魚釣り
「うっひょおうっ!釣れる釣れる~!」
「あっまた来たぞっ!」
三人で進む山道にも慣れた頃。
そろそろたんぱく質が恋しくなったと騒ぐコウキとミルアの為に、リンは一つの術の提案をした。
すなわち、川を見つけ、リンの『大漁』の呪文をかけた手製の釣竿で、川魚を釣ること。
拾った木の枝につる草を付けただけの代物でエサも何も無いのだが、これがまた面白いように釣れた。
コウキとミルアが夢中になって釣りをするそばで、リンは火を起こして魚を焼くための準備をする。
細い木の枝を串にするため川で洗って火の側に戻ってきたリンの前に、大漁の川魚がドサドサと運ばれた。
その量にリンは目を丸くする。
「こんなに食べるの~!?」
驚くリンに嬉しそうな顔を向けたコウキとミルアは顔を見合わせる。
「まだまだいけるよな~?」
「まだまだいけるぞっ♪」
スキップでもする勢いで川岸へ戻っていった二人を見、リンはため息をついた後くすくすと笑った。
もっと串用の枝を拾ってこなければと腰をあげたリンは、だが言い忘れたことがあったとコウキとミルアに振り返った。
「ねぇ?あんまり釣っちゃうと、生態系が崩れちゃ・・・」
振り返ったリンの視線の先で、ミルアが釣竿を握って奮闘していた。
「んんっ?これ、大物だぞっ・・・!お、重っ・・・!」
「どれどれ貸してみろ!」
川魚にしては手応えが違うと歯を食いしばったミルアの様子を見て、コウキはウキウキと一緒に釣竿を握った。
「・・・おっ?本当だ!こりゃでかいぞ!?」
コウキの腕にも重いと感じるほどの手応えに、二人はニヤリと笑った。
「よっしゃ!絶対食ってやるぞっ!」
「おうっ!」
「・・・ねぇ、ちょっと~・・・」
リンが声を掛けても全く気付かないほど、コウキとミルアは大物釣りに熱中していた。
大物と思われる魚は水中で動きまわっている。
コウキとミルアは竿を引いたり緩めたりしながらエモノと戦っていた。
「ふっふっふっふっせいぜい動き回るがいいさ~」
「弱れ弱れ弱れぇ~」
「・・・ちょっと・・・二人とも・・・」
目付きが変わっている二人に引きながら、リンは呼び掛け続けるが、やはり二人の耳には入らない。
そして、一瞬の手応えを二人は見逃さなかった。
息の合った様子で、一気に竿を引き上げた。
「うらぁ~!!」
ザバンっ!!
大きな音を立てて水面から姿を現したものは、コウキの5倍はあろうかという巨大魚だった。
「やったぁ~っ!」
岸にドォンと落とした巨大魚を見て、コウキとミルアは互いの片手を打ち鳴らして勝利を祝った。
岩を粉砕しながらのたうち回る巨大魚に、リンは悲鳴を上げる。
「なんてもの釣り上げてるのよ~っ!それ、モンスターじゃないのっ!?」
リンの叫びを聞き、コウキとミルアは巨大魚を見る。
「・・・まぁ、確かにどぎつい色してるけど・・・」
「・・・なんかすごいトゲトゲ生えてるけど・・・」
『魚っ♪魚っ♪』
のんきに喜ぶ二人にがっくりしたリンに向かって、暴れた巨大魚が襲いかかってきた。
「・・・っきゃああああっ!『火炎弾』!」
パニックになって突き出されたリンの手のひらから生み出された火の玉に焼かれ、暴れていた巨大魚はほどよくこんがりと焼き上がった。
「おお~っ!」
調理され、良い匂いをかもしだす本日のメインディッシュにコウキとミルアは目を輝かせて拍手を送った。
とても満足した笑顔でたんぱく質たっぷりの食事を終えた三人は息をつく。
「いやぁ~、色はちょっとアレだったけど、旨かったな~」
「でっかいトゲトゲが邪魔だったけど、旨かったな~」
「あら、火加減が良かったのよ」
川原で食後の一休みをしている所へ、突然複数の足音が近付いてきた。
バタバタと足音を立てるそれは、とても兵士とは思えなかったためコウキものんきに構えていた。
森のなかから現れたのは、4~5人程の村人らしき老人たちだった。
コウキたち三人のそばにある巨大な魚の骨を見つけ、老人たちはワナワナと震えた。
「・・・なんだ?」
不思議に思って首をかしげる三人に、一番年長であろう老人が顔を真っ赤にして怒鳴った。
「お、お前らっ!村の守り神になんてことしてくれたんじゃあ~っ!!」
「・・・・へ?」
「・・・・守り神?」
「・・・・何が?」
更に眉を寄せて首をかしげる三人に、他の老人たちも怒りの形相で詰め寄った。
「そこの巨大な魚様のことじゃあ~っ!」
「村を水害から守ってくださってたのじゃっ!」
「それをよりによってお前らっ・・・!」
『食ったのかぁぁぁぁ~!!』
声をそろえて怒鳴られ、三人は頭が真っ白になった。
『・・・・え?』
「え、じゃないっ!ただでさえ戦争で人手が時に、もしまた水害が起こったらどうしてくれるんじゃいっ!!」
「責任取らんかいっ!!」
『・・・・えええっ!?』




