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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
異界への転移
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第二十七話 就任(assumption) 紅壱、王になる、と自分で決める

異世界にやってきた紅壱は、名を与えたゴブリン、吾武一の村を訪れる

その村には、これから、ゴブリンだけでなく、オーク、コボルド、スケルトンが共に住む事になっていた

異なる魔属が互いに助け合い、生活する、その未来を想像し、温かい気持ちになっていた紅壱に、各種族のリーダーは「自分たちの王になってくれ」と懇願する

果たして、紅壱の出す答えとは!?

 彼の気の動転を察したオークナは、すぐに茶を注ぎ、紅壱に差し出す。

 「すまん」と、一気に杯を空にした紅壱は、呼吸も併用して精神を落ち着かせると、じっくり、吾武一、奥一、弧慕一、輔一の顔を順に視る。

 その真摯な顔つきは、およそ冗談を言っている者のそれではない。本気で、自分を集落ここではなく、これから興す国のトップに就かせる気だ、と悟った紅壱は、まず、その理由を質した。


 「ここはお前ら、四種の魔属が共同生活するんだろう。これから、もっと増える。

 なら、お前らの誰かが頭になるべきだ」


 「だからこそです」と、弧慕一は紅壱の意見に、真っ向から「否」を堂々と、臆せずに突きつける。


 「ゴブリン、オーク、コボルド、スケルトン、多くの種族が集まって暮らすのです。

 その一種が、集団のトップとなれば、軋轢が嫌でも生じます。大きな力に対抗するべく、弱き者らが集まったと言うのに、内輪争いを始めてしまったとなれば、本末転倒も良い所でしょう」


 「しかも、これから、他の魔属も仲間にしていく事を考えれば、尚更、私たちの誰かが上に立つのは利口とは言えません。

 ならば、魔属ではなく、人間であるタツヒメ様が、集落の長、いえ、王となっていただくのが、万事を丸く収める、唯一の手段なのです」


 「実力不足の人間が、ミー達のマスターとなるのでは反抗も起きましょうが、幸いと言うべきか、先の一件で生き残った者は、Bossの強さを見ております。であれば、誰も反対しないでしょう」


 「仮に、反論する奴がいたら、俺が拳で黙らせる」


 奥一の意見は看過しづらいにしろ、彼らの意見には筋が通っている。

 天使たちは元より、この異界で力を持つ怪異、また、『組織』と一戦構える可能性が高い以上、翠玉丸のアドバイスに従い、自身に力を快く貸してくれる、つまりは、忠誠心の強い怪異を多く集めねばならない。

 それは、自分が魔王として、怪異の軍団の上に君臨する事を意味している。それを考えると、ここで吾武一らの頼みを断っても、同じなのである。


 「どうか、我ら、魔属の王に!!」


 しかし、いくら、ここに各種族のリーダーが集まり、彼らに頼まれているとは言え、それを種族全体の頼みとして受け止めるのは尚早だ。


 「お前らは、どうだ?」


 「どうって、何がゴブ?」


 紅壱に尋ねられるも、ゴブリィナはキョトン顔となる。人にはあまり近しくない作りながらも、不思議と、その表情には愛嬌があった。


 「人間である俺が、お前らの上に立つ事に抵抗はないのか?」


 すると、気まずそうに小鬼ゴブリン豚頭魔オークの少女は顔を見合わせた。彼女らが何を言い淀んでいるのか、同じ魔属として理解が及ぶのだろう、リーダーらも苦笑いだ。

 思い切ったのは、やはり、吾武一の娘だった。


 「こーいち様が、人間ってコトは関係ないゴブ。

 自分たちより強い存在に従う、それが魔属ゴブ。東の奴らはどうか知らないけど、アタシたちはこーいち様に従うゴブ」


 「これは、本能ですので、恐らく、外の皆様も同じ答えをコウイチ様にすると思いますブヒ」


 「そうか・・・ちょっと考えさせてくれ」


 吾武一の了承を得てから腰を上げた紅壱は、小屋の外に出ると、広場に向かう。



 そこでは、まだ、大猪の解体に、吾武一から任された魔属らが苦戦していた。

 吾武一の娘の話から考えれば、動物の肉にありつけるのも珍しい事。なら、獲物を捌く技術が足りないのは仕方のはない事と言える。しかも、ゴブリンらが使っている刃物は、手入れもろくにされていない。

 やれやれ、と頭を掻いた紅壱は腰のベルトからサバイバルナイフを抜くと、指を軸にして回転させながら、魔属らに歩み寄っていく。足音と言うより、気配で彼の接近に近づいたのだろう、全員が怯えを孕んだ顔で振り向き、強烈な魔力の正体が紅壱と知って、安堵の表情に変じる。

