧が籠っていたので、ありえないと理解っていても、瑛は頭突きされる、そう感じ、「ひっ」と叫んで下がってしまう所であった。けれど、恐怖おそれたら、紅壱の心を傷つけてしまう、と爪先から地面の感触が無くなる寸前に気付き、ギュッと下唇を噛んで耐えた。


 「あの、その、すんませんでした」


 さすがに、胸ガン見しちまって、とは続けられなかったが、瑛には紅壱が自分に謝った理由が察せた。


 「気に病む必要はない、辰姫。

 触られたのなら許さんところだが、見られただけでは不快ではない」


 (いや、彼になら、いくらでも、胸は見られるだけじゃなく、触られても、揉まれても、吸われても、構わないのだが)


 「私が、ここへ魔晶を入れたのだから、目線がそこに行くのは自然だ」


 軽やかに笑い、瑛はポンポンと胸を叩く。大らかに許してくれる彼女に、紅壱は申し訳なさを覚えてしまう。


 「今後は、見ないように気を付けます」


 「いや、そこまで気を張らなくても良い。

 君だって、思春期の男子高校生だ。女性の胸に目が行ってしまうのは、至極全うだぞ。

 まぁ、なるべく控えてくれれば、それでいい・・・って、誰が控えめな胸だ!!」


 よもや、瑛が自身の言葉にキレるとは思ってもいなかった紅壱は、フォローの言葉すら紡げず、表情を引き締められない。


 「プッ・・・・・・ハハハハ、ジョークだ。ノリツッコミというヤツだ。

 今更、自分の胸と鯱淵先輩の胸を比較して、落ちこんだりなんかしないさ」


 台詞の後半部分だけ、瑛の笑顔が引き攣っていたので、「あるんだな」と見抜いてしまう紅壱。夏煌も同じように気付いたらしく、二人は困惑する。


 「・・・・・・よし、この話題はここまでだ。

 これ以上、続けたら、いくら、私でもメンタルがブレイクしてしまいそうだ」


 胸のコンプレックスを刺激しすぎて、ブルーな状態になった瑛を見たくないと言ったら嘘になるが、男子小学生のように好きな女の子ほど虐めたくなるような青々しさは、とっくの昔に放棄している紅壱は瑛の懇願めいた言葉に、「うっす」と首を縦に振った。


 (・・・・・・会長なら、俺が目ぇ見ても、ビビらないだろうから、今後は胸元じゃなくて、目をちゃんと見るようにして会話はなそう)

 

 その決断に基づいた行動がまた、瑛の恋心をドキドキさせ、夏煌の嫉妬心をモヤモヤさせる事になるのだが、それは別の話なので割愛しよう。


 「さて、脱線したおかげで、どこまで話したか、忘れてしまったな」


 「ヒメくんが、魔晶は爆発するって誤解しちゃったトコまでだよ」


 「そうでした」と、瑛は愛らしい動作で掌を打ち鳴らし、「では、続けようか」と教師めいた雰囲気を纏う。

 小屋の外に出た愛梨が、自分への悪態を垂らす鳴を慰め、元気を取り戻すよう鼓舞している声も聞こえてきたが、紅壱も構わず、瑛の凛々しい声による説明を傾聴する。


 「この魔晶は爆発しない」


 「・・・・・・」


 「そうだ、爆発する魔晶もある。


 先ほど、私が辰姫を止めたのは、彼が今、元気な状態だからだ」


 「?」


 「魔力が空っぽではない、と言う意味だ」


 「なるほど、そういう使い方するから『備え』なんですね」


 これから、意気揚々と説明しようとしたのに、紅壱が察してしまったものだから、瑛は形容しがたい顔となってしまい、恵夢が焦って、「アキちゃん、ブチャイクになってるよ」と注意する。

 コホン、と咳払いして気持ちを立て直し、瑛は鳴を筆頭に多くの女生徒が魅了される、女帝フェイスも再構築してみせた。


 「おっと、謝るな。私が惨めになってしまうぞ」


 紅壱が詫びようとしたのが空気の動きで先読みできたのか、瑛は素早く、手を突き出した。


 「辰姫、君の言う通りだ、この魔晶は魔力の回復に用いるためのアイテムだ」


 「・・・・・・」


 「あぁ、だから、魔力を消費していない状態で使用すると、自身の体内でコントロールできる魔力量となってしまい、体調に悪影響が出てしまう」

 

 (そりゃ、まずかったな)


 何せ、まだ計測していないとは言え、自分の魔力量は桁違い。そんなものが制御できなくなってしまったら。かつて、失敗している紅壱は、最悪の事態が容易に思い浮かべられてしまう。


 (ダメだ、あんな事だけは)


 己の身を焼くようで、逆に凍えさせるようで、一転して切り刻んだ後に磨り潰してくるような後悔が、心の奥底に沈めている小さな壺から出てこようとするのを感じた紅壱。

 封印を手っ取り早く済ませる為に、激しく頭を振りたいが、瑛たちに怪しまれる訳にもいかないので、紅壱はグッと首に力を入れる。


 「ん、大丈夫か? やはり、まだ、体に違和感があるようなら」


 瑛の表情が翳ったのに気付き、紅壱は「問題ないです」と言い切る。あまりの必死さに、瑛は戸惑い、なおさら、帰した方が良いだろうか、と思い詰めたが、夏煌に頷かれ、しばらく悩んだ後、「無理はするなよ」と念押しした上で、トントンと胸の魔晶を指で叩く。


