離れ
「悪いっ!俺はどうやら、この職業に出会う為に生まれてきたみたいだ!」
その言葉を同意と受け取った長老は、指示を出してコウキの縄を解かせた。
体の自由を取り戻し、コウキは伸びをして体のあちこちをパキパキ鳴らす。
「あ~やっと楽になった。んじゃ、さっそく案内してもらおうか♪」
「ちょ、ちょっと・・・っ!」
「本気で言ってるのかコウキっ!!」
本当にこのまま行くつもりなのかと慌てたリンとミルアを、コウキは一瞥した。
「当たり前だろ?殺されるより、ハーレムに決まってる。ま、お前らも運が良けりゃ死にはしねーだろ」
あっさりと言い捨てて納屋から出ていく後ろ姿を、二人は呆然と見詰めた。
納屋から出る瞬間、コウキはちらりと振り返って言った。
「・・・ああ、そいつら喚くとうるせぇから、猿ぐつわでも噛ませといた方がいーよ?」
「・・・っ!」
「こらっ!コウキお前むぐっ!」
コウキの助言に従って、老人はリンとミルアに布切れを噛ませた。
ミルアは抵抗していたが、呆然としたリンは無抵抗のままだった。
口を封じられて扉を閉められ、足音が遠くなるのを聞きながらリンはぎゅっと瞳を閉じた。
(・・・口が弱点って、知ってるのにっ・・・!)
知っていて、わざと口をふさぐよう言って言ったことが信じられなかった。
このままでは、リンは何もできない。
コウキはそのまま長老に連れられ、屋敷の離れに案内された。
「この中に、村の女達を集めた」
本当にこの老人は本気なのかと半ば呆れながらコウキは口を開く。
「本当に俺みたいな流れ者でいいのか?」
「構わん。今の時代に必要なのは強さじゃ。強い子を作ってくれ」
「はぁ・・・」
曖昧に頷きながら、コウキは長老の後について離れに入った。
中にいた女達の視線がコウキに集まる。
その視線にコウキはふむと考える。
(やっぱりな・・・。どう見ても「きゃ~男~♪」「私が先よ~♪」って雰囲気じゃねぇよな)
中には当然、怯えた目をした娘もいた。
「皆、子を孕むまでここから出ん覚悟じゃ。さぁ」
(・・・「さぁ」って言われても・・・)
そのまま動こうとしない長老に、コウキは渋い顔をした。
「んじゃじーさんは出てってくれよ。やりづらいだろ?」
「・・・・よかろう。頃合いを見て、食事を持ってこよう。・・・あの娘たちは、明日の朝には売り飛ばすからな」
コウキは笑みを浮かべた。
「ああ、好きにしてくれ」
コウキの返事に長老はうむと頷き、離れを出、外にいた老人たちに目配せをする。
「・・・見張れ」
老人たちに命じ、長老は自分の屋敷の中に入っていった。
長老が扉を閉めたが、鍵までは掛けられなかったと確認したコウキは、女達へと向き直る。
びくりと震えて身をすくませる女達を見て、コウキは苦笑した。
「・・・え~と、先に言っとくけど、俺そういうつもりで来たわけじゃないから。ちょっと話聞かせてくれないか?」
突然やって来た見知らぬ男に怯え警戒していた6人の女達は、コウキの言葉と態度を見て顔を見合わせた。
もう一押しとコウキは続ける。
「ここの村長さん、ちょっと考えが行き過ぎなんじゃって思うんだけど、前からそうなのか?」
「・・・・いいえ、違うわ」
顔を見合わせ、目配せし合った女達の中で年長と思われる女が代表して答えた。
コウキより4~5歳ほど年上だろう。
答えてくれたことにコウキはホッとする。
「違うっていうと?」
「・・・戦争が始まって、男達がいなくなってからよ。村長が異常なほど、この村に執着するようになったのは」
「村長だけじゃないわ!他の老人たちもよ・・・」
「村の存続の為に手段を選ばなくなって・・・」
「言う事を聞かない娘は、反逆者として売り飛ばすって!」
次々に話出した娘たちの話を聞きながら、コウキはなるほどと頷く。
集めたられた娘の中には、夫や婚約者が戦争から帰ってくるのを待っている者もいた。
今まで誰も聞いてくれる相手がいなかったのだろう。
一度話し出したら止まらなくなった女達の声を、コウキは辛抱強く聞いた。
「・・・・もうひとつ聞いていいか?村を水害から守ってくれてた守り神って?」




