第四十七話 力試(test) 剛力恋、紅壱の胸を借りる
アルシエルの領地拡張と、バリケード作成の為の木材の調達を目的にし、午前中、紅壱と魔属らは伐採作業で汗を流し、労働に励んだ
作業中に、紅壱が妖精に懐かれる、と言うミニイベントこそ起こったが、無事、一人も大きな怪我することなく、午前の作業が終わる
紅壱から貰った料理の教本を片手に、初見の米をどうにか上手く炊く事が出来た食々菜
彼女らが握ったおにぎりを食べ終わった頃だった、うずうずしていた剛力恋が紅壱に挑んだのは
怖いもの知らずな性格がハッキリと出た、どストレートなお願いに対し、吾武一の額に太い青筋が浮かぶ。しかも、怒気が魔力を膨張させたのか、放電現象を起こした。
「ちょっ、お父!?」
身を焼こうとしたスパークを避け、剛力恋は怒髪天を衝く父へ抗議の叫びを発す。
「いい加減にせんか!!」
叱責の声は雷鳴に近く、またもや、魔力が電撃に変質する。本魔が意識して放っている訳ではないものだから、スパークは剛力恋だけでなく、他の者まで襲う。
「ふぬぁ!」
「吾武一さん、落ち着いてくださいッッ」
「COOL DOWN」
奥一に羽交い絞めにされ、弧慕一に宥められ、輔一には槍を喉元に突きつけられたことで、少しは冷静さを取り戻したらしい吾武一は、素直に己の非を認め、項垂れた。しかし、すぐに娘へ鋭い目を向けた。
ガチギレしかけている父親に睨まれ、身を竦める剛力恋だが、彼女も彼女で退く気はないらしく、再び、紅壱に訴える。
「ちょっとでいいっすから、私と闘ってくださいっす」
「剛力恋さん、王様の強さに疑いが?」
顔は吾武一に向いたままだが、弧慕一の肩から立ち上る魔力は剛力恋に纏わりつこうとしている。もしも、答えを間違えれば、その魔力を的とし、弧慕一の足元から石の槍が飛び出すだろう。
温厚で常識派だからこそ、弧慕一は怒りで我を忘れると、味方であろうと、いや、味方だからこそ、王への態度に不遜の気が滲めば、容赦しなくなるのだろう。
頭ではなく、体で理解する性質の剛力恋も、弧慕一の怖さを察したようで、下唇がぎっと噛み締められる。けれども、剛力恋は自分を止められない。
「美味しいもの、たっぷり食べたら、体を動かしたくなっちゃったっす」
「・・・・・・なるほど」
弧慕一には、剛力恋を殺す気など微塵もなかった。紅壱も怖かったが、娘を殺された吾武一が、どれほど手強い憤怒の権化になるか、想像もしたくない。だから、軽く脅すつもりで、喉元ギリギリまで石の槍を伸ばした。
しかし、剛力恋は魔力の流れを感知したか、もしくは、野生の勘で発動のタイミングを察したのか、目にも止まらぬ速度で放たれようとした石の槍を、具現化と同時に宙で掴んで止める。
「弧慕一さんが、相手でもアタシはいいっすよ」
何だかんだで、弧慕一もまだ、若いらしい。剛力恋のあからさまな挑発で、闘争心に着火されそうになる。
それを鎮めたのは、紅壱であるのは言うまでもない。
「止せ」
たった一言で、二匹とも動けなくなってしまう。
「私闘は禁止だ。幹部なら尚更な」
しゅんと項垂れる剛力恋だが、彼女より精神的なショックを受け、耳まで赤くなってしまっているのは、弧慕一の方だ。つい、我を忘れそうになってしまったのだから、穴があったら入りたい恥ずかしさに襲われている彼を、輔一が無言で慰める。
「っしゃ」
紅壱はおもむろに腰を上げると、皆に食器を下げ、ある程度の広さを空けるように指示する。魔属らは、すぐさま指示に従い、組み手に十分なスペースを作り、そこを円となって囲んだ。
