表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
フォレスタの旅
30/119

決意

「・・・ごめんなさい。お待たせしました」

「・・・ああリン、大丈夫だ・・・よ・・・」

「・・・リンっ・・・!?」

「・・・っ!」

 リンの声が聞こえて扉を見た三人は、それぞれに驚いた。

 リンは、にこりと微笑む。

「・・・すみません、ユウヒ様の机にあった小刀、借りちゃいました」

 言いながら扉を閉めて振り向いたリンは、髪を切っていた。

 背中の中程まであった黒く艶やかな髪が、あごのラインでキッパリと切り揃えられていた。

「リンっ・・・!どうしたんだっ!キレイな髪だったのにっ・・・!」

 思わず駆け寄ったミルアに、リンは微笑む。

「これは、私の決意の証。これからの旅に、長い髪は必要ないわ」

「リンっ・・・!」

 リンの髪に憧れていただけに、涙ぐんでしまったミルアの頭を撫でながらリンは苦笑する。

「泣かないで?ちょうど短くしたいと思ってたのよ」

 言って、ミルアを抱きしめたリンは、コウキを見た。

「・・・私は、帰らない。この世界の行く末を最後まで見届ける」

「・・・なんでだよ・・・」

 呆然としたコウキの反応がおもしろくなり、リンはくすくす笑った。

「あなた達と会ったからよ」

 ユウヒ王子は静かに見守っている。

「私、正直地上に来るまではすごく怖かったの。戦争なんてしてる所に、なんで私が行かなくちゃいけないのって思ってた。まぁ、本当は私の祖母が来るはずだったんだけど、リューマチが悪化しちゃって、急きょ私が代役で来たの」

 リンは笑みを浮かべた。

「びっくりしたわよ。いきなりモンスターに囲まれて。・・・でも、一人じゃなかった」

 コウキは黙ってリンの声を聞いていた。

「何の関わりもない私を、コウキは何度も助けてくれた。ミルアも、見も知らない私を信用してくれた」

 ミルアは、リンの腕に抱かれながら顔を上げた。

「旅の途中で会った人たちも、皆、一生懸命、生きてた。それを見たもの。もう私、知らないふりはできない」

 リンはユウヒ王子に顔を向けた。

「ユウヒ様も、信じて一緒に動く決意をしてくださったし」

 ユウヒ王子は微笑みを返した。

「こちらこそだよ。確かに彼の言うとおり、君には月に帰る権利はあるんだよ」

 帰ることを選んだとしても誰も責めないという目を向けられたリンは、首を振った。

「・・・もう、決めたんです」

 頑固なその言葉に、とうとうコウキは額に手を当て、大きなため息をついた。

「・・・そうだよな。最っ初から頑固なやつだったよな」

 初めて会った森で、モンスターと戦うと言った時も。

 一人で森へ戻ると言った時も。

 コウキとミルアと別れると言った時も。

 コウキの言うことなど聞かなかった。

「・・・後悔しても、俺は知らねーぞ」

 呟いたコウキに、リンはニッコリと笑った。

 ミルアは、コウキの言葉のニュアンスに首を傾げる。

「ん?コウキも一緒に行ってくれるのか?」

「お前との契約は『フォレスタ王の前まで』だ!その後は知らねーよっ!」

「それだけでも心強いわ」

 とっさに叫んだコウキに、それでもリンは笑みを浮かべた。

 肩透かしを食らったコウキは、がくりとうなだれる。

 ミルアは嬉しそうにリンを見上げた。

「私は、またリンと一緒にいられてうれしいぞっ!」

「私もよ」

「・・・まぁ、まずはこのフォレスタの神をどうするか、考えようか?」

 すっかり和んでいる女性二人に苦笑しながら、ユウヒ王子は提案する。

 コウキは、真剣な顔でユウヒ王子の肩に手を置いた。

「絶っっっっっっっ対苦労するぞ、王子サマ」

 のんきな笑いあっている女二人は、それぞれに扱いにくいのだ。

 そんなのと仲間になるユウヒ王子の気が知れないと言ったコウキに、ユウヒ王子は食えない笑みを浮かべた。

「君と分担すれば、なんてことはないさ」

「・・・俺は絶対にお前らとそんな旅なんかしないからな」

 これだけは言っておかねばとキッパリ言ったコウキの言葉を聞きつけたミルアが、にんまりと笑う。

「なんなら、契約延長するか?倍だすぞ?」

「倍で足りるかっ!」

「じゃあ三倍?」

「絶対ごめんだっ!」

 言い合う二人を、リンはくすくす笑いながら見ていた。

 昨夜と違って吹っ切れた様子のリンを見て、ユウヒ王子もほっとして笑みを浮かべた。

「・・・触り心地のいい髪だったけど、短いのもかわいいよ」

 突然かけられたユウヒ王子からの褒め言葉に、リンは瞬時に真っ赤になった。

「い、いえ、そんなっ・・・」

「本当だよ。また触ってもいいかな?」

「そんなもったいないっ・・・!」

 ニコニコと人のよい笑みを浮かべながらリンに近付くユウヒ王子を見て、ミルアはそっとコウキに声を掛ける。

「・・・コウキ、負けてるぞ。いいのか?」

「・・・なんで俺が張り合わなきゃなんないんだよ?」

 ユウヒ王子のセリフがなぜか引っ掛かり、ほほをひきつらせながらも、コウキはミルアの頭を小突いたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