 「最初に言っておくと、年齢や経験に関わらず、術師は魔力を使いきれば、死ぬ」


 やはり、紅壱らよりも長く、最前線で戦っている瑛の言葉には、現実味があった。実際、彼女は何度も見てきたのだろう、魔力を使いきってしまった術師の末路を・・・


 「術の中には、自らの寿命を魔力に変換するものもあるが、それもストックが無くなれば、絶命となる事に変わりない。

 だから、君らは何よりも、自分の魔力を使いきらない事だけを意識してほしい。

 自らの魔力量を正確に知り、どの術をどれほど使えば、残量が半分になるか、まず、それを把握できるよう、訓練計画を測定の後に組むので、待っていてほしい」


 お願いします、と二人は瑛に頭を下げた。


 「辰姫は、カガリと対峙するので精一杯だったから気付かなかったかもしれないが、大神はゴブリンやコボルドのメイジが、戦闘中に魔力を回復していたことに気付いたんじゃないか?」


 「・・・・・・」


 「そう、怪異は人間の私達とは異なり、空中に漂っている、もしくは、仲間の死骸から放出されている、不可視のエネルギーを皮膚呼吸のような感覚で、体内へと取り込み、魔力を回復できる事が、『組織』の実験により、確認されている」


 その言葉を聞き、紅壱は眉を顰めた。瑛と夏煌は、彼の反応が「反則的だな」と感じたからこそ、自然に出たリアクションだろう、と受け取ったのだが、実際は違う。


 (なるほど、あの時、食べていた木の実は魔力を直に回復させる物じゃなかったのか)


 恐らくは、吸収した魔力、いや、呪素と言うべきエネルギーで発動させる術の反動に耐える為に、体力を回復させたのだろう。もしくは、人間界の呪素の濃度が、異世界よりも薄いため、短時間では十分な量を取り込めず、魔力回復の効果がある、希少な食材に頼った可能性もあるだろう。

 いずれにしろ、孤募一らに確認する必要があるようだ。

 人間と違い、魔力を戦いの最中でも自動回復できるのは、大きなアドバンテージとなる。しかし、人間界で、その有利さが、まるで役に立たないとなれば、『組織』と真正面からぶつかる時の事を考えると、目を瞑れない不安要素になる。

 木の実に魔力回復効果があるのなら、大量生産ないしは回復効果を強めた品種に改良する必要性があるだろう。


 「このサイズと純度で、おおよそ、四割ほどの魔力を回復できる」


 「・・・四割っすか」

 

 それは、少ないのだろうか、多いのだろうか、判断がつかなかった紅壱は、表情に戸惑いがありありと出てしまう。


 「辰姫、君は案外、分かりやすいな」


 彼の照れ笑いに胸がときめくのを感じつつ、瑛は「四割も魔力を回復させられる魔晶は、かなり貴重なんだ」と自信ありげに笑った。

 あまりの可愛さに、瑛を抱きしめたい衝動に駆られるも、夏煌が傍にいたおかげで、どうにか自制心が働いた紅壱。


 「Bランクで四割となると、Cだと二、三割ですか」


 「そうだな、質の良いCなら、三割だ。

 ただ、魔力が枯渇しそうなピンチでも、二割、回復すれば、生存確率が上がるのも確かだぞ、辰姫」


 「それは、確かに」


 歩く事も儘ならない状態と、どうにか走る事が出来る状態では、雲泥とまではいかないにしろ、大きな差があるのは確かだ。

 二割ばかり、魔力が回復したところで、何が出来る、と思うような輩に、その魔晶は猫に小判、豚に真珠だ。二割、それだけ回復すれば、逆転できる、と自分を信じられる者しか与えられないのだろう、『組織』から、この魔晶は。


 「しかし、魔晶があるからと言って、無茶をしていい訳ではない」


 「・・・・・・」


 「そうだ、魔力が枯渇してしまえば、術師は一般人よりも、簡単に命を落としてしまう」


 「戦っている最中に、魔晶以外で魔力は回復させられないんですか?」


 ない、と答えた後、瑛は少し考えてから、「例外はある」と続けた。


 「まず、魔力は、精神力に直結する。噛み砕いた言い方をすると、心の力だ。

 心の力を使い過ぎると、体力も低下し、術師は動けないほどの疲労感に襲われてしまう」


 「つまり、心の力を自然回復させるには、体を休める、眠るのが一番って事ですか、会長」


 「その通りだ。個人差はあるが、半分ほどの消費であれば、一夜寝れば、元に戻る。

 とは言え、実戦中に眠る訳にはいかないからな、回復させるには魔晶を使うしかない。

 個人的には、魔晶を使わねばならない状況に陥る前に勝つか、戦線離脱すべきだと思うがな」


 「俺も、そう思いますね」

 

 紅壱に同意してもらえ、瑛は嬉しそうに鼻の穴を少し広げた。そんな彼女の反応に、夏煌は焦りつつも、表情を変えないまま、質問をぶつける。


 「・・・・・・」


 「それは、俺も気になったんだよな」


 今度は、瑛が焦る番ではあったが、彼女も動揺は面に出さず、「良い質問だ、大神」と余裕があるフリをした。

 自分を挟んで、美少女が一進一退の攻防を繰り広げているとは思ってもいない紅壱は、先ほど、瑛が言った「例外」について、考えを巡らせていた。

見た目通り、硬派である紅壱は、ほぼ事故だったとは言え、瑛の胸をジッと見てしまった事を真摯に詫びる

そんな彼の義理堅さ、新たな魅力に惚れ直した瑛は余裕のある態度で、彼のセクハラを許す

瑛が紅壱に持たせた魔晶、それは魔力を大きく消費した際に快復するためのアイテムであった

瑛と夏煌が、自分を巡って、恋の火花を散らしているとは露も知らず、紅壱は魔力を快復させる方法について、思考を巡らせるのだった

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