第15話(エピローグ)
これで、本作品完結になりま~すっ!!
いやぁ~・・・・・・長かったww
ここまで読んで下さった方、随分お待たせしました~っ&ありがとうございます~っ!!!!(夏ホラ??もう冬やんwは、我ながらツッコミものです(>_<))
さて、細かい報告は後書きにて。
本編、少しでもお楽しみ頂けたら幸いですm(_ _)m
数年後のこと。
『続いてのニュースです』
いつもの、一日。カラッとした、夏模様。
移動する車のカーステレオから、昼の報道番組の音声が流れてくる。運転中なので、備え付けのカーナビモニターには地図のナビゲーション画面しか映っていない。
まあ、この時間帯はテレビが観れなくても平気だが。
「急にゴメンね~。慎ちゃん」
ふと私は、後部座席越しに、運転席に座る人物に声をかけた。
「今日も、ホントに忙しいのに・・・・・・」
自分たちの為すべき″仕事″のことを気にしつつ、結局は車で小旅行みたいな装いになってしまっているため、不意に申し訳なくなったのだ。
「お義母さんたちには、何かお土産買って帰らないとね~」
そう言うと、運転席の彼--つまり私の″旦那″--も「そうだな」と軽く頷いた。
乗用車の、後部席。その車窓からは、さっきからずっと似たような景色が続いている。高速道路、その防音壁、緑、たまに見えるビル群等々・・・・・・それらが何十分も続けば、さすがに飽きてくる。
それは、私の″隣の同乗者″も同じらしく--
「あらら。飽きちゃったかな~? 」
乳児の、グズる声。それが聞こえる頃には、私は足元のバッグから、子供をあやすための玩具を取り出し手にしていた。
「ほらほらぁ~。もう少しだからねえ~」
その玩具を、子供の目の前にかざしてやる。すると、たちまち子供の機嫌は直っていった。
うんうん。困ったときには、やっぱり″アンパンのお顔を持ったヒーロー″が一番よね。
その″アンパンのヒーロー″のぬいぐるみを両手に与えてやると、子供はもう、自席のチャイルドシートを目いっぱいに揺らす勢いで喜びを表現し始めた。
まだ、″喋る″というよりは″声を出す″のが主な時期なのだが、それでも″我が子″の感情表現は、いつ見ても可愛いものだ。
「そろそろ、かな・・・・・・?」
子供の方を気にかけつつ、運転中の旦那に尋ねる。「ん~」と、あいまいな返事。これは肯定の意味だろう。
間もなく、車の進路が左寄りに。
高速を下るICに差し掛かった。
「着いた・・・・・・」
一般道に下り、感嘆に呟く。埼玉県○△に来るのは、久しぶりのことだった。
「晴れて、良かったよね~」
と口にする私に、やはり「ん~」と旦那は返す。まあ、運転中 なのでこの反応は仕方がない。
「もうすぐだからねえ~」
子供に、そう言い聞かせる。まあ、子供は今日の目的地がどうとか車がどの辺りを走っているのかとか、多分分からないだろうが。
「あの、さあ」
と、前の運転席より。正面を向いたまま、旦那が声を上げた。
「本当に・・・・・・行くのか?」
「ん。もちろん」
やや歯切れの良くない旦那に対して、私はごくごく普段の口調で返事をする。
しばらくの間、会話はそれきりで静かになる。
行きたくない、面倒くさい、しかし家族を車で送迎しないわけにもいかない・・・・・・。
″慎ちゃん″も、すっかり『日曜日のお父さん』になった。
「あ」
高速を下りて、一般道をしばらく行く。行くにつれて段々、見覚えある街並みがこちらを迎えてくれるという感じだった。
「懐かしいなぁ~」
大通りを行き、やがていくつか小道を曲がって行く。
″かつて″暮らしていた場所が、今日の目的地だ。
「着いた着いた、と」
鉄道駅の駅前ロータリーに着き、適当な路肩に一時駐車する。シートベルトを外したりカバンの中身をまとめたりと、私は車を下りる準備をし始めた。
