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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
瑛vs夏煌、ラブバトルのスタート
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第五十八話 積極(active) 夏煌、紅壱に自分の気持ちをアピールする

紅壱のテンションが瑛に会える事でとんでもなく上がるように、瑛だって紅壱が元気な姿を自分に見せてくれるのが、何よりも嬉しい

知らぬ知らぬ内に、相手がもっと好きになっていく二人。でも、まだ、告白する勇気が持てない様子。そんな後輩を恵夢は温かい気持ちで見守るのだった

瑛と一緒にいられた幸せを噛み締めながら、教室にやってきた紅壱は親友の修一とも絆を強め直すのだった

彼らは、やっぱり知らない、自分たちにクラスの女子の一部が熱烈な視線を送ってきている事、そして、夏の祭典で売られる彼女らの薄い本のモデルが自分たちになる未来も

 身近にいる年頃の男女が、両片思いし、なかなか、交際に発展しないでいる状況と言うのは、周りにいる者からすれば、微笑ましく、じれったい。応援したくなる者もいれば、静観してやろうと思う者もいるに違いない。

 けれど、それはその男女に恋心を抱いていなければ、に限る。

 鳴が、紅壱に敵意を剥き出しにし過ぎているのは、男嫌いだからだけではなく、瑛の事が恋愛対象として好きである、そんな理由も一つとしてあるのだろう。

 夏煌は紅壱を恋愛対象として見ているからこそ、鳴のように敵意こそ剥き出しにしていないが、瑛へ真っ直ぐな対抗意識を滾らせていた。

 なので、紅壱が瑛に惚れており、瑛も紅壱の事が好きになっているけど、お互い、まだ告白する決断は下せていない、嗅覚と表現しても良い鋭い勘を根拠の下地にして判断するや、夏煌は積極的に紅壱へ触れるようにした。

 もちろん、夏煌も想像力が欠如している訳じゃないので、自分が紅壱へ執拗なボディタッチをすれば、瑛の鈍い恋心に余計な刺激を与え、動くキッカケを与えてしまうのではないか、と危惧感もあった。しかし、それまでに、アドバンテージも作っておけば、と言った狙いもあった。

 もっとも、その夏煌の健気な努力が、望む結果に繋がるのか、そこは今の時点では微妙と言わざるを得なかった。

 瑛が恋のライバルになってしまったら、自分に勝ち目はない、そんな不安が膨らむのは、瑛が時に怒気を漏らすからだ。

 瑛は、人の心の機微に聡いが、いざ、色恋事となってしまうと、その読みの感度は随分と落ちるようだ。

 夏煌が、紅壱を本気で好きになっていると気付いているのは、生徒会の中では、瑛と紅壱以外の全員だ。 しかし、瑛は気付いてこそいないが、何か嫌だ、と思うらしく、つい、怒気が漏れてしまうようだ。

 なので、完全に気付いていないのは、紅壱だけだ、と言っても良い状況だった。

 夏煌が、自分を恐れる事なく、好意的に接してくれるのは嬉しく感じていた。だが、さすがに、その好意、「好き」が「Like」や「お気に入り」ではなく、「LOVE」だとは察せていなかった。

 それは何故か、その答えは夏煌にとっては、若干、厳しいものである。

 ハッキリ言ってしまうと、夏煌のサイズにあった。彼女は体も小さいが、胸も控えめだ。

 その手の作品では、貧乳と見せかけて、服を実は脱ぎ、下着も取ればある、と言うパターンが多いけれど、夏煌の場合は、本当にちょっとしかない。目測ではあるが、AAだろう、カップ数は。

 夏煌は自分の胸を、紅壱の体へ、かなり強めに押しつけているので、彼も「ふにゅ」と表現できる程度のものは感じている。

 しかし、紅壱はロリコンでも、つるぺた派でもないので、その感触に嬉しさを覚えないのだ。むしろ、悪い事をしている気分になってしまう。これまで、何度も警察から口頭注意されるほど、暴れているのだが、それはそれなのである。

 幼い体躯の夏煌が、同年代の男子より頭二つ以上は高身長の紅壱へくっついていると、相当に年の離れた末妹か、従妹くらいにしか見えないのだ。

 苗字も知っていると、そのイメージより、超大型犬に超小型犬がじゃれついているようにも見えてくる。 微笑ましさもある反面、超大型犬が何の気なしに動いた拍子に、超小型犬が怪我でもするのでは、とソワソワしてしまうくらいだ。