「え、相手してくれるっすか、コウイチ様!!」
「挑戦されて、それを受けないってのは、お・・・長として名折れだろ。
それに、どうせ、お前らがどれくらい戦えるか、そこは確かめるつもりだったんだ、今でも後でも変わらんさ」
やる気になってくれた紅壱の背を見て、剛力恋は破顔するも、円の中央で彼が振り替えた時、その表情を険しくする。
「妖精、頭から退くっす」
その言葉に、半泣きの妖精は素直に従おうとしたが、飛び立とうとした彼女にストップを紅壱がかける。
「・・・・・・何の真似っすか、コウイチ様」
「見て分かってるんだろ。ハンデだ」
紅壱の言葉に、観衆はざわめき、幹部らもどよめく。特に、吾武一の表情と言ったら、形容しがたい。「娘を馬鹿にするな」と叫びたいが、忠誠を誓っている紅壱に対し、そんな罵倒を浴びせられるはずがない。どうしたらいい、と悩む吾武一を視界の端にすら入れず、紅壱は繰り返す、「ハンデだ。これくらいで丁度、いいだろ」と。
「ナメてるっすか、あたしを」
「とんでもない・・・・・・むしろ、お前がハンデ無しで、俺とまともな勝負になると思ってるのが驚きだよ」
カカシ仕込みの口撃は、剛力恋のような気質の強者には、どんぴしゃだ。
「上等っす」と声のトーンを低くした剛力恋だが、紅壱は彼女の目の色から、あえて、自分の攻撃力を怒りの感情で底上げするべく、自身の煽りを無防備に受けたのを察した。
剛力恋が思っていた以上に強かである事に驚くと同時に、頼もしさを覚えた紅壱は、翠玉丸に一つの頼み事をしようと、顔をそちらに向ける。だが、彼と契約している翠玉丸は先んじて、紅壱の鞄から、とある物を二つ取り出していた。
「これでいいかしら?」
「あぁ、それでいい・・・そこのゴブリンで良い、翠玉丸から受け取れ、ホイッスルを」
え、と驚いたゴブリン小僧に、翠玉丸はホイッスルを渡す。彼女はそれを舌で器用に持っていたので、ゴブリン小僧は一瞬ばかり怯んだが、持ち前の度胸で耐え、「うっす」と受け取る。
「時間は。まぁ、一分で良いな」
「一分?」
剛力恋らを始め、魔属らは首を傾げ、不安そうな顔を合わす。
「この時計の中に入っているオイルが、上から下へ完全に落ちきったら一分よ」
翠玉丸が尾の先で器用にジャグリングしていたのは、調理の際に使っているオイル時計だった。
「笛を吹くのは、残り十秒になったらでいいのよね、坊や」
あぁ、と翠玉丸の確認に頷いた紅壱は、剛力恋に対し、右手の親指以外を立てた。
「剛力恋、お前の敗北の条件は、四つだ。
一つは、一分後に気絶もしくは戦闘不能状態になってしまう事。
もう一つは、一分後に、足の裏以外が地面に付いた状態になっている事。
そんで、一分の間に『参った』と言ってしまう事」
「最後の一つは、何っすか? アタシは、何をどうしたら、勝てるっすか?」
「一分の間に、俺へ攻撃を一発でも綺麗にブチ込めば、お前の勝ちだ」
「じゃあ、最後の条件で、コウイチ様に勝つっす」
「・・・・・・好きにしろ」
「では、タツヒメ様の勝利条件は、剛力恋さんを気絶させる事と、参ったを言わせる事、直撃を一発も貰わない事になりますね」
弧慕一の指摘に、紅壱は頷き返した。紅壱に、少しばかり有利な条件ではあるが、彼が挑戦される側である。なおかつ、本来であれば、幹部と言えど、いや、幹部だからこそ王に軽はずみな気持ちで勝負を挑んでいいはずがないので、紅壱がルールを決める権限を行使するのは当然と言えた。
当の剛力恋が、そのハンデを気にしていないのなら、周囲がルールの変更を訴える必要もないので、弧慕一らは目配せで結論を統一し、一歩ばかり下がった。
