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ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
アイズベルグの旅
66/119

子供の村

 子供の言葉を聞いた一同は、呆然とコウキと子供を見比べた。

「・・・ホントだ」

「・・・同じ、赤髪だねぇ」

「・・・か、顔付きも、に、似てる・・・」

「・・・・・」

「ちっげぇよっ!!俺の子供じゃねぇっ!!」

 疑いの目で見られたコウキは全力で否定したが、その叫びは無視された。

「・・・コウキ・・・戦荒らしながら各地を転々と・・・」

「まさか、種も蒔いてたなんてねぇ・・・」

「も、もしかして、あちこちに子供が・・・」

「・・・・・」

「ちっがうって言ってんだろうがっ!!聞けよお前らっ!!」

 コウキの叫びは、やはり無視された。

 さっきからずっと無言の、リンの反応が一番怖い。

「父ちゃんっ!会いたかったよぉ~っ!」

 もう一度子供に視線を向けた一同は、顔を寄せ合ってヒソヒソ話す。

「ずっと放っぽってたんだな」

「知らなかったのかもよ?」

「・・・そ、それってヒドイ・・・」

「・・・・・・・・・・サイテー」

「くぉらお前っ!よっく顔見ろ!!お前の父ちゃんじゃねぇだろっ!?」

 ヒソヒソ勝手に話を作り上げられ、リンにまでボソリと冷たい言葉をもらったコウキは、足にくっついている子供を抱き上げて顔を見合わせた。

 力強い腕で持ち上げられた子供は驚いて泣き止み、間近でコウキの顔を見た。

「どうだ?違うだろ?」

 子供の顔が近くなり、少し優しい声で言ったコウキに子供はキョトンとした。

「・・・よくわかんない」

「わかんないって・・・」

 がくりとうなだれたコウキと、子供を見比べて、ミルア達は顔を見合わせる。

「・・・お母さんは?」

 そっと声をかけられ、子供はリンの方に顔を向けた。

「・・・母ちゃんっ!!」

「えっ・・・!?」

 パッと顔を輝かせてコウキの腕から飛び降りようとする子供に慌て、コウキは子供を落とさないように地面に降ろしてやった。

「母ちゃんだ!母ちゃんだ!」

「えっ!?ちょっと・・・!」

 まっしぐらに走り抱き着いてきた子供を、リンは驚いて受け止めた。

「・・・どういうことだ?」

 困った顔のリンに視線を向けられたミルアは呟き、その呟きに答えられずにユウヒとハルアは首を傾げた。

「・・・コクワっ!!だめだろっ!」

「その人達は違う人だよっ!!」

 コクワと呼ばれた子供が出てきた家から、12~13歳の男の子と女の子が走って出てきた。

 その声に、コクワはビクッとしてリンにしがみつく。

 一同の手前まで来て、少年と少女は速度を緩めた。

「・・・あんた達、誰だ?」

「コクワを返してっ!!」

 見知らぬ人間たちに警戒し、自分達は近寄れずに呼び掛ける二人に、コウキはため息をついて一歩前に出た。

「俺たちは見た通りよそ者。壁に覆われたこの国がいったいどうなってるか調べに来たんだ」

 その言葉に、少年少女は顔を見合わせた。

 ユウヒもコウキの隣に並ぶ。

「見た限り大人はいないようだけど、どうしたのかな?君たちの他に人はいるのかい?」

 コウキよりも柔らかな物腰と王子仕様の微笑みに、少年少女は少しだけ肩の力を抜いたようだった。

 少年の方が口を開く。

「・・・この村に残ってるのは、子供だけだ。大人達は皆、国を守ってる」

 その言葉に、コクワがぎゅっとリンの服を掴む手に力を入れたのをリンは感じた。

「守ってる・・・?」

 コウキ達の不信そうな表情にふんと鼻を鳴らした少年は続けた。

「見た通り子供だけだし、金目の物なんて無いからな。それでも良ければ、中入れば?」

 顎で家の方を示した少年に、コウキはふっと笑った。

「しっかり者の大将だな。もちろん金目の物なんかいらない。上がらせてもらっていいか?」

 少年がこの辺りの子供をまとめているのだろうと見当をつけ、一人前に扱って許可を求めたコウキに、少年はしょうがないという風に頷いた。

 少女の方も、少年が決めたのならと、少し警戒しながらも頷く。

「ほら、コクワおいで?」

 少女に呼び掛けられたが、コクワはリンの服を離さずに首を横に振った。

 困ったリンは、子供に目線を合わせる為にしゃがみこむ。

「え~と、コクワ?みんなでおうちの中に入りましょう?」