 そう言う意味では、夏煌の不安は的中するかも知れなかった。

 恵夢らは気付いているが、夏煌が懸命に努力しても、紅壱を振り向かせられる可能性は低いだろうな、と思っているから、彼女の努力を優しく見守っている。

 けれど、瑛だけは、妙に過敏な反応をしてしまっている。それは、もしかすると、瑛は無意識の内に、夏煌が自分から紅壱を奪ってしまうのでは、と心配しているからか。

 この恋物語、そう簡単には、安直で定番、大衆受けしそうなハッピーエンドには辿り着けそうもないが、障害が多い厳しい道の方が大好きな当人らにとっては、試練はドンと来い、と言うだろう。

 当面の試練、それは、瑛が自分の素直な気持ちを紅壱へ伝えられるか、そこであった。尤も、それが最難関であるのだが。一番、最初から、レベルMAXの問題に直面するあたり、瑛らしい。



 泣きながら叱る、その方法での抗議を終えた夏煌だが、まだ、心のモヤモヤは晴れ切らないらしい。

 なので、続いて、彼女はすっかりと湿ってしまった紅壱の胸板を小さな拳で叩き続ける。

 夏煌は小さな体なので、握り拳もさほど大きい訳じゃない。そんな拳で、男の胸板を叩けば、その時の効果音を大抵の者は、「ポカポカ」を想像するだろう。いわゆる、幼女パンチの効果音だ。

 しかし、忘れないでほしい。夏煌は、天戯堂学園高等部の生徒会に属する者だ。

 紅壱とは異なり、闘気は使えないが、魔術は使える。

 いつも以上に声量が絞られており、胸板に額が押しつけられていたことで、紅壱は夏煌が打撃力を一段階ばかり上げていた事に気付けなかった。

 とは言え、元の打撃力が高い訳ではないので、呪文によって打撃力が高められた夏煌のパンチは幼女パンチから少女パンチになった程度で、その音も「ドンドン」に代わっただけだった。


 「・・・・・・」


 「悪かったよ。心配かけちまったのは、謝る。

 けど、あの霊属は、かなり強かった」


 「・・・・・・」


 「ナツが足手まといになる、と思った訳じゃない。

 お前がスピードで翻弄してくれりゃ、俺も楽だったかもしれない」


 「・・・・・・」


 「でも、アイツの一撃はとんでもなかった。

 いくら、ナツでも、ずっとは避け続けられなかったと思う。

 俺でもヤバかった一撃だ、ナツの体じゃ耐え切れなかった、絶対にだ」


 「・・・・・・」


 「あぁ、約束する。次、旗色がヤバいなって確信したら、お前にSOSを出す。

 でも、お前も約束しろ。お前の、この小さい手に余るトラブルで、会長らに言えない事だったなら、俺を頼れ。

 俺が、きっちり解決してやるから」


 胸板をドンドンと打ちながら、カガリとの戦いに自分を呼ばず、追い払えこそしたが、単騎で戦ったせいで、虎の時以上の大怪我を負った事について、夏煌は紅壱を怒り続けた。

 年齢、学年は同じで、身長は大きな差こそあるが、生徒会のメンバーとしては夏煌の方が数日でも先輩であるのは間違いないので、紅壱は口調こそ変えないが、トーンには反省の色は濃く滲ませ、真摯な態度で彼女に詫びる。その上で、カガリとの戦いに仲間を呼ばなかった理由を誤魔化さず、ハッキリと告げる。

 こんな最高のタイマンを、誰かに譲ってたまるか、そんな祖父譲りの狂戦士的な発想に支配されていたのも間違いない。ただ、夏煌に対しての言葉も嘘ではない。

 こんな自分を迎え入れてくれた生徒会のメンバー(一人除く)、しかも、女子をこんな危険な戦いに巻き込めるか、男としての意地と誇りが働いたのも嘘じゃない。


 「・・・・・・」


 しばらく押し黙っていた夏煌だったが、紅壱の気持ちを汲み、最後にもう一度だけ、彼の胸板をドンと叩くと、拳が届かない位置まで身を離す。そうして、俯けていた顔を上げ、口元を明るく優しい喜色で染める。