「これは、ゲームみたいなもんだからな、剛力恋、お前がもしも、俺に勝てたなら、賞品をやる。何が良い?」
「・・・・・・・・・じゃあ、その妖精が貰っていたモノより、もっと美味しい人間界のお菓子を要求するっす」
「いいだろう。じゃあ、俺が勝ったら、お前には罰を受けてもらうぞ」
紅壱の悪どい嗤い顔が、剛力恋に怯みを押しつけようとするが、彼女は根性で跳ね除ける。
「望むところっす」
「ルールは決まったなら、勝負を始めてもいいわね」
「ちょい待て、翠玉丸。
剛力恋、武器は持たなくていいのか?」
「・・・・・・ハンデっす」
上等、と剛力恋の豪胆さに紅壱の唇の端は、ますます吊り上がった。
とてつもなく激しい動きになる、そんな危機感が掠めたらしく、妖精は紅壱の髪を全力で掴み、何が起きても振り落とされないようにする。見え辛いが、小さな手が淡く光っている点からして、彼女は身体能力も魔力で強化できるらしい。
「じゃあ、小鬼君、私がこれを引っ繰り返したら、その笛を思いきり吹いて頂戴。
尾で肩を叩いたら、もう一回、吹くのよ」
任せるゴブ、と自信ありげに言うかのように、「ピッ、ピッ、ピィィィ」とゴブリン小僧がホイッスルを吹いた。
「では、はじめ!!」
ピィィィぃぃ、と甲高い笛の音が青空に吸い込まれる。
一分後に、剛力恋が見たのは、快晴の空ではなく、自分の汗、涙、血が染み込んだ地面であり、彼女は口の中に残っていた、米の美味さを苦い完敗と、酸っぱい惨敗の味に塗り替えられた。
結果としては分かり切っていた事であるから、剛力恋には悔しさに塩を塗られるのに耐えてもらい、負けるまでの過程を語るとしよう。
紅壱は、剛力恋の性格とスタイルから、間髪入れずに全力で、真正面から突進を仕掛けてくるだろう、と考えていた。
けれど、名付けにより、ホブゴブリナとなった彼女は、知力もある程度は上がっていた。この知力には、自制心や想像力も含まれているらしく、剛力恋は紅壱相手では、正面突破が最下策である、と判断し、開戦の合図と同時に衝動的に動こうとした自らを律せたようだ。
紅壱が自分に感心しているとは、緊張と集中で、剛力恋は気付かなかったようだ。彼女は十秒ほど、その場から動かず、紅壱の観察に努めた。
彼女なりに隙を見出そうとしていたようだが、いくら、センスがあろうとも、彼女のレベルでは、まだ《・・》、紅壱の隙を見つける事も、よしんば見つけられても突く事も出来ないようだ。
動かないのはダメだ、と剛力恋は、もう十秒ほど使い、紅壱の周囲を摺り足で回り出す。
観衆らは、紅壱と剛力恋、どちらへも応援の声を飛ばしている。だが、今の剛力恋の目は紅壱しか見ておらず、耳は彼の動く音だけに反応し、肌は予備動作が起こす空気の揺らぎを正確に察知しようとしていた。
一周しても、やはり、隙は見つけられなかったので、剛力恋はここで、ついに前へ出る事を決断し、すぐさま、実行に移した。動く事で、事態が好転する、それは間違っていない。
けれど、紅壱の先読み能力は、剛力恋の比ではない。彼女が、そのタイミングで動き出すのは、容易に察せた。何せ、視線や体臭、体重のかけ方、呼吸のリズム、気の揺らぎなど、その根拠となる要素を、剛力恋はいくつも露呈してしまっていたのだ。
こればかりは、実戦の経験値に差があるので仕方ないのだが、紅壱は呆れてしまいそうになる。
その一瞬も、剛力恋の目には好機と映ったようで、彼女はフェイントも入れず、直線的な突進を仕掛けてきた。
数回ほど大地を蹴って、紅壱との距離を半分ほどにした瞬間だったか、剛力恋の額に何かが当たり、首が後ろに勢いよく倒れたのは。
