表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
始まりの旅
17/119

癒風光

リンの一番の大技になりますね。これから、もっとレベルが上がっていくはず!

 両手を天へ向け集中し始めたリンの姿に、老人達はざわつき始めた。

 騒がしいのを聞きつけ、家の中にいた村人達も様子をうかがいに出てきた。

 コウキとミルアは、術に集中するリンを守るように前へ出る。

「・・・『結界』!」

 リンの声が響いた。

「なんだ・・・?」

「何をする気じゃ・・・」

 ざわつく長老や老人達を、コウキとミルアは目で牽制する。

 リンの突き上げた手の上空から、うっすらと虹色の光が生まれた。

 その光が、少しずつ膜のように村を覆っていく。

「・・・やめろ・・・村をどうするつもりじゃ・・・!止めろっ!」

 村長の切迫した声を受け、老人達はそれぞれに棒や農具などを手に、術を使うリンを目掛けて襲いかかった。

 だが、リンに届く前にコウキとミルアに阻まれる。

「邪魔するな」

 コウキの鋭い目に、老人達は息を飲んだ。

 疑うことなくコウキとミルアに守りを任せたリンは集中を続けた。

 思ったより手応えが重く、思う通りに術が進まない。

 額に汗が浮かぶ。

 じわじわと、虹色の膜が広がっていった。

 ぎりっと歯を食い縛るリンを、ミルアは心配げに見つめる。

 汗の玉が数個落ちる頃、虹色の膜は村をドーム状に囲い、その状態でしばらく安定させてから、リンは術を終結させた。

 両手を降ろしてよろめいたリンをミルアが支える。

「リン、大丈夫かっ?」

 術の為にとても無理をしたとわかるその様子に、ミルアは涙ぐむ。

 リンの体は全て熱まで術に変えてしまったように冷えきっていた。

 それでも、リンは微笑んだ。

「・・・ありがとう、ミルア。でも、まだよ」

 息は上がっていたが、その強い瞳にミルアはハッとした。

 ミルアに支えられながらリンは前へ進み、長老達の前へ出た。

 長老は、信じられないものを見るような目でただただ呆然とリンを見ていた。

「・・・外からの影響は、たった今断ち切りました。あとは、あなたの本当の心を見つめて。惑わされないで。あなたの、本当に望むことは、何・・・?」

「・・・・」

 長老の唇が、わなわなと震えた。

 他の村人達も皆、戸惑いの表情を浮かべている。

 マイカは呆然とリンを見つめた。

(・・・この、感覚って・・・)

 まるで、夢から覚めたばかりのような、今いるのが現実なのかそうでないのか、わからないような、戸惑い。

 急に不安が押し寄せてきたような、胸の痛み。

 リンは肩で息をしながら言葉を続けた。

「・・・今まで、増大させられた恐怖や不安を背負わされていたのよ。今感じてるのは、本当の心・・・」

 よろりと前へ進むリンを、ミルアは慌てて支える。

 ミルアに助けられながら、リンはコウキの前まで出た。

 そして、再び両手を掲げて大きく息を吸った。

「『癒風光ゆふうこう』!」

 言葉と共に、リンの両手から柔らかな光が生まれた。

 何色とも言えない、優しくキラキラ光るものが、涼やかな風に乗って村人達の元へ舞い降りていく。

「・・・きれい・・・」

 マイカはうっとりとその光を見た。

 その光に触れた瞬間。

 マイカの両目から涙があふれた。

 とてもとても大きくて柔らかく、温かくて優しいものに触れたと感じた。

 体全部がそっと包まれ、全てを許されたかのような安心感。

 涙が止まらない。

 村長も、老人達も、他の村人達も、皆涙を流していた。

 村全体に力が行き渡ったと確認したリンは、蒼い顔でそっと両手を降ろす。

 そして、震える唇を開いた。

「・・・ずっと、辛かったですよね。怖かったですよね。・・・でも、それは一人で背負うものじゃない。分け合えるんです。・・・信頼できる仲間と、皆が笑顔になれる方法を一緒に考えればいいんです。村長さん、あなたには、その仲間がいる。それが一番の武器です。それを忘れなければ、もう負けないはず・・・」

 ぐらりとリンの体が傾いだ。

 急に重心が変わって支えきれなかったミルアの代わりに、コウキが後ろからリンの体を支えた。

 コウキの腕に支えられながら、浅い呼吸を繰り返すリンはそれでも声を絞り出した。

「・・・みんな、一人じゃないから・・・忘れないで。・・・人間は、きっと、強い生き物だから・・・」

 かくんと、リンの体から力が抜けた。

 限界まで頑張って気絶したリンを、コウキはその腕に抱き上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