「・・・・・父ちゃんと母ちゃんも一緒?」

 すがるような瞳で見つめられ、なんと答えていいかとリンが考えているうちに、近付いてきたコウキがひょいとコクワを抱き上げて肩車した。

 急に体が浮いて驚きぎゅっと目をつぶったコクワだったが、おしりがしっかりとコウキの肩に落ち着くと、そっと目を開けて歓声を上げた。

「わぁ!高い高いっ!」

「怖くないか?」

「怖くないよっ!父ちゃんすげぇ!」

 きゃっきゃっとはしゃいでは、自分と同じ色のコウキの髪に嬉しそうに顎を乗せるコクワに複雑な顔をしながらも、少年と少女は一行を家の中へと誘った。

「・・・頭ぶつけないでよ?」

「はいはい」

 家の戸口を通るのに、長身のコウキの肩車ではコクワがぶつかってしまうと、コクワのはしゃぎぶりにハラハラしながら後ろをついてきたリンに言われ、コウキは腰を屈めて中に入った。

「ほ、ほんとに夫婦の会話みたい・・・」

 ハルアの呟きに、ミルアもユウヒも納得顔で頷いた。

「ものすごくしっくりくるな」

「僕たちの知らない間に子供まで作ってたんだからねぇ」

「違うっつの!」

「違うってば!」

 すっかりコクワを二人の子供扱いされ、コウキとリンは同時に叫んだ。

 わいわい言いながら子供たちの家に入った一同は中を見た。

 多少予想はしていたものの、その実態を見て絶句する。

 室内には10人ほどの子供達が身を寄せ合い、初めて見るよそ者たちに怯えていた。

 一番小さいのがコクワ、一番の年長が先ほど出てきた少年少女であるようで、他の子供も皆7~10歳ほどというところだろう。

「君たちだけで生活してるのかい?」

 思わず聞いてしまったユウヒの言葉に、年長の少年が短く息を吐いた。

「当たり前だろ。大人はいないんだから」

「・・・・・」

 返ってきたその答えと、やけに大人びた口調になんとも言えず黙り込んでしまった一同を冷めた目で見た少年は、腕を組む。

「それで?あんた達はどっから来たんだ?どうやって中に入ってきた?」

 その口調に口元をゆるめたコウキは、コクワを床に降ろして口を開いた。

「俺たちも聞きたい。聞いていいか?あの氷の壁は何なのかって」

 その質問に子供達の顔がさっと強張ったのを見て、コウキは続けた。

「・・・大人達はあの氷の中なんだろう?それがなんで『国を守ってる』ことになるんだ?」

 じっとコウキに見つめらた年長の少年は、耐えきれないように目を反らした。

「・・・こっち!来て!」

「えっ・・・!?」

「おいっ・・・!」

 突然コクワがコウキとリンの手を引っ張り走り出した。

「コクワっ・・・!」

 年長の少女も驚いて追いかけたが、コクワはそのままコウキとリンを連れて再び家の外に出た。

「こっちだよっ!」

「こら待てって・・・!」

「どこに行くのっ?」

「オレの家だよ!」

 なんだか逆らえない勢いを見せるコクワに付いて、二人はとある家の中に入った。

「コクワっ・・・!」

「コウキっリンっ・・・!」

「ま、待ってよミルアぁ・・・!」

 年長の少女を筆頭に、ミルアとハルアまでぞろぞろとコクワの家に入り、中を見渡した。

 しばらく誰も住んでいないとわかる、暗くひんやりとした空気だったが、コクワは迷わず暖炉の前に立った。

「・・・何があるんだ?」

 尋ねたコウキに抱っこをせがみ、抱き上げてもらったコクワは暖炉の上に飾ってある一枚の絵を指差した。

「あ・・・!」

 視線を追ったミルアとハルアは驚きの声を上げる。

「オレの父ちゃんと母ちゃんだよ」

 そこには、一組の若い夫婦と生まれたばかりの赤ん坊を描いた絵が飾られていた。

 赤ん坊を抱いた妻の肩に手を置いて微笑む長身の男は、コウキと同じ赤髪だった。

 そして、大事そうに赤ん坊を抱いた妻は、肩口で切り揃えた黒髪。

 顔が似ているわけではなかったが、遠目からやってくる一同を見た時にコクワは鮮やかなコウキの赤髪が真っ先に目を奪われたのだ。

「・・・ね?二人とおんなじだよ?」

「コクワ・・・」

「ホントの父ちゃんと母ちゃんは、壁になって敵が入ってこないように守ってるんだって。オレたち子供を守るためにさ」

「・・・誰がそう言ったんだ?」

 問われたコクワはつぶらな瞳でコウキを見詰め返した。

「氷月神さまだよ」

「え!?」



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