脳が揺れるほどの威力ではなかったが、額に走った痛みは涙を滲ませるには十分で、彼女の視界は霞む。
何が額に当たったのか、いや、当てられたのか、それは分からなかったが、剛力恋は余計な疑問を、前へ顔を戻すと同時に振り払い、前進をすぐさま再開する。
動きが止まったのは、わずか刹那。再始動までが、実に迅速だった。
けれど、剛力恋はその場から進めなくなった。
前に出した右足が地面を踏む直線、額に当てられた何かが脛に直撃した。骨を伝って、股間まで届いた激痛で、剛力恋は足を戻してしまう。
そのタイミングに被せるようにして、紅壱は剛力恋の体躯へそれをぶつけた。
目に見えない球が、次から次に体へ当てられ、剛力恋は前進めなくなる。それでも、後退はせず、その場で足を踏み締め、両腕で頭部を守る。
何が当たっているのか、剛力恋は考えなかった。正体が分かっても、意味はない。考えている暇があるなら動いた方が良い、と決断する。
剛力恋は紅壱の正面から左に素早く動き、そこから突進しようとする。だが、彼女の移動を読んでいた紅壱は遅れる事無く、体の正面を剛力恋が止まった場所に向ける。
別に、頭や体を向けずとも、何かを連射する事は可能だったが、あえて、剛力恋に精神的なプレッシャーを与えるために、体の向きをわざと変えていた。何と、意地が悪いのだろうか。
「ぇ」
ギョッとする間すら、剛力恋に与えず、紅壱は連射する。
紅壱が指で剛力恋に狙いを定めて弾き飛ばしていたのは、手首から先に集中させていた闘気。
体表を薄く覆う事で、基礎的な防御力を上げる闘気は、指で弾けば、数mは半実体化を保ち、標的に当たって現実的な傷を刻む事が可能だ。ただし、練って闘氣に昇華できるほどの質と量があり、なおかつ、目に映らぬ速度で弾かねば、闘気は敵に当たる前に、空中で霧散してしまう。
闘気弾の連射により、その場に足止めを食ってしまう剛力恋。だが、痛みに慣れ始めたのか、彼女は頭部をガードしたまま、前進を再開した。その速度は、歩くよりは速く、走るよりも遅い。だが、その足運びには躊躇いがなかった。
彼女の勇敢さに、紅壱は舌を巻かざるを得ない。指加減はしていたが、もうしばらくは動きを封じる事は出来る、と思っていたのだ。
どうやら、脅威的な攻撃に曝されている中で、剛力恋のレベルが上がり、体力の値が上がり、物理的なダメージに対する耐性も増したようだ。魔属の成長速度は、人間の常識からすれば、実に危険だった。
闘氣を飛ばす事も、紅壱には出来たが、それは憚られた。何故なら、威力が桁違いと表現できる差ではないからだ。
闘氣弾が当たったら、剛力恋の体には、簡単に穴が開く。仮に、そこが急所でなくとも致命傷だ。
喧嘩は買ったが、殺したくはない紅壱としては、攻撃力の劣る闘気弾を撃つしかなかった。
弾数を倍にするが、剛力恋は止まらない。逆に、剛力恋の頑丈さを強めてしまうだけか、と彼は足止めを諦めた。
その一瞬を逃さず、剛力恋は一気に距離を詰め、ここぞと言うタイミングで左のストレートを、顔面目がけて突き出す。
けれど、やはり、剛力恋の攻撃を気取らせないテクニックは未熟だった。
人間、感心と呆れが一緒に込み上げてくると、口元は独特な歪み方をしてしまうようだ。それでも、体に染みついている動きには、微塵も乱れが生じない。見る者が視たのなら、紅壱が普段から、どれほど型の反復を真面目に繰り返して、実戦を多く積んでいるか、を察するだろう。
「しっ」