 

 「心配してくれて、ありがとうな、ナツ」


 微笑み返した紅壱に頭を優しく撫でられ、いっそう、口元が緩んでしまう夏煌。もし、彼女の小さいが引き締まっている臀部に犬の尾が生えていたら、根元から千切れてしまうのでは、と不安になるほど、激しく振られていたに違いない。

 見た目からすると、夏煌は小型犬のようなイメージを持たれるのだろうが、頭を撫でている紅壱は、どういう訳か、大型犬を前にしているような錯覚に囚われていた。

 恐らく、それは掌から夏煌の戦闘力を感じ取っている事も関係しているんだろうな、ぼんやりとそんな事を想いながら、紅壱は少しだけ、手に力を入れた。

 撫で方がやや乱暴な方が、夏煌としては気持ちがいいのか、彼女は「もっと、もっと」と頭を掌へ押しつける事で、密度の濃いコミュニケーションを求めてきた。

 欲しがりな夏煌に、紅壱が困ったように苦笑したところで、愛梨がやってきた。


 「よぅ」


 「こんちわっす」


 心の片隅で、ほんの少しだが、「助かった」と安堵した事に罪悪感を覚えつつ、紅壱は夏煌の頭から手を退け、その手で愛梨が突き出してきた拳を受ける。

 頭を紅壱が撫でてくれなくなり、夏煌は不満を覚える。しかし、彼女は、あからさまに眉を顰めたり、唇を尖らせるなどの変化を、顔の表面上に出さなかった。もっとも、苛立っているのは、その小さな体に纏っている雰囲気で明らかだったが。

 野生の獣なみに鋭敏するどい、持ち前の洞察力を持ってしても、何故、夏煌が愛梨の登場に苛立っているのか、理解できずに軽く狼狽えそうになっている紅壱に対し、愛梨は後輩がささくれだっている理由が把握できているようで、「参ったな」と向けられた敵意で痒くなった頬を、気まずげに掻く。

 また、愛梨にヘッドロックをかけられている修一も、夏煌が不機嫌な理由が、何となく理解できるようだ。きっと、それは彼が親友とは異なり、良い意味で大勢の女性のケツを追いかけ、心身どちらでも痛い思いをしてきた経験が豊富だからだろう。


 「ナツ、どうした?お腹でも空いたのか?」

 

 本気で自分の心配をしてくれているのが伝わってくる表情で、紅壱に覗き込まれ、満足してしまったか、もしくは頭が冷えた代わりに自己嫌悪に襲われたのか、ふいっと彼から顔を逸らした夏煌は数歩ほど、皆から距離を置くと、紅壱が腰かけていたベンチに座ってしまう。

 ますます心配になった紅壱は夏煌に近づこうとしたが、それに「待て」をかけたのは愛梨だった。

 今はそっとしておいてやんな、と目配せされた紅壱は眉間に皺が寄るも、少し迷った後に、小さく首肯うなずいた。

 同じ女の子だからこそ分かる何かがあるのだろう、と迷う己を納得させながら、紅壱は視線を悪友に向ける。


 「すいません、そいつが何か、失礼な事をやらかしましたかね、エリ先輩」


 友人のため、真摯に、深々と頭を自分に下げた紅壱への好感度が更に上がった愛梨は気分良さげに笑うと、修一の首を解放してやる。

 恵夢ほど、見事な重量感がある白毬が頬に押しつけられれば、男として嬉しさが勝るだろう。だが、愛梨の場合、胸の大きさ、柔らかさも平凡ではあるが、何せ、地の腕力が凄まじい。紅壱の左フックの衝撃にすら耐える柔軟な首を持つ修一でなければ、とっくに頸動脈が絞まるか、頸骨にかかった激痛で、とっくに失神していただろう。


 「待て、コウ、俺は何もしてない」


 「何言ってんだ。

 アタシは、コーイチが来たら、すぐに連絡を入れろって言ったのに、忘れていただろうが」


 「!? そ、それはそうですけど・・・・・・うっかりしてたんす、すいません」


 「すいませんで済むか、すいませんで」


 ゴヅッ、と鈍い音が修一の頬から上がる。


 (速いな、やっぱ)


