媚薬
無理矢理な場面があります。苦手な方はお気をつけくださいm(__)m
「・・・くぉらっ!お前らっ!!」
「あれ?やっと解放されたのかい?」
「・・・うわ~、全員で化粧直しか・・・」
周りを囲まれ、強迫すら感じていた姫君たちが一斉に化粧直しに連れだって行ってくれた為、やっとコウキはミルアとユウヒを見つけて戻ってこれた。
「ご苦労だったねぇ。ちょうど今ミルアの苦労話を聞いてたところだよ」
「ああ。フォレスタの端でお前とリンと出会ってからの私の武勇伝を・・・」
「んな事はどうでもいいっ!リンは!?さっきまでバカ王子といただろがっ!」
「え?」
「おや、ちゃんと見てたんだ?」
姫君に囲まれて持て囃され、ちっともこちらを見ていないようでちゃんとチェックしていたのかと、ユウヒとミルアは感心する。
「リンなら、さっきヒエン王子と一緒に出て行ったよ?」
「手、繋いでたな」
ニッコリ笑って教えられたコウキはキレる。
「お前ら知ってて黙って見てたのかよっ!?」
怒鳴るコウキに責められたミルアとユウヒは、逆にコウキを睨んだ。
「あのなぁ、リンがどんな気持ちでヒエン王子に付いて行ったと思ってるんだ!?」
「僕はちゃんと言ったよ?ちゃんと掴まえててあげなきゃダメだよって」
「・・・っ!」
そう切り返され、コウキは一瞬言葉に詰まった。
「早く探しに行けば?」
そうユウヒに言われたコウキは、黙って大広間から出て行った。
「・・・少し荒療治だったか?」
ミルアの言葉に、ユウヒはくすりと笑う。
「いい薬だと思うよ」
さらりと言ったユウヒに、ミルアは目を瞬いた。
「・・・もしかして、怒ってるのか?」
ユウヒはう~んと唸った。
「怒ってるというより、もどかしい・・・かな?それに、コウキにはしっかりしててもらわないと、リンに関して少し心配なことがあるんだ」
「心配なこと?」
眉を寄せて不安げな瞳をするミルアに、ユウヒは少し考えてから真面目な顔を向けた。
「まだフォレスタの城にいるとき。君とコウキが来る前の晩にリンと話してた時にね、地上の事に本当に真剣になるリンに僕は聞いたんだ。どうしてそこまで一生懸命になるんだって。・・・リンは、こう答えた。『今度こそ自分の力を人の為に使いたい』って」
「・・・今度こそ・・・?」
呟いたミルアの言葉に、ユウヒは頷いた。
リンの言葉は、まるで・・・。
ユウヒはひとつため息をつく。
「ともかく、そういう事があったんだ。リンの過去に何があったかはわからないけど、心配だ」
ミルアも頷いた。
「リン・・・自分のことあんまり言わないから・・・。リンが怒ったり泣いたりするのはコウキの前だけだ・・・」
「そこんとこ、ちゃんとわかってもらわないとな~。この旅も、守護神を治めて回るだけじゃ終わらなそうだし・・・」
『黒い月』とやらの存在も出て来て、この先どうなるのかわからない。
要となるコウキとリンには、しっかりしてもらわなければならない。
世話の焼ける二人だと、ミルアとユウヒは揃ってため息をついた。
「・・・だぁっ!くそっ!こんなだだっ広い城造ってんじゃねぇ!!くそ王子っ!!」
大広間を出るまでは冷静を装っていたものの、廊下に出たコウキはすぐに走りながら手当たり次第に扉を開けてリンを探した。
ヒエンが選んだドレスを着たリンが、ヒエンと一緒にいると考えるだけではらわたが煮えくりかえる。
姑息な手段の得意なヒエンだ。
何を考えているのかわかったものではない。
(俺を呼べっ!リンっ!)