 「いいから」と、紅壱は平伏しようとした彼らを手で制す。


 「まず、血抜きだ」


 紅壱は近場にいた、腕力と体力のありそうなゴブリンとオークに森まで猪を運んでくれるよう、頼む。

 小鬼ゴブリン豚頭魔オークが大猪をどう持ち上げて運ぶか、話し合っているのを一瞥してから、紅壱はコボルドに、それなりに高い木の根元へ、適度な大きさと深さの穴を掘るよう、スケルトンには薪を集めてくるよう、指示を出す。


 

 ゴブリンとオークが協力し、大猪が穴が掘られた木の近くまで運ばれる。

 まるで幹に足裏を貼りつかせ、駆け上がるようにして木を登った紅壱は、手持ちのワイヤーと村にあった古い縄を握ったままで、何の躊躇いもなく、3m近い高さから跳び下りた、。

 「!?」思わず、ゴブリンらは目を覆ってしまう。

 しかし、紅壱が怪我をする事はなく、彼の足が地面に付くと同時に、重量級の大猪は吊り上げられる。

 ホッとしている魔属らに微苦笑ほほえみ、紅壱は幾度か、ロープを引いて、枝が折れないのを確かめる。羅綾丸から貰ってきた糸も加えたおかげで、縄の強度は上々だ。しかし、紅壱には気になる点もあった。


 (随分と頑丈な木だな・・・・・・呪素の影響もあるのか?

 何にせよ、これで家を建てりゃ、大抵の事じゃ壊れないな)


 住人らは次、彼の手を煩わせないよう、熱心に紅壱の滑らかな手つきを見つめ、プロセスを頭の中に叩き込もうとする。

 巨木の枝にぶら下げられる大猪に、紅壱はおもむろに両掌を合わせた。魔属らは、彼の行動に眉を寄せるも、何となく、彼に従った方が良さそうだ、と目配せし、紅壱の後ろで戸惑いながら両手をくっつける。

 自分らの腹を満たし、血肉になってくれる大猪に感謝の念を捧げると、紅壱は何の躊躇いもなく、首にナイフで切れ込みを走らせる。バクッ、と首に裂け目が開くと、そこから夥しい赤い液体が溢れ、コボルドの掘った穴へ注がれていく。この穴は、あとで土で埋めておかせるつもりだった。


 「血抜きが終わったら、皮剥いで、捌く。内臓は・・・今回、食べるか」


 「ありがとうございますボル」


 「助かりましたホネ」


 「いや、俺も頭スッキリさせられた。

 礼言うのは、コッチだ。サンキュウな」


 やはり、魔属らは格上である紅壱から感謝の意を示されて、驚きを露わにしてしまう。

 だが、一つの決意を固めた紅壱には、彼らの狼狽も目には入っても、気にならなかった。

 紅壱と契約している事により、五体の霊属は、主たる彼が意図的に拒まない限りは、見えている者が見え、聞いている話が聞こえ、なおかつ、彼の心も察せる。なので、全員が紅壱が何を決断したのか、それを理解していた。

 羅綾丸と奔湍丸は無反応。風巻丸は翼を広げてテンションを上げ、翠玉丸は祝うように長身を左右に躍るように揺らす。紅壱が力を得る事が気に喰わない雷汞丸だけは不服そうに、紅壱が小屋の中にいる間に、狩ってきたらしい猪の頭蓋を噛み砕き、脳漿を激しく咀嚼していた。


 

 「お前ら、俺はお前らのリーダー、いや、王になるぞ!!」


 (主と王、点があるかないか、その違いだけだ。

 コイツらの生命と運命を預かって戦うってトコは、さほど変わりはしねぇんだ!!)


 自分でもメチャクチャだと思う理屈で、無理矢理にこじつけ、道理を通した紅壱。


 「その言葉、お待ちしておりました!!」


 紅壱が小屋に戻ってくるなり叫んだ決意表明を聞き、四種族のリーダーらは、すぐさま、敬純の姿勢に入る。その場にいた少女二人も、大人らに倣った。


 「では、すぐに全員へ、この旨を知らせましょう」


 「待て、吾武一。まだ、俺が王になる事は、他の奴らに知らせなくていい」

 