 修一ですら、避けられないほど、愛梨のパンチは速かった。雲屯ほどではないが、相当に上手く、出の気配が抑圧おさえられていた。

 だが、夏煌は修一に対し、驚きを隠せずにいた。

 何せ、愛梨の打撃は、若いオーガですらKOできる威力がある。さすがに、手加減こそしていたようだが、それでも、ゴブリンの首の骨くらいなら、呆気なく折れるのが当たり前の威力がある。当然、そんなパンチが頬にクリティカルヒットすれば、人間の顔面がどうなるか、想像に難くない。

 思わず、一瞬、嫌な光景を想像してしまった夏煌は、「いてて」と愛梨の拳の跡がうっすらと残っている頬を、しかめっ面で撫でている修一を見て、さくらんぼ色の唇が軽く開き、一抹の恐怖すら滲んだ息が漏れ出てしまう、静かに。


 「もうちょっと、手加減してくださいよ。

 このイケてる面が凹んだら、この高等部に通う女子が何十人も泣きますよ」


 「泣かねぇよ。一人もいねぇだろ」


 「誰がイケてる面だよ。鏡、見て来い」


 センパイとマブダチから、愛のあるツッコミを喰らえば、桁違いの頑丈さを誇る修一も、さすがに目が潤んだ。

 「まぁ、お前の妄想は脇に置いておくとして」と、紅壱はここ最近じゃ見ない、古典的な動作を行ってから、愛梨に威圧感プレッシャーきっさきを向ける。

 刹那、夏煌の彼への好意が増したのは、言うまでもない。

 視線が鋭さを増す、それは気迫で威圧した、と言う事だ。ごくごく一派的な実力者が、そのレベルの威嚇を行えば、一体の空気が重くなったり、気温がわずかに下がったように感じたり、砂埃が「ぶわぅ」と巻き上がったりするものだ。

 なのに、それらの分かりやすい変化が起こらなかった。

 それは、紅壱の威圧がその程度の事も起こせないほど情けないものだからではなく、完全に威圧感を愛梨に向けられるほど、自分の実力を制御できている事を意味していた。

 夏煌が知る限り、これが出来るのは、激昂の感情が振り切れ、静かにキレた時の瑛だけだった。

 その一瞬こそ、実力が同等である二人こそお似合いだ、と思ってしまい、夏煌は慌てて、弱気な自分を追い払う。

 威圧されている愛梨は、夏煌よりも彼の実力を文字通り、肌に感じており、薄ら寒さすら生じていた。しかし、その震える唇は恐怖で青褪めているなんて事はなかった。むしろ、震えているのは笑いだしたいのを、必死に堪えていたからだ。もし、少しでも笑ってしまったら、拳を繰り出すのも我慢できなかっただろう。

 魔力の属性こそ火ではないが、一度、闘争本能が着火すれば、一直線に敵へ突っ込んでいき、全力以上を出して荒々しく戦い、勝ってしまう事から、『組織』に所属する他校の生徒から、「火の玉娘」と畏怖されている愛梨だからこそ、その自制心は強い。

 もしかしなくても、自分より強いかも知れない紅壱に真っ向勝負を挑みたい気持ちも、彼女の中では暴れていたが、先輩として後輩に手は出せない、学校の中庭で素手喧嘩などできない、今はつまらない怪我は出来ない、と当たり障りのない理由で、自らを宥めた愛梨。

 ちなみに、まだ驚いたままの夏煌、心は熱く頭が冷えている愛梨を他所に、修一はまだ、落ち込んだままであった。ボディはアンブレイカブルだが、心はそうでもないようだ。

いつも通り、中庭で昼食にしようとしていた紅壱へぶつかってきたのは、夏煌

彼女は無表情だったが、静かに怒っていた、自分の心配も他所に、カガリと戦った事に

そう、大神夏煌は、辰姫紅壱に恋心を持っていた。もちろん、先輩であり、生徒会の会長である獅子ヶ谷瑛も自分と同じ男に惚れている事にも気付いていた

瑛を尊敬しているけれども、恋となったら、それは別問題

夏煌は紅壱とお付き合いすべく、全力で自分の気持ちを紅壱へ伝えていく事を決意するのだった

そんな仲間の一大決心など知らぬ紅壱は、修一と愛梨が仲良くなっている事を訝しみつつ、自分の友人を蔑ろにする先輩に対し、苛立ちを露わにする

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