ナントカと煙は高い所が好きという法則に則り、コウキは上階への階段を駆け上がった。
「・・・んっ・・・ふぅ・・・っん・・・!」
朦朧とする意識と苦しい呼吸の中で、リンは強制的に与えられる感覚と戦っていた。
ただ、自分に触れる手の熱さや大きさに違和感を感じ、心に浮かぶのは嫌悪感だけだったが体が全く言うことを聞かなかった。
「・・・柔らか・・・」
リンの肌の感触を楽しんでいたヒエンは、一旦体を起こす。
「見たとこ、地上の女と同じだな。・・・反応も」
「・・・っ・・・ん・・・!」
手を伸ばされて遠慮なく触れられ、リンは身をよじる。
「んっ・・・んぁっ・・・ふぅ・・・んっ・・・」
「・・・・やべぇ、ちょっとマジんなってきた・・・」
そう言って吐息をついたヒエンは再び身を沈め、リンの口を封じていたハンカチをずらしてその唇に深く口づけた。
「っ・・・んんっ・・・ん~!」
(・・・嫌っ・・・違う・・・!)
匂いも、感触も、体にかかる重みも、リンが知っているものと全く違った。
必死に背けようとする顎を掴んで逃げられないようにし、唇を割って侵入してきた舌にリンは目を見開き、無意識のうちにヒエンを拒否してその舌を噛んだ。
「・・・って・・・!」
思い切り舌を噛まれたヒエンは思わず身を起こす。
その一瞬、リンの口が自由になった。
「や・・・『コウキ』ーーー!!」
リンの口から出た声にぎょっとし、ヒエンは慌ててリンの口を手で塞ぐ。
「ん~っ!んんっ!」
「・・・と、あっぶね・・・」
とっさに出た言葉が攻撃の言霊でなかったことにヒエンはホッとした。
言霊使いの口を自由にするなんて少し調子に乗りすぎたと反省したヒエンが、もう一度ハンカチをリンの口に付けようとした時。
突然、リンの体にかかる重みが消えた。
間髪いれずに聞こえたのは、何かを殴る音。
そして、ドサッと床に倒れる音と共に、剣を抜く音が聞こえた。
「・・・だめーーーーーっ!!」
ザンっ!!
叫んだリンの声と共に、何かを貫く音が聞こえた。
「・・・っ・・・」
リンには、力の入れない体を無理矢理起こし、落ちるようにベッドから降りた。
すぐ目の前の床には、仰向けに倒れたヒエンと、その真上から剣を突き刺しているコウキの後ろ姿があった。
「・・・う・・・」
「・・・・二度とリンに近付くな。次は無い」
コウキの剣は、ヒエンの喉元の皮膚を薄く裂いただけで床に突き刺さっていた。
「・・・・く・・・・てめえっ・・・!」
ヒエンは歯を鳴らして呻いた。
今まで何度も戦ってきたコウキと、力も速さも全て段違いだった。
何の抵抗もしないまま、今殺されたも同然だった。
悔しくて歯を鳴らしたヒエンに構わず、剣を納めたコウキは体の向きを変えてリンの傍にひざまづく。
両手で体を支えるのが精一杯の様子で荒い息をつくリンを見、コウキはすぐさま自分の上着をリンに着せ掛けてその体を抱き上げた。
「・・・んっ・・・」
くたりと力が抜け、苦しそうに自分の胸に頭をもたせかけるリンを見たコウキは、ムッと眉をひそめてそのまま倒れているヒエンの胸の上にドシッと足を乗せた。
「てめえ、何か飲ませやがったな?」
氷のような瞳で見下ろされたヒエンは、ごくりと唾を飲む。
「・・・媚薬を少々・・・」
「ああっ?」
最大限に不機嫌な声を出しヒエンを踏む足に力を入れたコウキは、リンを抱き上げていて良かったと思った。
そうでなければ、もう一度剣で刺していたに違いない。
「解毒剤とかねーのかよ!?」
ぐりぐりと力を入れて胸を圧迫されたヒエンは、気まずく瞳をさ迷わせる。
「・・・え~と、普通なら2~3時間で効き目切れるけど、リンちゃんの場合効きすぎてるよーだし・・・」
普通なら気持ちが良くなるだけなのだが、リンはとても苦しそうにしていた。
コウキは眉を怒らせる。
「だから!薬はねーのかって聞いてんだよっ!」
「・・・お・・・」
「お!?」
「・・・男の体液・・・」
「・・・・・・・」
ボソリと聞こえたヒエンの声に、コウキはぴくりと頬をひきつらせた。
リンを一度ベッドに戻して、バキバキと指を鳴らしながら戻ってきたコウキに、ヒエンはびくりとした。
「・・・いかがわしいもん作ってんじゃねぇーーーー!!」




