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ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
アイズベルグの旅
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寝室にて

 女の子達との入浴を済ませたリンが寝室に向かうと、そこは男の子達の協力を得てベッドを動かし、大人数で寝られり部屋になっていた。

 かと言って全員が寝られるわけではなく、こことあと二部屋に分かれて眠ることになる。

 おしゃまな女の子三人とミナギは、ミルアと。

 カイリと小さい男の子達は、ユウヒとハルアと。

 そしてコクワと少し大きい男の子二人が、コウキとリンと。

 なんとなく緊張しながら部屋に入ったリンは、すでに明かりが落とされていた為目を瞬いた。

 静かな寝息が聞こえることからして、すでに眠っているようだった。

 少しホッとしたリンの耳に、コクワの声が聞こえた。

「・・・母ちゃんっこっちだよっ!」

 ムクッと体を起こしたコクワの隣、ベッドの端側に一人分が眠れるスペースが空けてあった。

 そしてコクワの隣にコウキが大の字で寝ており、その片腕に男の子二人が腕枕して眠っていた。

 リンはそっとベッドに近づき、思わず口元をゆるめる。

 子供達は食事前からずっとはしゃいでいて疲れているのはわかっていたし、コウキにしても慣れない子守りに神経を使ったのだろう。

 だからこそ、コクワが起きていることに驚いた。

「コクワ、眠くないの?」

 静かにベッドに入ったリンをニコニコ見ながら一緒に横になったコクワは、伸ばされたコウキの腕にぽすんと頭を乗せて笑った。

「あのね、母ちゃんを待ってたんだよ。オレ楽しみにしてたんだもん」

 リンも、コクワに布団を掛け直してやりながら微笑んだ。

「そうよね。待たせてごめんね?」

「いいよっあのさ、ここ、ぽんぽんして!」

 コクワの意図を察して微笑んだリンは、コクワの胸元をゆっくりとリズムを取るように軽くたたいた。

 少しぽんぽんとするうちに、コクワはニッコリと笑った顔のまま眠りに落ちてしまった。

(眠いのに・・・頑張って待ってたのね・・・)

 川の字を楽しみにしていた心を思い、リンはコクワが寝てしまってもしばらくその寝顔を見詰めていた。

「・・・ん~・・・」

 さすがに男の子二人の頭を乗せているのは辛いのか、少しうなったコウキが腕枕を外してコクワの方に寝返りを打った。

(・・・それに比べて、この人はさっさと寝てるし・・・)

 さっきはあんなに情熱的なことを言ったくせにとため息をついたリンは、コウキの寝顔を見詰めた。

 月から地上に降り立ち、初めに出会った人。

 飄々としながらも、遠慮なく腹の立つことを言われ何度もケンカをしたが、本当はずっと傍にいてくれることに安心感を感じていた。

 初めて来た地上で、こうして知らない土地を旅して戦いを続けられるのは、コウキがいつもいてくれたからだ。

 振り返ればいつもそこに居て、支えてくれた。

 いつの間にか旅の主力になっていて、皆を引っ張るようになってしまったコウキ。

 困った人を放っておけず、頼られると断れない人。

 リンが月の民と知っていて、情熱的な気持ちをぶつけてくれた人。

(・・・ちょっと・・・いえ、かなり自分本位なセリフだったけど・・・)

 ハッキリ「好き」と言われたわけではなかったが、手にキスされた時のあの瞳には、抗えないものを感じてしまった。

 リンは、目の前に投げ出されたコウキの手を見つめる。

 まだ、先のことはどうなるかわからない。

 いつか、月に帰る時が来たら・・・。

 ーーーー故郷より俺を選べばいい・・・。

 コウキの言葉を思い出し、リンはなんとも言えない顔をして固まる。

 数度まばたきをしてから、リンはふっと体の力を抜いた。

 何をどう考えようと、まずは地上の守護神をおさめることが最優先。

 その為の旅なのだ。無事に地上に平和を取り戻すまでは、自分のことは後回しだ。

 皆寝静まった夜更け。

 誰も見ていないベッドの中で、リンはコウキの大きな手の指を一本だけ、きゅっと握った。

 そして、今の現状ではとても伝えることのできない言葉を、そっと呟いた。

「・・・好き・・・」


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