紅壱は、軌道が見え見えの剛力恋の左パンチを、横へ上半身を軽く振り、斜めに捻って躱す。打撃を腕刀で受けた紅壱の体勢は、剛力恋のがら空きになったボディへ蹴りを叩き込むのは最適なものだった。
しかし、紅壱は彼女の腹を蹴り飛ばさず、爪先で軽く押すに留めた。
先程も記したが、紅壱には剛力恋を殺す気など、微塵もない。相手が、自分を本気で殺しに来ている敵なら容赦なく、内臓を破裂、いや、腰から上が千切れるくらいの威力の蹴りを見舞っている。
紅壱は、トン、と軽く押し返しただけだったが、剛力恋は勢いが前に傾いていたため、そのベクトルを逆にされ、後ろへ数mも下がってしまう。
だが、剛力恋は強引に止まるや、すぐさま、前に出てきた。紅壱が指弾を繰り出さない事が分かっていた訳ではないだろうが、その前進には恐れがなかった。
同じようなカウンターを喰らう訳にはいかないので、剛力恋は左パンチではなく、右足での蹴りを放つ。素人丸出しの蹴りだが、身体能力が高いので、木製バットなら、間違いなく、折れただろう。
その威力が紅壱は経験で分かるが、ここで臆すような男ではない。
彼は横に動いて、余裕を作ると、彼女の蹴りを腕で払う。腕の力だけでなく、腰も入れて払い、全身で蹴りの衝撃を受け止めきったので、何らダメージはない。むしろ、思わぬ防御をされた事で、剛力恋は体勢が崩れてしまう。
またもや、蹴りのカウンターを繰り出せる絶好のチャンスを掴んだ紅壱。しかし、彼は剛力恋の水月に軽い一撃を入れると見せかけ、注意が疎かになっていた軸足を大地から掬い上げるようにして払いのける。
いきなり、足の裏から地面を踏み締めている感触が消えたものだから、剛力恋は「きゃっ」と、愛嬌のある小さな悲鳴を発してしまう。突いた尻もちの痛みは、意識を真っ白にしたが、剛力恋の体は反射的に、紅壱の下段蹴りを後転で回避していた。
立ち上がると同時に、意識が明白になった彼女は、紅壱の姿を確認するや、前に跳び出して、右ストレートを繰り出す。
当然、これも紅壱は顔を必要な分だけ、後ろに下げ、直撃を免れる。そうして、引きに入っていた右の手首を無造作に掴む。
剛力恋にテクニックがあれば、難なく外せただろうが、それは出来ない。掴まれた事でパニックとなり、剛力恋は力づくで引き抜こうとしてしまう。その力の流れを、紅壱は上手く操る。
剛力恋の体重は、空手部や柔道部の男子高校生と同じ程度はあるはずだが、投げられた時も、地面に背中が落とされた時も、ほぼ無音で、動線も滑らかだったので、その際の音を誰かが聞いたとしても、体重を言い当てる事は出来ないだろう。
柔らかく投げられる、これも初体験だった剛力恋は驚いてしまい、反応が数瞬ばかり遅れてしまう。
真剣勝負の最中にも関わらず、呆然とした剛力恋を注意するように、紅壱は地面から起き上がろうとしていた彼女に覆い被さった。
突然の接近に、剛力恋の頭はまたしても、白一色となる。
けれど、口から出た音は「きゃあ」などと言う、色気のあるものではなく、「ぎぃあっ」とネズミが猫に踏み躙られているかのようなものだった。もっとも、完全な角度でリストロックをかけられたら、剛力恋でなくとも、誰だって口から出る音は濁るだろう。
名を紅壱から付けてもらった事で、ホブゴブリナに進化できた剛力恋
彼女は、ずっと思っていた、自分はどれくらい強くなっているのか、紅壱はどれくらい強いのか、を知りたい、と
やりたい、そう思ったら、彼女は止まらない
父である吾武一や他の幹部らも、仕える王に対する彼女の無礼な態度に怒りを剥き出しにするも、紅壱は快く、勝負を受け、敗北の味を教えるのだった




