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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
瑛vs夏煌、ラブバトルのスタート
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第六十六話 御願(ask) 瑛、紅壱からのお願いに首を縦に振る、渋々と

紅壱は危うく死にかけた、と言うのに、『組織』が正当な報酬を支払っていない、と瑛は怒髪天と化す

夏煌らまで、彼女の怒りに同調してしまい、慌てた紅壱だったが、どうにか、瑛を宥める事に成功する

安堵したのも束の間、瑛の下着を見てしまい、蹴られると言う、青春のお約束なハプニングが起きる

詫びをしたがる瑛への好意を募らせつつ、紅壱はあえて、ここは彼女の弱みにつけ込む事にする

一体、彼は瑛にどんなお願いをするのだろう?

 「今回の報酬に関して、水に流してくれませんか、会長。

 『組織』に、俺の報酬を増やせ、と圧力をかけないでください。お願いします」


 「何!?」


 よもや、紅壱が、そんな事を言ってくるとは思ってもいなかったのだろう、瑛はギョッとしてしまう。一体、どんなお願いをされたい、と思っていたのだろうか。

 この学園の生徒会を率いている者として、何より、今回の作戦の指揮官として、「はい」とは言い辛い。だが、「何でもやる」と口に出してしまった以上は、反故には出来ない。

 瑛の生真面目な性格に付け込む事に関して、紅壱も心は痛んだが、このチャンスを手から滑り落とす訳にはいかなかった。

 あれほどまでに荒れたのは驚いたにしろ、『組織』が、自分の働きを正当評価しなかった事に、瑛が怒ってくれるのは、本当に嬉しいし、彼女への尊敬度も高まった。


 (でも、今は、『組織』の中で目立つ訳にはいかないからな)


 そんな下心は隠し、紅壱は上目遣いで瑛に頼み込む。


 「ダメですか?」


 この生徒会の女子に限らず、高等部に通う大半の女生徒がやれば、可愛らしい頼み方だろうが、上目遣いのテクニックを、いくら、イケメンとは言え、基本的に人相が悪い紅壱が使うと、カツアゲをしているようにしか見えない。

 しかし、瑛にとっては、効果がバッチリと出たようだ。


 「今回、最も活躍した君に頼まれたら、嫌とは言えんな。

 しかし、君の働きは、もっと、正しく評価されるべきだ、と私は思うぞ。

 さすがに、1千万円と吹っ掛けるのは無理にしろ、最低でも、200万円は貰ってもいいくらいの活躍はしたじゃないか」


 頬を赤らめ、快諾の意志を示しつつも、やはり、まだ、瑛は溜飲が下がっていないのか、憮然とした表情と口調で、紅壱に考え直すように促す。

 自分の事を真剣に想ってくれる瑛の優しさに胸を打たれる紅壱だが、ハッキリと首は横に振る。

 

 「いや、俺は金が欲しくて、この学園を守った訳じゃないんで」


 自分の口から出した答えに、ふと、紅壱は疑問を抱く。


 (そう言えば、何で、俺は戦ったんだろうな)


 金の為ではない、それは確かだ。そもそも、魔属と闘ったら、『組織』が報酬を出してくれるとは知らなかったのだから。

 他の生徒とも、まだ、そこまで深い付き合いはしていないから、彼女らを守りたかった、とは言えない。

 中庭の祠に封印されている、魔王の一部を襲撃グループに渡したくなかった、それはあるかもしれないな、と紅壱は思う。ただ、これもピンとは来ない。そもそも、渡したくないのは、アバドンを一日でも早く復活させる手掛かりになる、そう感じたからだ。


 (会長の立場を悪くしたくなかった、ってのはあるにしろ、断じて、『組織』の為じゃないよな)


 瑛たちを危険に晒したくなかった、これは大部分は占めるにしろ、全てではない。


 (もともと、会長らは自分の命を懸けて、怪異と戦う覚悟と、世界を守る決意で戦ってるんだから、ヤバい目に遭わせたくないって、俺が考えるのは失礼だよな)


 そうなると、あそこまでの大怪我を負っても戦った理由は、一つだろう。


 (そもそも、守ったって認識が、俺にないんだよな)


