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ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
フォレスタの旅
33/119

いい奴=バカ?

「・・・お~い、そっちに行ったよ~?」

「てめぇこらっ!面倒くさがってこっちに流すなっ!!」

 国境近くの砦に向かう一行はモンスターの群れに遭遇していた。

 ひと気の無い場所を選んで通ってきている為、モンスターの出現率は非常に高かった。

 ユウヒでなくとも、そろそろうんざりする頃だった。

 ユウヒの分までモンスターを倒したコウキがゼーゼーと息をする頃、リンとミルアもそれぞれ最後の一匹を倒す。

「・・・なんか、どんどんモンスターが多くなるねぇ」

「・・・だから頑張ってもらえませんかね~?王子サマ~?」

 ふぅやれやれとため息をつくユウヒに、コウキがトゲトゲしく言った。

 そんなコウキにユウヒは爽やかな笑顔を向ける。

「その呼び方は目立つからやめてくれって言ったろ?遠慮なく名前で呼んでくれ」

「こんな場所で誰も聞いてる奴なんかいねーよ」

「・・・ねぇ、そろそろ寝る場所を探さない?」

 肩で息をしながらミルアの傷を治したリンの提案に、一同は頷いた。

 警戒しながら移動した四人は、程なくして洞窟を見つける。

 恐る恐る洞窟へ入ってみたが、たいして深くもなく、何かいるような気配もなかった為、一行はさっそく荷物を置いて座り込んだ。

「・・・今日は今までで一番戦った気がする」

「疲れたな・・・」

「そうだね。女の子にはキツイ行程だったね」

 リンとミルアの頭をよしよしと撫でながら言ったユウヒに、コウキはジト目を向ける。

「お前は元気だよな」

 途中ズルをして上手に戦いをサボっていたことへの嫌味だったが、ユウヒは悪びれずに笑顔を浮かべた。

「うん。まぁね。体力には自信あるよ」

 嫌味も通じないユウヒに、コウキは無駄なことをしたとため息をついた。

「・・・じゃあ、水くんでくる」

 少し戻った所に小川があったはずだとコウキは水袋を持った。

 いつも言霊で水を喚んでいたリンはハッとして腰を浮かす。

「あ、私が・・・」

「いい。休んでろ」

 水場も近い所にあることだし、わざわざ術を使う程のことでもないとキッパリ断ったコウキに、ユウヒは称賛を送る。

「いやぁ、頼りになるなぁ」

「お前は手伝え」

 まるっきりお任せという態度のユウヒを、コウキはぎろりとにらんだ。

「え~?僕、力仕事はな~」

「体力に自信あるんだろ」

 有無を言わさずにズルズルと引きずられていくユウヒに手を振りながら、ミルアはくすくすと笑った。

「・・・あれはあれで、いいコンビだよな」

 リンはあきれてため息をつく。

「・・・いいのかしら?」

 王女と知らずに出会い、態度を変えてほしくないと願うミルアと違い、ユウヒは初めから王子とわかっているのに乱暴な態度を貫くコウキに、先が思いやられる。

 コウキとユウヒは水袋を二つずつぶら下げ、森の中を歩いていた。

「こんな旅も新鮮だね~」

「・・・のんきでいいもんだな、お前は・・・」

 自分で飲み食いするものを準備し、寝床を確保するという初めての体験に、ユウヒは微笑みを浮かべる。

 その様子にうんざりとあきれるコウキに、ユウヒは顔を向けた。

「・・・僕は嬉しいんだ。君たちと出会えたことが。今まで一人で悩んでたけど、ミルアも同じように感じてたってわかった。そして、リンが来てくれた。今、こうして自分の足で行動できることが、どれほど嬉しいかわかるかい?」

 コウキは黙ってユウヒの話に耳を傾けた。

 コウキが聞いてくれるので、ユウヒは続ける。

「僕はね、初めからこの戦争を不思議に思ってた。昨日まで協力し合ってた王たちが、ある日突然いがみ合いを始めたんだ。話も通じなくて、どうしたからいいかわからなかった。・・・わからないまま、国民がどんどん犠牲になっていくのを、ただ見てるしかなかったんだ・・・」

 ユウヒは自嘲的に薄く笑った。

「情けないよね。ミルアはまだ小さいのに、たった一人で国を出てきた。リンは関わりのない僕達の為に来て、残ってくれた。なのに、僕は二人が来るまでなんの行動も起こさずに・・・」

 黙って話を聞いていたコウキは、立ち止まってユウヒをにらんだ。

「だからなんだ?そんな話俺に聞かせて、慰めの言葉でももらいたいんならお門違いだ。うだうだ言ってるヒマがあるなら、目の前のことちゃんとしろよ」

 コウキのキツイ言葉に、ユウヒは目を瞬いた。

「言っとくけどな、あの二人はバカだからな!一緒になってるお前もだ!」

 世界を救いたいだの言ってる奴らに付き合っていられないとばかりに、コウキはさっさと歩き始めた。

 ユウヒは慌てて追いかける。

「なんだかんだ言ってそのバカ達を面倒見てる君は、やっぱりいい奴だな!」

 ユウヒの言葉に目を丸くしたコウキは、次の瞬間脱力した。『やっぱりいい奴』が『一番のバカ』に聞こえたからだった。

「あれ?どうした?疲れたかい?」

「追い越して行くなっ!」

 急にしゃがみこんだコウキに心配する言葉を掛けつつもさっさと歩いていくユウヒに怒鳴ったコウキは、急いでその後を追い、なんとか小川で水をくんだ。

 その帰り道。

 ユウヒは真面目な声を出した。

「・・・僕からも、質問していいかい?」

「・・・いや、俺からはいっっっさい質問なんかしてないけどな。とことんマイペースだなお前」

 勝手にペラペラしゃべってるのはそっちだとジト目を向けるコウキを、ユウヒは真っ直ぐに見た。

「生まれはどこなんだ?」

 ここに来て初めて聞かれたことに、コウキは逆に安堵した。

 今までリンもミルアも自分のことに精一杯で、コウキのことを聞く余裕もなかったのだ。

 やっと少しは心にゆとりのある奴ができたと内心ホッとしたコウキは、用意していた言葉を返した。

「関係ねぇよ。家出してきたようなもんだからな」

「歳は?」

「・・・20歳」

「なんだ、僕の一つ下かぁ。戦争に参加したことはないのかい?君ほどの剣の使い手なら、名を上げようって戦争に出る若者も多いだろう?」

「・・・まぁ、名前を売るなんて興味はねぇけど、戦場に出たことはある」

「ふぅん。故郷に残してきた恋人とかはいないの?」

「・・・いねぇよ。そんなもん」

「そうなのか。じゃあ、リンとミルア、どっちがタイプだい?」

「そりゃあ決まって・・・ってなんだその質問!」

「あはははは。さすがに乗せられなかったかぁ~」

 思わず真面目に答えそうになったコウキはハッとして怒鳴ったが、ユウヒは楽しそうに笑うだけだった。

「・・・・貴様ら!そこで何をしているっ!!」

『・・・・・・・・え?』

 突然兵士に囲まれ、コウキとユウヒは目を点にした。



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