 「WHY?」


 「――――――・・・・・・個々の力が低く、協調の意識も乏しいからですね、王」


 弧慕一の深い読みに、輔一も納得したようだ。その通りだ、と紅壱は小さな拍手を、聡明な部下に贈る。

 体格の小ささ故に、仲間のいるラインから少し引いて、物事を冷静に計り、鋭い推察と的確な指摘をしてくれる弧慕一のような存在がいる、これは、王になる、その決断を下した紅壱からすると、実にありがたいし、心強かった。


 「確かに、Bossが導いてくれる存在になってくれた事で気が大きくなり、他の種族に喧嘩を売るような軽率な行動に走る者が出るかも知れないね」

 

 「うーむ、オラたち、オークは血の気が多いから、ありえる」


 太い腕を組み、逞しい首を傾けた奥一だったが、思う所があるらしく、緊張しつつも、紅壱に自身の意見を率直に述べる。


 「だけども、他の種族、この辺りだと、耳長の奴らだけども、あいつらにナメられないためにも、先制攻撃を仕掛けるのも大事だと思うだ、タツヒメ様」


 「奥一、お前の言いたい事も理解できる。

 先手必勝、それは大事だ。しかしな、王になって、お前らの命を預かるには、慎重に行きたい。

 仲間を増やすにしても、基本的には会話による交渉で、だ。暴力が生む今日は胃による支配ってのは、哀しい結末しか生まないからな。

 もちろん、やられたらやり返すつもりではいる」


 オークより遥かに好戦的な笑みを見せる紅壱に、奥一らは頼もしさを覚えると同時に、身が竦んでしまう。


 「俺が王になるって発表するのは、個々の自分の身を守る能力がある程度まで育って、生活の基盤がしっかり整って、余裕が出来てからだ。

 それまでは、他の魔属への手出しは、原則的に禁止にする。破ったら、俺が直に罰を与える」


 紅壱の言葉に、全員が頷くも、表情には「例外がある?」、そんな当然の疑問も浮かんでいた。


 「しかし、秘匿にし過ぎるのは、これで問題だからな。もう少し、真実を共有する頭数を増やす」


 そうして、紅壱は小屋の外を指す。

 

 「お前ら、自分の所のナンバー2、右腕と言っても良いだけの実力があるヤツを一体だけ、選んでくれるか?」


 畏まりました、と四体はすぐに動く。紅壱を王と担ぎ、幹部として支える事を決意してから、自分の補佐に相応しい魔材の目星を付けていたのだろう、彼らに迷う素振りは無い。

 魔属は名こそ持たないが、特徴はそれぞれにある。また、「思念伝達」、このスキルが部族間にあるので、言葉にイメージを乗せて伝える事が出来るようだ。弧慕一と輔一も力を付けたので、他種族のメスに連れてきてほしい次席を伝える事が出来るようになっているらしい。


 「吾武一の娘と、オークの姉ちゃんも、コボルドとスケルトンのメスを纏めている個体に声をかけて、ナンバー2と一緒に連れてきてくれ」


 紅壱の言葉に、つまり、自分らはメスのリーダーとして認められた、と理解した二体は、しばらくの間、呆けていたが、「おーい、どうした?」と紅壱に顔を迫られると、すぐさま、我へと返り、「すぐに!!」と、足をもつれさせながら、小屋を飛び出す。


 「待っててください、アバドンさん。

 俺は、ここでアンタの部下を増やす。俺も力をつける、もっと。

 だから、今は安心して、体を休めていてください」


 届かぬであろう、けど、伝えたくてしょうがない覚悟の言葉を、あえて口から言葉として出し、紅壱は己の退路をきっぱり断つ。


 紅壱とリーダーらが、これからの事を話し合って二十分、吾武一の娘は、リーダーたちが確固たる自信を持って、紅壱に推挙できる己らの腹心を連れて戻ってきた。

 吾武一が選んだのは、紅壱の予想通り、向上心は一人前の金髪ゴブリンの兄であった。

 奥一の右腕は、腰帯に数個の金槌をぶら下げているモヒカン。

 弧慕一に選ばれたのは、数少ないメイジの一匹で、両目がアメジストを連想させる色合いだった。魔力がこの時点で相当に高いので、名を与えた時の成長が楽しみだ。

 輔一の眼鏡に適ったのは、白と言うより灰色がかった骨のスケルトン。物静かな雰囲気を携えており、修行者のような印象を受けた。


 「ふむ、全員、悪くない面構えだな」


 「ありがとうございます」


 紅壱は褒めたつもりだったが、吾武一らに連れてこられた者らは、緊張しているのか、それとも、彼の存在感に当てられてしまっているのか、頭を下げたままだ。


 「連れてきましたブヒ」


 続いて、豚頭魔オークの少女に連れられ、各種族のメスを纏めている個体もやってきた。

 メスのコボルド、コボルナは、どうやら、メスのオークが道具を借りた者らしく、他の個体より目に理知的な光が宿っている。緊張はしているものの、腹は据わらせてきたようだった。