 学園、生徒、魔王の一部、瑛たちを守りたかったから、無茶をしたんじゃない。

 あの時、紅壱の意識からは、そんなものは消えていた。

 強い奴が目の前にいる、そんな状況で、男が思うのは一つだ、全力以上を出してでも勝ちたい、コイツに、だ。

 つまり、紅壱は、戦いたいから戦った。学園を守った結果は、勝手に生じたに過ぎない。

 ただ、さすがに、本心は口に出せないので、紅壱は言い加える。


 「会長は健闘した、と言ってくれましたけど、カガリって霊属は取り逃がしちまった。

 だったら、『組織』の支給した報酬の額は間違っちゃいないですよ」


 「いや、コーイチ、お前は知らないだろうけど、カガリってのは、『組織』のハンターを何十人も殺ってて、相当な高額賞金首だぞ」


 「そうだよ。正直、アキちゃんも勝てる相手じゃないの。

 なのに、コウ君は新人なのに、カガリと戦って、死ななかった。

 これだけでも、大金星じゃないかしら」


 ねぇ、と恵夢から同意を求められた夏煌は力強く頷いた。

 鳴に目をやれば、すぐさま、彼女はそっぽを向く。

 取り逃がした事に対して悪態を吐いてこない所を見ると、彼女なりに紅壱の出した功績は認めているのだろう。しかし、手柄を奪られたのはともかく、瑛に褒められている事に関しては、悔しさを抑えきれないようで、目を向けてこない分、嫉妬交じりの殺気がビシビシと伝わってくる。

 彼女ほどの殺気では、鳥肌も立たないが、さすがに、蚊が顔の近くを飛んでいる時のような鬱陶しさは覚える紅壱。

 鳴のやっかみは無視する事にし、瑛へ紅壱は顔を戻す。


 「例え、そのカガリって奴に、とんでもない賞金がかけられていても、俺は倒せなかった。

 つまり、それだけの金を貰う条件は満たしてません。

 もし、会長らが『組織』に訴えてくれて、増額が認められたとしても、俺はそれを受け取れませんよ。と言うか、受け取りません、断固として」


 先輩の優しさに、「NO」と言う、これは好感度が一気に下がってしまっても、何らおかしくない。実際、こっちを見ている鳴は、先ほど以上の濃い殺気を放ってきている。

 しかし、さすがと言うべきだろう、瑛は違った。

 しばらくの間、ジッと紅壱の真顔を見つめていたが、唐突に「ふっ」と口元を緩めるや、彼の腕をポンポンと優しく叩いてきた。


 「金に転ばない、うん、さすが、私の見込んだ男だ。

 君を生徒会に誘い、入れたのは正解だったな。

 辰姫、君を入会させた事は、私の会長としての仕事の中で、最も意義があり、誇れる仕事だぞ」


 「いや、さすがに、それは大袈裟でしょう。

 優秀って意味合いじゃ、むしろ、俺より豹堂を入れた方が、いい仕事な気がしますけど」


 何となくのヨイショだったのだが、鳴のニヤケ具合を見る限り、思った以上に効いたらしい。

 チョロい奴だな、と鳴に呆れる紅壱に、瑛は顔つきを真剣なものへ戻すと、頭を小さく下げた。


 「君の生徒会業務に対する信念を踏み躙りかけた、謝罪させてくれ」


 瑛に謝らせた、それは鳴にとって、許しがたい行為だったのだろう、ニヤニヤ笑いは一瞬で消え去り、般若の形相と化した。もし、愛梨が拳骨を脳天にくれていなかったら、呪文を唱え、攻撃魔術を憎き紅壱へぶっ放していたに違いない。

 頭を上げて下さい、と慌てかけた紅壱だが、ハッと思い止まる。

 先輩かつ会長として、瑛は自らの非を素直に認めて、首を垂れている。ならば、彼女が自分の罪悪感と折り合いを付けられるまで、じっと待つのが男として筋の通し方じゃないだろうか、と確信した紅壱はその言葉を紡ぎかけた唇を噛む。


 (まぁ、俺の感覚だけど、カガリの魔核は換金できない価値があっただろうからな。

 そんなものを喰っちまったんだから、さすがに、金は欲しがれねぇって)


 瑛が顔を上げたのは、きっちり一分後だった。もし、数秒遅かったら、彼女はカガリの核の美味さを思い出していた紅壱の口から垂れる、唾液に気付いていただろうか。


 「いいさ、君の頼み通り、今回は『組織』に報酬の事で文句を言うのは止めるとしよう。

 だが、君の顔を立てるのは、今回限りだ。

 次、同じことがあったら、私は君を振り払ってでも、『組織』に牙を食い込ませるぞ」


 瑛は紅壱を振り払えないだろうな、と鳴以外は思ったが、気持ちは瑛と同じなのだろう、彼女の決意に同意する。


 「もっとも、君に大怪我は、もう負わせんがな」


 より強い決意を拳に握る瑛。


 「そうだな」と、親友の拳に自らの拳をぶつけた愛梨は、ふと、何かを思い出したのか、おもむろに紅壱へ近づいてきた。


 「なぁ」


 「え」


 本当に、愛梨はこの時、自然な調子で紅壱の間合いに踏み込んでいた。

 闘志は感じさせず、殺気や怒気なども身に纏わず、呪文の詠唱で打撃力も高めていなかった。同年代では、誰も愛梨が強烈な一撃を繰り出してくる事は予想できなかったに違いない。

