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とある生徒会長の本音は日誌だけが知っている  作者: 『黒狗』の優樹
生徒会の火鼠捕獲作戦
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第百十三話 火鼠(fire rat) 生徒会メンバー、協力して火鼠を捕獲する

愛梨と魚見へ、シュークリームの作り方を指導した紅壱

彼は、意中の相手である瑛へ、自らが作った菓子を差し入れた後、森の中に向かった

魔王の肉片が封印されている祠と正対し、紅壱は、必ず、全てのパーツを集め、復活させる、と宣言した

名も姿も知らぬ魔王を復活させる、その目的は、アバドンが天使へ戦争を仕掛ける際の戦力を強化させるため

自分達を従える、傲慢な発言に、紅壱を見守っていた、もう一柱の魔王は好感を抱き、罰を与える事なく、その場を後にしたのだった

 辰姫紅壱と矢車修一の友人に、西尾巧が加わった。

 辰姫紅壱に太猿愛梨と竿尾魚見が、シュークリーム作りを教えて貰った。

 辰姫紅壱の差し入れたシュークリームに、獅子ヶ谷瑛が大喜びすると同時に惚れ直した。

 そして、辰姫紅壱が封印の祠に向かって宣言した、など多くの事が、その日は起こった。

 しかし、夜こそが、都会の蔭と人の心に潜む存在の活動時間だ。


 「メグ先輩、行ったっす!!」


 「メイちゃんっっ」


 「了解!! ・・・大神さん、そっちよ!!」


 「・・・・・・」


 「OKっっ、辰姫、今だっっ!!」


 他のメンバーが予定通り、自分が待機まっていた地点まで、獣型の霊属を追い込んできてくれた。

 瑛が自分の名を叫んだ瞬間、鉄塔の上で、ジッと動かず、気配を完全に殺していた紅壱は、一切の躊躇いを見せず、バンジージャンプを決めた。

 赤い塊は、上から凄まじい勢いで迫ってくる紅壱へ気付き、攻撃を繰り出そうとした。しかし、それが、ガラス程度なら十秒で溶かせる火を噴くよりも迅速はやく、紅壱のグローブをはめた手は身動きを封じていた。


 「火鼠カソの捕獲完了っっ。

 皆、ご苦労だった!!」


 満面の笑顔でハイタッチを決める生徒会の面々。


 「これで、この一帯で発生していた、連続不審火事件は解決だ」


 「あのー、会長、ヘルプミー・・・・・・」


 燃える鼠を両手で掴んでいる為、足首の結び目を自分で解くことの出来ない紅壱。

 ハイタッチを決めている面々を見下ろしながら、地上から10mの高さで、振り子のように小さく揺れるしかない。

 しばらくは、喜びに水も差せないのでぶら下がったまま、その感情を共有していたのだが、いよいよ、頭に血が上ってきたか、視界が混濁しそうだった。


 「す、すまない、すぐに切るぞ!!」


 紅壱のか細い声に、ひどく慌てた瑛は愛刀の柄を握りしめる手へ力を込めながら、呪文を唱えた。


 「エリッソ・グランキオ・クルヴェット・フンマー」


 瑛が刀剣の切れ味を高める呪文を唱えたので、恵夢は彼女へ、ある効果を齎す術をかける。


 「グロース・グラン・コンプレート・デービル」


 恵夢の補助系の魔術で跳躍力を強化した彼女は、地面を一度、蹴っただけで、宙にぶら下がっている紅壱の元へ到達する。


 「シッ」


 そして、紅壱の足に巻かれているロープへ、愛刀を一振りした。

 彼女の気迫にも耐える名刀は、紅壱を吊っている白いロープを、見事に両断・・・・・・できなかった。


 「な!?」


 紅壱に対し、ドヤ顔するつもりでいた瑛は、まさかの事態に驚きの声を発してしまう。

 驚かされながらも、どうにか、無事に着地した瑛は、すぐさま、友人に詰め寄った。愛梨は、危機を察知し、逃げようとした。しかし、恵夢が、自慢の巨乳で彼女の顔を受け止め、逃がさない。