 メスのスケルトン、スケルトナは、骨であるので、専門的な知識がある者でなければ、見た目からはオスとメスの区別が分かり辛い。だが、使い込んだ短弓を装備している事から、実力は兼ね備えているようだった。


 「足を運ばせちまって、すまないな」


 「いえ、ご主人様の呼びかけがあれば、アタシはどこへでも駆け付けますゴブ!」


 これから、紅壱を王として崇めるからだろう、吾武一の娘は、先ほどまでの馴れ馴れしさが嘘であるかのような態度で跪く。しかし、無理しているのが丸分かりであった。


 「・・・・・・別に、普通にしていいぞ、吾武一の娘」


 「あ、じゃ、そうするゴブ」


 途端にフランクな態度になった彼女に、吾武一の拳骨が落とされかけるも、さすがはお転婆娘、父親の放つ殺気を先読みし、拳を躱す。娘の頭に瘤を作り損なった、吾武一の打ち下ろしの右は地面を殴り、小屋全体が小刻みに揺れた。


 「吾武一、構わねぇよ。

 俺も、変に畏まれる方が、居心地悪いからよ」


 紅壱に「許してやれ」と言われてしまっては、吾武一は二発目を繰り出せない。苦虫を噛み潰したような表情で娘を睨み、程ほどにするように、と視線で叱責し、あまりの気迫に動けなくなっている部下たちに「見苦しい所を晒した」、そう詫びる。


 「さて」


 咳払いで、面々の注目を己へ集める紅壱。


 「全員が村に到着した時に、吾武一が紹介してくれたが、一応、もう一度、名乗っておく。

 辰姫たつひめ紅壱こういち、と言う。見ての通り、虚弱貧弱無知無能なる人の子だ。

 突然で吃驚すると思うが、今日からお前らの王にならせてもらう」


 反対の者はいるか、少しばかりの不安を瞳に滲ませ、紅壱は反応を窺う。

 吾武一らに、何も聞かされずに連れて来られた者らは、事態急変に驚きが隠しきれなかった。しかし、紅壱が無言で、己たちの答えを待っているのだと感じ、すぐさま、行動に出た。


 「身命を賭し、仕えさせていただきます、王様!!」


 安堵を押し殺し、紅壱は仰々しく頷き、胸を張る。


 「よろしく頼む」


 こうして、辰姫紅壱の「獄皇」としての快進撃は始まる。

 しかし、王となる、と自分で決めたからには、その立場に合った仕事はせねばならない。


 先だって、吾武一らにも話した自分の考えと、今後の方針を告げた紅壱。

 彼の決意表明が一段落したタイミングを見計らい、臆せぬ吾武一の娘は手を挙げる。


 「原則的に戦いは挑まないって、さっき、コーイチ様は言ったけど、どういう時なら戦っていいゴブ?」


 その質問は予測していたので、紅壱の返答に躊躇いはない。


 「戦っていい、と言うより、売られた喧嘩を買っていい場合だな、これは」


 そう前置いたうえで、紅壱が立てたのは右の人差し指、中指、薬指の計三本。


 「まず、一つ、これは当たり前だが、自分の命が脅かされた時だ。

 正当防衛って言い換えても良いな」


 紅壱が、右の人差し指をピコピコと動かしながら告げた条件に、吾武一の娘らは首を縦に振った。


 「二つ目は、仲間が危機的状況に陥った時。

 一つ目もそうだが、相手が、こっちを殺す気の時に限り、命を奪う事も有りとする」

 

 一つ目と二つ目の条件を反復し、吾武一の娘は再び、質問する、「三つ目は何ゴブ?」と。


 「何だと思う?」

 

 彼女は質問に質問で返されるのは嫌いな性質であったが、不思議と紅壱にされると苛立ちを覚えないようで、吾武一の娘は困ったように首を捻る。


 「縄張りに侵入された時ブヒ?」


 「財産を奪おうとする輩が出た時かもしれないボル」


 「・・・・・・Lordを馬鹿にされたら、ぶち殺しても良いと思うホネ」

 

 それゴブ、と声を張り上げた吾武一の娘は、正解ゴブか?と煌めかせた瞳を紅壱に向ける。


 「お前らの、俺を王として尊敬してくれるのはマヂに嬉しいが、俺は悪口なんて気にしないぞ。むしろ、お前らが貶された方が、俺はプッツンしちまうだろうな」

 