 魔術で強化していないのは直感できるとは言え、愛梨のパンチ力は元から高い。頑丈さが振り切っている修一ならまだしも、自分がノーガードでボディに受けたら、内臓が破裂する、と感じた紅壱。

 内臓が破裂する痛みも味わいたくないが、むしろ、急速に再生した時の方が痛いのは経験則で知っているので、そちらの方が拒否したい。また、再生により、外見が変化してしまうのも、この場では御免被る。

 瞬間的に、完全な回避は難しい、その判断を下すと同時に、カウンターを愛梨に繰り出そうとしていた自分もきっちりと諫める。なので、紅壱は愛梨のボディブローをあえて、脇腹で受ける。もちろん、怪しまれない程度の闘気をそこへ集中させて。

 ドズンッ、そんな音だった、紅壱の脇腹から上がったのは。

 もし、その音だけを一般人に聞かせたら、土嚢袋をハンマーを思い切り振りかぶって殴ったのか、と錯覚しただろう。

 それほどの音が上がるパンチだ、一般人であれば、間違いなく、即死していただろうし、闘気で防御していなかったら、やはり、内臓にダメージがあったに違いない。


 (咄嗟に、『蛙葉かえるば』を出しちまいそうになったぜ)

 

 頭では使わないように意識していたのだが、あまりの威力に、体が反応しかけた。常日頃から、体の隅々まで自分の意思で制御できるように訓練している紅壱でなかったら、愛梨に致命的なダメージを刻む事になっていただろう。


 「やっぱ、ちゃんと治ってるな・・・あいてっ」


 満足気に頷いた愛梨の頭頂部へ、チョップを叩き込んだのは夏煌である。しかし、愛梨は彼女に感謝すべきだろう。もし、夏煌よりも瑛の方が速く動いていたら、その背には拳大の火球が直撃していただろうから。

 その大きいとは言えない火球が当たっていたら、間違いなく、愛梨の体には穴が開き、その一秒後に、全身は炎に包まれていた。すぐさま、恵夢が大量の水をかけても、間に合わなかっただろう。


 「いってぇな、何すんだよ」


 こっちの台詞だ、と言わんばかりに、両目を吊り上げた夏煌は頬をいっぱいまで膨らませ、愛梨の胸へ頭突きを見舞う。サイズ的にはクラスメイトと同じくらいではあるが、トレーニングを欠かさない事に加え、肉体強化系の魔術が得意な愛梨の乳の柔らかさは、ゴムタイヤに近い。

 思い切りぶつけた夏煌の頭は簡単に弾かれてしまい、逆に脳震盪を起こしかけたのだろう、後退する彼女の足の動きが怪しい。

 そんな後輩を支えつつ、落ち着きを取り戻した瑛は愛梨に問う。


 「いきなり、辰姫を殴るとは、何を考えている?」


 またしても、純粋な怒りを内包するが故に、彼女の声は冷ややかとなる。

 友人からの威圧感に対し、「そんな怒るなよ」と、愛梨は平静な態度を崩さない。


 「あたしは、コーイチの事が心配だっただけだよ」


 「どういう意味だ?」


 「コイツは、あんだけの怪我を負ったのに、もう動けている。

 恋さんの治療があったにしろ、本調子に戻っているかは分からない。

 だから、確かめたんだよ」


 「で、チェックの結果は?」


 闘気で防御したので、さほど痛くはないのだが、怪しまれないように紅壱はしかめっ面で打たれた箇所を擦りながら、愛梨に訊ねる。


 「合格だ。今日から、業務に戻っても問題ないだろ」


 しかし、愛梨の笑顔が途端に曇る。

 さすがの瑛も、急に親友が辛気臭い溜息を吐いたものだから、感じていた怒りはどこへやら、「どうした?」と心配してしまう。


 「拳を痛めたか?」

 

 「あ、いや、大丈夫だ。

 この前、先輩から貰った指輪で強化してたから、痛めた訳じゃない」


 そう言って、愛梨が見せたのは、小指に通している指輪だった。飾りは何もつけられていない、シンプルなデザインで、素材はシルバーだろうか?


 「けどなぁ、私、パンチ力落ちてるのかな、って不安になってさ」


 チラリと紅壱に向けられた目は、彼だけではなく、他の者も見ているようだった。瑛は小首を傾げたが、愛梨の落ち込む理由に想像がつく紅壱と夏煌は小さく頷いた。

自分を蹴り飛ばした事を許すから、『組織』への殴り込みと、報酬に関しての文句を言うのを止めてくれ、と紅壱から真剣に頼まれ、困ってしまう瑛

しかし、彼女は一度、口にした約束は守るイイ女

次はない、と念押しした上で、今回は我慢する、と紅壱に誓ってくれるのだった

そんな中、今度は愛梨が落ちこんでしまう

果たして、生徒会のムードメーカーである愛梨が抱える悩みとは?

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