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ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
フォレスタの旅
32/119

旅立ち

かなり短めですが、キリ良く・・・。

 それから二日後の夜明け前。

 コウキ、リン、ミルア、ユウヒの四人はフォレスタ城の裏門にいた。

 あれから皆で話し合い、守護神の居場所を知るためにも、まずはユウヒの父親であるフォレスタ王に会ってみようとなったのだ。

 王は今、海の国マール・モーリェ沿いの国境近くの砦にいる。

 影響を強く受けている王なら、守護神の居どころについて感じるところがあるかもしれない。

 父王に会うことを避けていたユウヒだったが、今はもう逃げるつもりはなかった。

 四頭の馬を用意すると申し出た騎士隊長だったが、馬での移動は目立つと断られた為、旅に必要な物品を揃えてやっただけで身一つで見送りに出ていた。

「・・・やはり、私もお供したいのですが・・・」

「だめだよ。父上にも城のことを任されてるだろう?僕からも頼むよ」

「はい・・・」

 騎士隊長は顔を上げ、旅立つ四人の顔を見回した。

「・・・もし王子に何かあれば・・・私はこの日の決断を一生後悔することになるのか・・・」

 自嘲のような笑みを浮かべた騎士隊長に、縁起でもないと怒ろうとしたミルアはコウキに肩に手を置かれて口をつぐんだ。

 リンが、一歩前へ出たからだ。

 リンは騎士隊長を見つめた。

「隊長さん、言葉には力があるんです。望んでいないことは、口に出さないでください。大丈夫。私たちは、必ず成し遂げます」

「・・・・」

 騎士隊長はリンの言葉を聞き、黙って頭を下げた。

 その背後から突然、華やかな色彩が現れた。

「・・・ユウヒ様っ!」

 夜明け前にも関わらず、きちんとしたドレスに身を包んだ姫君がユウヒに駆け寄って抱き付いた。

「・・・わ~、キレイで、かわいい・・・」

「ミルア、ああいうのを『お姫様』っていうんだぞ?」

 その姫君の可憐さに思わずうっとりと見とれてしまったミルアに、コウキはあれが『お姫様』の定義だと教えた。

 上品で優雅で可憐。

 どれも当てはまらないお前とは違うと言われたようでムッとしたミルアは、思いっきりコウキの足を踏んでやった。

「ユウヒ様っ!私に黙って行ってしまうなんて酷いですわっ!!」

 泣きながら責める姫君にユウヒは苦笑した。

「ユリカ・・・。すまない。君に泣かれるのが辛かったんだ」

「泣くに決まってます!・・・必ず、帰ってきてっ・・・!」

「もちろん。約束するよ」

 見つめ合った麗しい二人は、一同の見る前で口付けを交わした。

 人前でやるかとあきれたコウキは、ハッとしてリンを見る。

「・・・おい・・・アレ・・・」

 コウキに話し掛けられ、リンはニコッとした。

「ああ、あの方はユリカ様。ユウヒ様のご婚約者よ」

「婚約者って・・・お前、いいのか・・・?」

「?いいのかって・・・。いいでしょう?こんな時代だから、正式な結婚は戦争が終わってからにしようって、真剣に愛し合ってるお二人だもの。旅立ちのキスくらい・・・」

「そうじゃなくて!だってお前・・・王子と・・・」

「?」

 めずらしく歯切れの悪いコウキに、リンは首を傾げた。

「一晩、一緒だったし・・・髪触ったとか・・・」

 コウキの言葉を聞いて目を瞬いたリンは、次の瞬間怒鳴った。

 別れを惜しむ二人に気を使って、一応、小声でだったが。

「何考えてるのよっ!そんな事あるわけないでしょ!?確かにユウヒ様の部屋にいたけど、ユウヒ様は別の扉からユリカ様の部屋に行ってたもの!!その前の晩だって、ずっと話し合いしてただけよっ!!」

「・・・ホントかよ・・・」

「当たり前でしょ!?髪触ったりとかも、妹扱いみたいなものよ!!」

 今度はコウキが目を瞬いた。

「なんだ・・・勘違いか。そうだよな。お前が王子サマなんかに相手にされるはずないもんな」

「悪かったわねっ!言っとくけど今は私はっ・・・!」

「ん?」

「・・・好きな人なんか、作る気ないからっ!」

 ぷいっとふくれっ面でそっぽ向いたリンを見て、妙な安堵感を覚えたコウキは肩の力を抜いた。

 そして、この安堵感はなんなんだろうとぽりぽりと頭をかくコウキを、ミルアは切ない瞳で見守っていた。

「・・・さぁ、出発だ!」

 ユウヒの号令のもと、薄明かるくなってきた空の下、四人は旅立った。

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