 「お気持ちは嬉しいですが、王が臣下を詰られた程度で、喧嘩を売る方が問題かと」

 

 弧慕一の忠告に、「俺は本気だぞ」と目で言った上で、「分かってるさ」と口では言う。さすがに、あからさまではないが、弧慕一は疑いの視線を向けたくなる。

 今後も、彼は他の幹部だけでなく、仲間と部下想いが過ぎる王を止めるのに、気苦労を重ねる事となるのだが、やはり、誰も予想してはいない。


 「まぁ、今出た意見も、まるっきり間違いって訳でもない。

 喧嘩を買っていい三つ目の条件、それは・・・テメェの誇りを穢された時だ。

 これは、相手にこっちの命を奪う気があろうがなかろうが、容赦しなくていい。

 全力で獲りに行け、生命タマを」


 晴れ晴れとした笑顔で、魔王の依代と納得せざるを得ない威圧感を放たれ、彼らは一瞬で汗だくになる。何せ、種族進化している四体ですら、気が遠くなりかけたほどだ。ナンバー2と、少女らなど半ば失神してしまっている。

 お前らが傷つけられたら、しっかりお返ししてやる、と言ったばかりなのに、自分が脅かしてどうする、と紅壱は天を仰いだ。同時に威圧感が霧散し、皆の意識が明白となる。


 「誇りと言うのは、どういうものでしょうか?」


 頭を振り、かかっていた薄い霞を振り払った吾武一の質問に、紅壱は厳しい顔となる。


 「それは、お前ら次第だ」


 「アタシ達次第?」


 「誇りなんてのは、人に言われて決まるものじゃない。気付いたら、自分の中で出来上がっているもんだ。

 縄張りや財産が、その誇りである奴もいるし、人より優れている何かが誇りの奴もいれば、尊敬できる奴に仕えている事が誇りの奴もいる。大体、その誇りってのは、他人からすると、『え、それが?』と驚かれる物だ。

 けど、他人の理解が得辛い事こそが、最期の一瞬になっても、自分の闘争心を支えてくれるもんだ」


 紅壱の言葉に、吾武一らは自分たちの誇りとは何だろうか、と真摯な表情で思い悩み出す。


 「そんな誇りが穢されるような事があったら、黙っていちゃならねぇ。

 どんなに不利でも、相手に立ち向え。

 戦って負けたのならば、俺はそいつを誇りに思うだろう。

 もちろん、勝って帰ってきたなら、もっと誇れるけどな」


 思っていたより、吾武一達が、自分の言葉を真剣に考えてくれているものだから、紅壱の方が戸惑ってしまう。


 「まぁ、そんな難しい事でもない。簡単に言えば、キレ所、逆鱗、喧嘩を売る理由になるもんだ、誇りってのは」


 「タツヒメ様の誇りは、魔王の一柱をその身に宿している事でしょうか?」


 「それは、誇りと言うより、自信だな。

 俺にとっての誇りは、友情、仲間意識だ。こんな俺に力を貸してくれる奴ら全員が、俺の誇りだ。そんな仲間のためなら、俺は世界も敵に回せる」


 全員、その言葉に感極まってしまう。もちろん、紅壱の中では、修一、瑛ら生徒会メンバーも大事な仲間なので、いつか、時が来たら、共に戦えればいいな、そういう甘っちょろい考えもあるにはあった。そこも、彼の良い所だろう、王としては如何せん、温いにしろ。


 「いいな、お前たち、自分の命、仲間の命、自分の誇り、それが奪われそうになった時だけ、全力の戦いをしろ。

 戦うには勝て、その上で、生きる事を第一に考えろ。

 俺がお前らに下す命令は、たった一つ、無駄死にするな、それだけだ」


 「はい!!」と、声が綺麗に重なった事に、紅壱は満足げに笑う。


 (さぁ、国興しが始まるぞッッッ)

突然の懇願に、面食らった紅壱

しかし、彼は吾武一らの本気、他のゴブリンたちの顔を見て、王となる事を決断する

各種族のリーダー、ナンバー2、牝の纏め役を前にして、紅壱は自身の決意を語るのだった

新たな誇りを得た紅壱、彼は王として、どう成長していくのか?

様々な困難が立ちはだかるだろう、手強い難敵も出現するだろう

しかし、苦難上等、紅壱は危険な状況ほど燃え、成長する男だ

これからの展開に、乞うご期待!!

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