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ハニームーンの卵~炎竜と言霊使い~  作者: 伊藤ひおり
ウェントゥスの旅
102/119

王子様の会話術講座

ものっすごく短いです。幕間的な感じで・・・。

 それから数日が過ぎ、一行はアルバ・ソルとの国境近くまで来ていた。

 ウェントゥス軍の基地があり、当然のごとくヒエンの案内で基地内に泊まることを許され、一行はアルバ・ソルへ入る為の準備をしていた。

「わ~、きれい~♥」

「ずいぶんと鮮やかなんだな♥」

 最南の国の気候に合わせた独特の衣装が並べられた台を見て、リンとミルアは歓声を上げた。

 アルバ・ソルへ入って目立たないよう、ヒエンが用意させたものだ。

「基本女の子は巻きスカートにサンダル、丈の短い袖無しの上衣と、日差しを避けるベールを頭から被るんだよ」

 説明してくれるヒエンの声を聞きながら、リンはさっそくキレイな色彩の衣装を手に取る。

「ほら!これなんかミルアに合いそう♪」

「リンはこれがいいんじゃないかっ?」

 とても楽しそうに服選びを始めた二人に、ユウヒは苦笑する。

「あっちは少し放っておこうか。で、僕らは?」

「男はこっち。短いズボンに、ベール代わりに薄地の長袖のシャツにベスト。頭はターバンかバンダナを巻くんだ」

 日差しの強い国であるため、なるべく肌を日光に晒さないようにかつ風通しが良く涼しい装いになっているらしい。

「ターバンかぁ・・・」

「どうやって巻くんだよ?」

 まるっきり違う異国の文化にユウヒは感心することしきりで、コウキはめんどくさそうに顔をしかめる。

 旅の中でターバンを巻いている人を見たことはあったが、あれがただの長い布だと知らなかったコウキはどうすればあんな風にまとまるのか見当もつかなかった。

 簡単にバンダナでいいかとターバンを置いたコウキの脇で、ユウヒは係の者からターバンの巻き方のレクチャーを受けていた。

「・・・しっかし、ハデだな」

 台の上に並んだ衣装は色とりどりの原色系で、独特の紋様の布地は慣れないと目がチカチカするようだ。

「てめえはこれでいいんじゃねぇの?」

 そう言ってヒエンがバサバサと寄越した、何の統一性もないド派手な衣装の組み合わせにコウキは顔をひきつらせる。

「こんな悪趣味なもん着れるかっ!!」

「大丈夫、似合うって♪」

「うるせー!!嫌がらせかっ!!」

「ああ、バレたか♪」

「てめぇっこのっ・・・!」

 からかって喜んでいるヒエンに思わず掴みかかろうとしたコウキの袖が、チョンチョンと引かれた。

 振り向くと、キレイな柄の衣装を手に持ったリンが控え目にコウキを見上げていた。

「・・・これ、どう?」

 少しびくびくしながら、そうコウキに尋ねたリンの向こうではミルアがにまにまと笑ってこちらを見ていた。

 一度、ヒエンから贈られたドレスをこれでもかと貶したコウキだ。

 コウキの意見も聞いてみたらどうかとミルアが助言をしたのだろう。

 だが、あの時と状況が違う上に、女の子の着る服などわかるコウキではなかった。

「・・・ああ、いいんじゃねぇの?」

 適当に軽く流されたようなそのコウキの返答に、リンはムッとした。

「わかったわよっ!もう聞かないっ!行きましょうミルア!」

 むぅっとした顔でそっぽを向き、ミルアの手を引いて試着室として用意された隣室に入って行ってしまったリンの背中を、コウキは呆気に取られて見つめた。

 いいと言ったのに起こられた理由がわからなかった。

「・・・だめだなぁ」

「わかってねぇな」

 ぽかんとしたコウキの左右の肩に、ユウヒとヒエンがそれぞれ手を乗せた。

 ヒエンはニヤニヤと流し目でコウキを見下ろす。

「ああいう時に『すげー似合ってるよ。っていうか、その服着たお前を脱がしたくなる。今夜は離さないぞハニー』くらい言えねーと♪」

「誰が言うかんなことっ!!バカだろお前っ!!」

 理解不能な言葉をペラペラと並べたヒエンに、コウキは思い切り怒鳴る。

 その様子にユウヒは苦笑を浮かべた。

「ヒエンと同じこと言えとは言わないど・・・。女の子は具体的に誉められると喜ぶよ?色とか柄とかデザインとか。さっきの場合なら『大きな花柄の所々にリンの瞳と同じ色が入ってるし、全体的な色も柔らかそうな君の印象にピッタリだと思うよ。デザインも、スタイルが強調されてすごく似合うと思うな』が正解だね」

「・・・・お前ら、俺にわかる言葉で話せ・・・」

 もはや怒鳴る気力も失せ、コウキはめまいのする額を押さえてぐったりとした。

 扉一枚隔てた隣の部屋では、扉に背中を付けたままリンとミルアが男性陣の会話を聞き、固まっていた。

「・・・・怖い・・・・」

「・・・・怖いな・・・・」

 王子様二人と同じようなセリフをペラペラしゃべるコウキなど、想像するだけでとても怖かった。

 適当な返事をされて思わず怒ってしまったが、あれがコウキの精一杯だったのだろうと推測し、リンはため息をついた。

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