天職?
やっと話が見えてきた三人は急いで立ち上がって頭を寄せあった。
「どうすんだよっ!守り神なんて知らなかったぞ!?」
「だから釣り過ぎちゃダメって言ったのにっ!」
「どうする?おじいさんたち、ものすごく怒ってるぞっ!?」
「そりゃそうだろっ!守り神食っちまったんだからっ!」
「水害っ!?水害起きちゃうのっ!?」
「水害起きたらどうなるんだ!?」
「村、全滅っ!?」
「ええっ!?マズイわよ、それっ!」
「どうする?どうする?」
「どうするったって、食っちまったもんはしょうがないだろっ!」
ヒソヒソと頭を寄せて話し合った結果。
コウキ、リン、ミルアの三人は並んで老人たちに向き直った。
何をするのかと眼光鋭くにらむ老人たちの前で、三人はペコリと頭を下げる。
「・・・・おいしかったです。ごちそうさまでしたっ!」
「ちょっっっと待てこらぁっ!」
そのままくるりと踵を返してダッシュで逃げようとした三人を、老人たちは投げ縄で捕らえた。
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「うわあっ!!」
老人とは思えない程の力で引きずられ、三人は長老の前に跪かされてしまった。
長老は恐ろしい顔で三人に詰め寄る。
「そぉれは無いじゃろ~?他人様んとこの守り神食って、ごちそうさまで済むわけないじゃろ~?ん~?」
「ごめんなさいごめんなさいホンットごめんなさいっ!」
「知らなかったんです~っ!」
「悪気は無かったんだ~っ!」
あまりの恐ろしさに必死で謝る三人の姿に、老人たちは頷き合う。
「連れていけ」
縄で縛られたまま、三人は村に連行されることになった。
巨大魚を釣った川の下流にあるという村まで歩かされながら、三人は小声で対策を練る。
「・・・風で縄切れるけど、どうする?」
逃げ出せると提案したリンに、コウキは小さく首を振った。
「いや、今逃げても地の利じゃ完全に不利だ。少し様子見るぞ」
すぐに捕まるのがオチと言ったコウキに、確かにそうかもしれないとリンとミルアは頷いた。
それに、とミルアは呟く。
「本当に水害があるようなら、なんとかしないと・・・」
ただでさえ戦争で大変なときに、村で待つ者にまで被害に遭うのではとんでもないとの言葉に、リンも賛同する。
「そうよね。私達にも責任あるわけだし」
自分たちがどうなるかもわからないのに、他人の心配をする二人にコウキはやれやれとため息をついた。
「ま、様子見てから考えよーぜ?」
村はそこから10分程歩いたところにあった。
(これだけ近けりゃ、あそこで騒いでたらすぐ見つかるよな)
巨大魚がいたあの辺りは、ここの村人たちのいわば聖地だったのだ。
その辺りでわいわいと騒いでいれば、何事かと様子を見に来て当然だった。
さほど大きくもない集落。
男達が戦争に駆り出されて留守の今、皆自分たちの村を守ろうと必死なのだ。
(それこそ、国や世界よりも、今の自分たちの生活の方が大事だよな)
今日、この日を生きる為に。
考え事をしながら歩くコウキの後ろを歩きながら、リンとミルアは村の中を見回した。
当然ながら、老人と女子供しかいない。
その残された村人たちが、怯えるように一行を見詰めていた。
そのまま、集落の中で比較的大きな家に三人は連れて行かれた。
どうやら、長老兼村長の役職を持つ老人の家のようだった。
もちろん家の中に通されるはずもなく、三人は納屋の中に乱暴に突き飛ばされた。
藁の上に倒れ込んだ三人を、出口側に立った老人たちが見下ろす。
後ろ手に縛られている為になかなか起き上がれずにもがくリンとミルアの脇で、腹筋を使って一人起き上がったコウキは、あぐらをかいて老人たちを見上げた。
「・・・で?ここまで連れてきて、どうするんだ?」
余裕の笑みを浮かべて言ったコウキを、老人たちはじっと見下ろす。
村人たちの気の済むように処刑でもするのか、はたまた水害対策の為の労働力とするのか、最悪の場合、人身売買で金に換えられるのか。
まぁせいぜいその三通りのパターンのどれかだろうと考えたコウキの予想は、ある意味全く外れることとなる。
威勢の良さそうなコウキの瞳を見、長老はニヤリと笑った。
「・・・女は売り飛ばす。イキの良さそうなお前には、この村に残って種男になってもらう」
「・・・・・・・はい?」
長老の言葉の前半を予想通りだと頷いて聞いていたコウキは、後半の全く予想外の聞き慣れない単語に、思わず聞き返していた。
「たね・・・?」
「種男だ。見ての通り、我が村の男達は皆戦場に行った。残された男はわしらのような老人と、幼い子供たちだけじゃ。これでは村が滅びる。若くイキの良い男が必要じゃ。わかるな?」
淡々と説明され、リンとミルアはぎょっと目を剥きコウキを見た。
コウキは目を瞬いて長老を見ている。
応えないコウキに、長老は選択を迫った。
「これに応じる気が無いならば、この場で殺す。応じるならば縄を解いて女達のところへ案内しよう」
「・・・・」
リンとミルアは、もしや次の瞬間にコウキが暴れだすかもしれないと、ごくりとのどを鳴らして緊張した。
二人が見守る前で、しばし沈黙していたコウキはゆっくりと口を開いた。
「・・・・まじで?それってハーレム?」
「ハーレムじゃ」
目の前で交わされた会話に、リンとミルアは目が点になる。
「・・・え?ちょっ・・・!」
「おいっコウキ・・・」
まさかと声を上げた二人に、コウキは満面の笑顔で振り返った。
「悪いっ!俺はどうやら、この職業に出会う為に生まれてきたみたいだ!」




