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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
生徒会の仕事は地味な方が重要
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第七十九話 魔晶(mana-crystal) 瑛、紅壱へ魔晶を持たせてみる

道中では、瑛が夏煌も紅壱が好きであると知り、彼女は夏煌をライバルとして、正々堂々と、紅壱と交際してみせる、と覚悟を強めるのだった

また、今、自分がとある男子に惚れている事が恵夢にバレそうになった愛梨は、強引に、紅壱の強さの謎に話題を変え、彼が自分達に対し、まだ壁を作っている事を憂う

そんな色々な変化が起こった末に、紅壱らが到着した小屋には、カーミラの命令によって、学園を襲撃するも、瑛らに返り討ちにされ、退帰させられていなかった下位魔属の屍が保管されていた

 「・・・・・・面目ない」


 まさか、倒している上に、肉体はパートナーらが美味しくいただき、自らは核を喰ってしまったとは、口が裂けようが、脇腹をくすぐられようが言えないので、紅壱はしおらしい態度で、小さく頭を下げる。

 まさか、紅壱が手を出してこないとは思ってもいなかった鳴。一発殴られるのも覚悟でした挑発が空振りに終わった気まずさの後に襲ってきたのは、後悔。もちろん、紅壱に対して、申し訳ない、と反省するはずがない。

 彼女の後悔、それは「会長に怒られる事をしてしまった」と言う自覚によるものだった。

 鳴は瑛に嫌われてしまう、そんな恐怖で一秒とかからずに青白さも通り越し、土気色までなり、瑛の怒声に備えて、ギュッと目を強く閉じた。その瞬間に備え、震える中でも、心の片隅では、「会長からの罵倒なら、これ以上ないご褒美」と悦んでいるのだから、筋金入りである。

 しかし、期待に反し、瑛は鳴に雷を落とさなかった。

 見限った、と言ったら語弊はあるが、鳴なら、こう言うだろう、と予想を立てていたので、それが怒りを受け止めるクッションになってくれた。心の中から噴き上がった怒りが口から飛び出る寸前に弾き返されてしまい、却って冷静さを保てたらしい。


 「確かに、あのカガリの指であれば、ランクBの魔晶の錬成にも成功していただろう。

 私が取り逃がしたカーミラの一部でも、同じことが言える」


 「!!」


 知らず知らずのうちに瑛の失態をディスっていた事に気付き、紫色になった鳴の顔の輪郭は、とある博打漫画の登場人物のようにぐにゃりと崩れている。

 瑛は意図して、鳴の揚げ足を取った訳でもなかったので、彼女の変形にはまるで気付かず、凛々しい表情で皆の顔を見据えた。

 「しかし、私達が怪異と日夜、戦うのは高ランクの魔晶を作り、『組織』でのランキングを上げる為ではない。

 私達の目的は、あくまで、怪異の恐ろしさを知る必要もない、戦う力なき一般人を害させない事だ。

 魔晶の錬成は、最優先すべきではない副産物だ、と念頭に置き、皆、自分のキャパを超えた無茶だけはしないように」


 鳴を除いた一同からの揃った、自分への強い信頼と尊敬が籠った返事に、瑛ははにかむ。自分でも、少しカッコつけてしまったか、と思っていたようだ。

 恥ずかしそうに頬を赤くした瑛が咳払いをしたタイミングで、「いいっすか」と紅壱が手をそっと挙げた。微笑みこそ浮かべていたが、そこに恥ずかしそうな色は差さっていなかった。

 紅壱の多い長所の一つに、「分からない事があったら、素直に質問できる」があった。

 彼は、血脈とアバドンのおかげで、数値こそ計測していないが、魔力の総量が桁外れに多い事を自覚している。同時に、その方面の知識が圧倒的に不足し、勉強の必要がある事も認めていた。

 鳴にバカにされたとしても、痛痒にも感じないが、無知のままでいて、いざという時に、瑛の足を引っ張ってしまったら、そう思うと血の気が引く。

 瑛らが、自分のする質問が、常識であったとしても、バカにせず、丁寧に教えてくれる、その安心感もあって、紅壱に躊躇いはない。


 「魔晶ってのは、何ですか?」


 質問しながらも、紅壱は「俺が食べた、カガリの核のようなものだろうか」と、ある程度の予想はしていた。


 「アンタ、そんな事も知らないの!?」


 そんな罵倒が鳴から放たれるかな、と予想していたのだが、彼女はまだ、呆然自失の状態で、紅壱の読みは外れる。


 「分かりやすく言うと、いざと言う時の備えだな」


 「備え?」


 うむ、と鷹揚に頷いた瑛は、おもむろに胸ポケットからライター大の何かを取り出し、紅壱に見せる。それは、やや白く濁っている水晶のようだった。


 「これが魔晶ですか?」


 「そうだ。持ってみるか」


 渡された紅壱は、少し驚いた。その反応に、瑛は口の端を吊り上げた。どうやら、自分は彼女が望んでいたリアクションが出来たようだ、と紅壱は心中で笑む。

 他の奴につまらないドッキリを仕掛けられたら、殴るまでは行かないにしても、舌打ちくらいでてしまったが、惚れた女に可愛い悪戯を仕掛けられ、柳眉を逆立てているようじゃ、良い男とは言えない。紅壱は、好きな女からのからかいを優しく受け止める度量くらい、持ち合わせているのだ。


 「重いだろう」


 「大きさがライターくらいなんで、重さもそれくらいかと思ってましたけど・・・・・・330gありますね」


 「さすが、飲食店でアルバイトに励んでいるだけある。ほぼピッタリだ」


 感心しつつ、瑛は「握り砕けそうか?」と尋ねた。


 (硬さは・・・・・・十円玉と同じくらいか)


