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ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
ウェントゥスの旅
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エントリー

お久しぶりです(-_-;)

成り行きで格闘大会に参加するはめになるコウキ。

ミルアとユウヒの息もピッタリになってきました(^-^)

「と、いうわけでエントリーだっ!」

「・・・んあ?」

 中年の男に教えられた大会の会場は、石造りのコロッセオだった。

 小柄で華奢な女の子の宣言に、受付のいかつい男は眉をひそめた。

「おいおい嬢ちゃん。何の大会かわかってるか?お花教室じゃないんだぜ?」

 バギっ!!

 受付の小窓の脇の壁に素手で穴を空けられ、男は目を丸くする。

「・・・おいおい嬢ちゃん。これ、岩の壁・・・」

「エントリーするのは私じゃないっ!」

 威勢良く言った水色の髪の少女は後ろを振り返った。

 受付の男がつられてそちらを見ると、ニコニコと笑顔を浮かべた茶髪の青年が赤い髪の剣士風の青年をぐいぐいと引っ張ってくるところだった。

 その後ろを、肩ほどまで届かない位短くした黒髪の娘がおろおろしながら着いてきていた。

「・・・え~と・・・?」

 嫌がっているような赤髪の青年を受付の前まで引っ張ってきた茶髪の青年は、受付係の男の視線を受け、ニッコリと笑みを深めた。

「エントリーするのは彼です」

「だから嫌だっつってんだろうがっ!!鬼かお前らっ!!」

 笑顔と共に突き出すように受付の前まで持ってこられた赤髪の青年はそう怒鳴ったが、茶髪の青年も水色の髪の少女も聞いてはいなかった。

『エントリーで』

 そう声を揃えられ、受付の男は帳簿を取り出す。

「・・・まぁ、どんな奴でも出られるけど、腕に自信はあるのか?言っとくけど色んな奴らが出るからな。死んでも責任は取らんぞ」

 どんな強者や荒くれ者が出場するというのか、物騒な物言いをする受付の男に、茶髪の青年ーーーつまりユウヒと、水色の髪の少女・ミルアは胸を張った。

「大丈夫だ!」

「エントリー名は『戦荒らしの炎竜』で!」

「やめろっつってんだよっ!!むがっ!!」

 叫んだ赤髪の青年・コウキの口はすかさず二人がかりで塞がれてしまう。

 受付の男はぴくりと眉を上げた。

「・・・ほぉ~う?『炎竜』を名乗るたぁいい度胸だな」

 男はコウキの姿を上から下までじろりとながめた。

「・・・まぁいいだろ。本物だろうが偽物だろうが、出てみりゃわかる。その名を名乗ったこと後悔すんなよ?」

「むがっ!むぐぐっ!むがっ!」

 エントリーのナンバーをもらい、受付を済ませたユウヒとミルアは問答無用でコウキにナンバーのワッペンを付ける。

「・・・これでよしっ!」

「ぷはっ!よくねーよっ!出ねぇっつってんだろっ!?」

 自由を取り戻したコウキの抗議に、ミルアとユウヒはわざとらしく悲しい顔になる。

「・・・ひどいっ!お父さんの意気地無しっ!」

「そんな子に育てた覚えはありませんっ!」

「・・・・お前ら、キャラ崩れてんぞ・・・」

 うるうるの瞳で抱き合いながらこっちを見つめる二人に、いつの間にそんなに息ピッタリに仲良くなったんだとコウキはため息をついた。

 確かに、さっきの通りすがりの男の に、フォレスタやマール・モーリェから流れている者もいるという話を聞かされショックだったということはわかる。

 それに、守護神の情報を得る為にヒエン王子に近付くチャンスだということも、認める。

「・・・わかった。出りゃいいんだろ出りゃ。どうなっても知らねーからな?」

 ガリガリと頭をかきながら言ってくれたコウキに、ミルアとユウヒは顔を顔を輝かせた。

「・・・大丈夫なの?」

 それまで黙っていたリンは心配そうに口を開いた。

 ルールも何もよくわからないままにここまで来てしまったが、勢いだけで出場を決めて良かったのか不安だった。

「ま、人間相手は慣れてるからな」

 コウキの言葉にツキンと胸が痛んだリンの前で、コウキは自分の剣を鞘ごと外してユウヒに押し付けた。

「え?」

 キョトンとしながら剣を受け取ったユウヒに、コウキは受付の脇にある貼り紙を示した。

「ルール。予選は武器使用禁止だ」

 出ないだなんだと文句を言いつつもしっかり見るとこは見ているコウキに剣を託されたユウヒは微笑んだ。

(剣を預けてくれるってことは、少しは信頼してくれてるのかな)

「・・・責任持って預かるよ」

「壊すなよ」

 一言付け加えたコウキは、武器使用禁止と聞いて更に不安そうな顔になったリンを見た。

「よし、じゃあミルア。あっちで屋台が出てたから、飲み物とおやつでも買って観客席に行こうか」

「わーい♪おやつー♪じゃあコウキ頑張れよー♪」

 コウキとリンをちらりと見てからミルアを誘って背中を向けたユウヒの意図がわかり、コウキは渋い顔をした。

 少しの間だけ、二人きりにと気を効かせたのだ。

「・・・ったく。ミルアのやつアッサリおやつに釣られやがって」

 師匠に対する言葉は取って付けたような応援だけかと唸ったコウキは、そのままリンの顎を指で掬った。

「・・・!」

 人目を避ける、一瞬の口付け。

 びっくりして目を見開いたまま固まるリンに、コウキはニヤリと笑って見せた。

「んじゃ、行ってくる。ユウヒ達とはぐれんなよ」

 そう言って会場の出場者入り口から入って行ったコウキの背中を見送ったリンは、両のほほを手で押さえた。

 ミルアとユウヒを追うのに、顔が赤くなっていたら恥ずかしい。

 自分で触れた頬は、とても熱かった。

(・・・コウキのばか。頑張っても行ってらっしゃいも言えなかったじゃないのよ・・・!)

 心の中で悪態をつきながら、リンはくるりと体の向きを変えてミルア達の後を追った。

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