 「おい、エリ、あれは市販のロープじゃないのか?」


 「あー、悪い。

 備品を切らしちまってたから、紅壱の蜘蛛が吐いた糸を編んだんだ」


 その言葉で、瑛はまたも絶句した。愛梨が、勝手に、紅壱へパートナーを召喚させていた事も問題だが、それすら霞むほどの驚きだった、それは。

 かつて、魔属・亜人型であるアラクネの放ってきた糸であれば、気合で切れる威力で放った先程の斬撃。

 アラクネの糸と言えば、その耐久性の高さから防具の素材として絶賛される。

 アラクネの糸で編んだ服は、セラミック製の盾に劣らぬ防御力だ。

 通気性や保温性もいいので、『組織』に籍を置く者なら、肌着として一着は所持しておきたい一品だが、瑛が本気で放った斬撃の前では鎧としての働きを為さない。

 にも拘わらず、紅壱の蜘蛛が吐く糸を切る事は叶わなかった。

 さすがに、100km/h近い速度でぶつかったので、糸は大きく押されはしたが、その威力は見事に吸収されたようで、紅壱の体はほぼ揺れなかった。


 (一体、どれだけ頑丈なんだ・・・いや、今は、自信を喪失している場合ではない。

 すぐに、辰姫を救助たすけねば!!)


 不安が過ぎる頭を激しく左右に振った瑛は、再び、刀に魔力を注ぐ。

 今度は、単純に魔力を込めて、切れ味を高めるのではなく、火炎属性へと呪文を唱えて変質させる。

 そして、朱色に染まった刀を彼女が真一文字に振り抜くと、燃える刃が糸に向かって放たれた。

 本来であれば、羅綾丸の糸には、高い耐火性が付加されているのだが、如何せん、まだ、紅壱が魔力の操作に慣れていなかったため、糸は単に「よく伸び縮みし」、「切れにくい」だけの代物だった。

 普通に切られただけであれば、紅壱も空中で体勢を整えられ、華麗な着地を決められただろう。けれども、燃えた事で糸は切れると言うより、千切れる形で、彼を解放した。

 予想よりもいきなり、重力に引っ張られ、紅壱はギョッとする。

 それでも、身体能力が異常に優れている彼であれば、ギリギリで地面に抽象画を描かずに済んだだろう、咄嗟に瑛が真下で受け止めようとしていなければ。

 

 「!?」


 空から落ちてくるのは、いつも美少女とは限らない。

 体を張ってキャッチしようとするのは、常に色男とは限らない。

 けれど、性別が逆であろうと、このシチュエーションはラブコメの神様のお気に入りであり、起こる事は変わらない。

 思わず、目を覆ってしまった面々には「ドサン!!」、そんな音しか聞こえなかった。しかし、紅壱と瑛の鼓膜に響いたのは、互いの唇が優しく重なり合う、静かな、それでいて、肉感的なモノだった・・・・・・ら、まだ良かったのだが、偶然とは、時に笑うに笑えない、面白い状況を発生させるものだ。

 大地に背を着いている紅壱の顔の上には、軽く湿っている純白の下着だけがあった。

 紅壱の、夏煌にも負けない嗅覚を誇る鼻をくすぐっていたのは、汗の匂いだけではなく、瑛の蜜壺から溢れ出している甘露の香りも混じっていた。

 そして、結果的に、紅壱をクッションにした為、ほぼ無傷で済んだ瑛の顔は、紅壱の顔に埋まる形となっていた。

 瑛は最初、自分の顔に当たっている、熱を帯び、妙な硬さのある太い棒が何なのか、分からなかった。

 だが、経験がないだけで、紅壱を好きになってからは、家族の目を盗んで、そちら方面の知識も積極的に学習まなんでいた瑛は、すぐに、己が顔を密着くっつけているこれが、紅壱のイチモツだ、と理解し、同時に、自分、いや、自分達が、見ようによっては蟹座のマークとも取れる体勢になっている事に気付いた。