 「これくらいなら」


 質問の意図は分からなかったが、瑛の期待に応えたかった紅壱は魔晶を握っている左手に力を入れようとする。

 途端、慌てて、瑛が止める。もし、一瞬でも制止が魔に合っていなかったら、そのBランクの魔晶は木端微塵にされていただろう。


 「いや、すまない。本当に砕かれると困るんだ」


 「す、すんません」


 「気にしなくていい。私も軽はずみに言い過ぎた」


 お互いにホッとし合ったからか、つい、笑ってしまう二人。そんな瑛と紅壱を目の当りにし、夏煌の頬はプクッと膨らむ。


 「妬くな、妬くな」と、愛梨に頬を指で押され、「ブッ」と音が出てしまう。思わず、振り返ってしまった紅壱と目が合い、彼にとある生理現象を自分がした、と誤解された、そう思った夏煌は羞恥と怒りで真っ赤になり、愛梨の尻を全力で叩いた。


 仲良さげな先輩と後輩をしばらく見ていた紅壱だったが、喧嘩と呼べるものではなかったので、「スルー」の判断を下し、顔を瑛へ戻した。


 「これ、貴重な物なんですね」


 慎重な手つきで、紅壱から返された魔晶を胸ポケットへと戻した瑛。


 「まぁ、ランクBの魔晶だから、『組織』の尺度で考えると、レアだな。

 だが、希少と言うだけで、君に対し、あんなキツい言い方はしないさ」


 「・・・・・・」


 「そうだ、辰姫に害が及ぶ可能性があった」


 夏煌からの指摘に、瑛が大きい頷きをしたので、紅壱は驚く。


 「それ、爆発するんですか?」


 もちろん、紅壱に下心はなかった。けれども、魔晶に目を注ぐと言う事は、自然と瑛の胸に目が釘付けになっている、そう誤解されても文句は言えない状態になる。


 「セクハラ禁止ッッ!!」


 瑛が恥ずかしそうに胸を手で覆い、紅壱に背中を背けた際に生じた魔力の乱れをキャッチした事で我に返るや、鳴は一切の手加減の無い上段回し飛び蹴りを繰り出してきた。

 鳴が攻撃の気配を隠せていなかったおかげで、瑛のリアクションに動揺しながらも、周囲への警戒は怠っていなかった紅壱は咄嗟に身を屈ませ、金属バットですらヘシ折っていたであろう一撃を危なげなく躱す事が叶った。

 しかし、敵もさるもの引っ掻くもの、紅壱が自分の蹴りを避けたと判断するや、鳴は胴回し蹴りに切り替えてきた。紅壱でなければ、鉛板が仕込まれていた靴の踵を頭頂部にメリこまされ、頭蓋骨陥没骨折と脳挫傷の特大ダメージは免れなかった。


 「さすが、コーイチ」


 愛梨の讃えに、鳴の蹴りを頭上でクロスさせた腕で受けた紅壱は「あざっす」と、ある程度の余裕を持って返す事も出来ない。

 確かに、鳴の動きは女子高校生離れしていたが、祖父は元より、修一にも劣る。紅壱にとっては、容易くガードできる攻撃だった。

 問題なのは、鳴が今、スパッツの類を履いていなかった事、つまり、体勢的に紅壱の目の前には、鳴のゼブラ柄の下着があったのだ。

 下着を見られている、それに気付いた鳴は一瞬にして真っ赤になった。


 「ぅ!?」


 腕で受けたままの足が急に重さを増し、紅壱は呻いてしまう。

 このままだと、腕が折られ、そのまま、踵を頭に当てられる、そう判断すると、紅壱は他のメンバーに気付かれないように一瞬だけ闘気で腕力を高め、勢いをつけて、強引に鳴の足をカチ上げた。

 理不尽な怒りで、鳴の身体能力は魔術を使用せずとも高まっていたのだろう、足を跳ね上げられた鳴は空中で回転し、体勢を整え直し、確と足から着地する。そうして、次の攻撃に移る。


 「はい、そこまで」


 もし、恵夢が横からやんわりと手首を掴んで止めていなければ、怪我をしていたのは鳴の方だっただろう。

 この時、鳴は紅壱に目潰しを仕掛けていた。だが、紅壱はそれを読んでいた。恵夢が止めていなかったら、目ではなく額に激突していた鳴の人差し指、中指、薬指は折れ、そこから骨が飛び出していたに違いない。


 「豹堂、落ち着け」


 「はい・・・でも、会長、コイツ、私のパ、パ、パンツ、見たんですよ。

 許せません。生徒会から追い出してください」


 「君の怒りや恥ずかしさ、悲しみには同調できるが、生徒会からの追放は、さすがにペナルティとしては重すぎる。

 そもそも、女子がスカートを状態で蹴りなど繰り出すべきじゃない。はしたないぞ」


 瑛は、やんわりと注意したつもりだったのだが、まさか、憧れの人から、「はしたない」と言われるなんて、予定にもなかったようだ。ズギャアアアアン、そんな効果音が背後に稲妻と一緒に見えそうなほどのショックを受けた鳴は涙ぐみ、そのまま、膝から崩れ落ちていった

紅壱に暴力を揮わせ、生徒会から追い出そうと、あからさまな挑発をした鳴

だが、彼女の目論見は、いつも通り、失敗に終わる。しかも、結果的に、憧れの瑛までディスってしまう

愕然とする鳴を放置し、瑛は紅壱に、怪異と戦う際に持っておくべき魔晶について説明を始める

果たして、魔晶とは、どのような物で、どのように作るのだろうか?

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