 もしも、頬を赤らめた一同が息を飲む音で、緊張と動揺による静寂の均衡を崩していなかったら、瑛は湧き上がった性衝動に一匹の牝と墜ちていたに違いない。

 紅壱のズボンのチャックを器用に、一気に歯で噛んで下ろし、下着を押し上げていた灼熱のマグマを噴き上げようとしていた活火山に貪りつこうとしていただろう。

 我に返った紅壱はすぐさま、瑛の体の上から退き、誠心誠意の土下座を魅せようとした。だが、離れ際、瞳を潤ませ、頬が紅潮し、息遣いも上気している瑛に心臓を鷲掴みにされてしまう。一匹の雄となった紅壱は、瑛の唇を奪うだけでは済まなかっただろう。

 皆の前で唇を重ねようとした二人を阻んだ者、それは他の者とは異なる感情で、頬の色を赤くしていた鳴だった。


 「ぶっ殺す!!」


 鬼と化した鳴は、受け入れる気満々でいる瑛に顔を近づけようとしていた紅壱へ、双刀を構えて襲い掛かる。

 刀身は、威嚇やハッタリではなく、本気で紅壱の首を刎ねるつもりであるのが一目瞭然である殺意が籠り、それは眩い光となって表れていた。

 油断してしまっていた紅壱の鍛えられている頸部くびへ迫り詰まる、閃光の凶刃。









 


 思い返せば、数か月前、あの時が、最初にして唯一、そして、最高のチャンスだったのよね。

 あの時、私が、アイツの首を斬り飛ばせていれば、こんな大惨事は起きなかったのよ。

 絶好のチャンスを掴めず、史上最低最悪の魔王を殺せなかった私が、今、目の前に広がる光景の全責任を負うべきだわ。だから、私が片を付けなきゃいけない。

 もっと、冷静に憤怒おこっていたのなら、アイツの息の根は止められていたはずなのに。

 認めたくはないけど、あの時までだった、私がアイツよりも強かったのは。

 私だって、血を吐くくらい、骨が何本も折れても、頑張り続けた、会長の為に。

 けど、アイツは、涼しい顔をして、私の横を駆け抜けていった。

 いつも、会長の、すぐ隣にいたのは、私じゃなく、アイツだけだった。

 そもそも、覚悟も足りていなかった、私は。

 会長を、アイツよりも、心から愛しているのは私、豹堂鳴の方だったんだから。

 会長に嫌われようと、憎まれようと、怨まれようと、殺意を向けられようと、私は構わず、アイツを、辰姫紅壱を亡き者にすべきだったのに。

 辰姫紅壱が、ほんの一分前ではなく、火鼠を皆で捕まえ、会長に不埒な真似をしたあの夜に死んでいたのなら、世界は終わりを迎えずに済んだのに・・・・・・

 取り返しがつかない事は百も承知だけど、後悔は、心の中で渦巻く。

 それでも、私は諦める訳にはいかない。

 会長を止められるのは、もう、私しかいないんだから。

 会長を愛している私だけが、会長を止められる。

 

 「会長、もう止めてください!!」

 

 私は喉も裂けんばかりの声で、会長を制止しようとした。

 皮一枚で腕が繋がっている右肩からは血が止まらなかったが、痛みのおかげで頭に靄はかからず、意識はハッキリしていた。

 今一度、私は上空に浮かんでいる会長に、この惨劇の幕を閉じてくれるよう願い、穴の開いている腹に力を入れて叫んだ。

 今なら、まだ間に合うはずだ。間に合わせなきゃいけない。

 高層ビルやマンションは降り注ぐ火球や巨石、氷塊で瓦礫と化し、多くの人間が押し潰され、生き埋めにされているだろう。

その夜、瑛が率いる生徒会メンバーは、近隣の住民を不安に陥らせていた、連続不審火事件の犯人、いや、犯鼠を捕まえるべく、動き出す

見事な連携によって、生徒会らは燃える鼠、火鼠の捕獲に成功する。もちろん、決めたのは紅壱だ

鉄塔から飛び降り、宙にぶら下がる紅壱を瑛は助けたのだが、この時、ちょっとHなラブコメのお約束が発生する

甘酸っぱい雰囲気を纏う紅壱と瑛、この二人をイイ感じにさせてはならない、と鳴が動く

そして、時間はやや進む、最悪の事態が起きてしまった日に

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