「なあ。その・・・・・・」
と、一時駐車を終えた旦那がやはり歯切れ悪く、運転席からこちらへと振り返ってくる。
まあ、大体何が言いたいのかは分かっていた。
「うん。ちょっと、行ってくるだけだから」
と、返す。「適当に、時間つぶしといてくれる?」と言うと、旦那はホッとしたように息を吐いた。
「悪い、な」
申し訳ないと、旦那。「じゃあ、またあとで」と、私は車の後部席から駅前の広場へと下り立った。まだ自力で歩くのもままならない我が子を車の荷台から下ろしたベビーカーに乗せて、手にはハンドバッグなどを提げる。旦那は、恐らく私のそういう状態に気づいたのか、
「あー。やっぱり、行くか?俺」
と、聞いてくる。「ううん」と、私は首を横に振った。
「これくらいは平気だよ」
気遣いに感謝しつつ、バッグなどはベビーカーのフックに引っかけておく。「終わったら、メールするね?」と言って、車の後部席の扉を閉めた。
「じゃあ、行こっかぁ~!」
ベビーカーに乗せた子供に、日よけの覆いの脇からニコリと笑いかけつつ。東武線○△駅の懐かしい駅前広場を、私はゆったり横切り歩き始めていった。
○○○○○○○○○○
ミンミンミンミンミン。
聞こえてくる、セミの声。夏の始まりがそこかしこに息づいている、今日この頃。
「ふ~ん。けっこう、そのまんまなんだねえ~」
道なりのあちこちに目をやり、呟く。駅前の店などいくつか記憶と違っていたものの、いざ小道に入ってみると、かつてと全く同じ風景に嘆息する。
まあ、数年ならこんなものだろうか。
「シュウ君のパパは優しいわねえ~」
子供に、そう話しかける。言われた言葉をどう解釈しているのだろうか、子供は時おりただの声音を発するだけだ。
「本当に、ね・・・・・・」
ふと、″当時″を思い出し呟く。″あの頃″の″慎ちゃん″が、変われば変わるものだった。
「あ」
通りの角を、一つ曲がる。
『裏野ハイツ』の橙の屋根瓦が、薄っすら遠目に映り込んできた。
ミンミンミンミンミン。
陽のあたる小道を歩いていく。この時季なので、陽射しはやや強い。小さい氷枕をいくつか、ベビーカーのシートに仕込んであるものの、まあ用事は早めに済ませるつもりである。
「あら」
『裏野ハイツ』の敷地に近づいてきた辺りで、ふと、ばしゃりと打ち水する音がした。さらに近づいた辺りで、かつてお世話になった人物が門の陰からひょっこり顔をのぞかせてきて、私は顔を綻ばせつつ一礼した。
「お久しぶりです、大家さん」
「まあ、まあ、まあ」
大家の小松川が、″昔″と変わらないのんびり間延びした様子で、恭しくこちらを出迎えてくれた。
「あら、あら。お子さんねえ~」
と、大家はゆっくり腰を屈めて、ベビーカーに寝る子供を優しげにのぞきこむ。「今年で、二歳になりました」と私が言うと、「まあ。もう、そんなに経つのねえ~」と、感慨深そうに呟いた。
「さあ、さあ」
大家さんに案内されて、私はハイツの隣、大家さんの自宅にお邪魔する運びになってしまった。本当は、旦那の実家の旅館から用意してきた菓子折りを渡して帰るだけのつもりでいたのだが、まあせっかくの厚意を無下にするわけにもいかないので。
「つまらないものですが」
土産の品を差し出すと、「あら、あら。お気を遣わせてしまって」と、やはり恭しい応対でその品を受け取った。
客間に通されて、しばし互いの近況や世間話などを交わす。冷たい麦茶までご馳走になってしまい、子供が飲む方にはストローも用意してもらう、もてなされようだった。
「ご主人は、お元気?」
「ええ」
頷くと、大家さんは「そう」とやはり頷き返してくる。ひとしきりそんな会話を続けてから・・・・・・私は、ふと″当時″から気になっていたことを・・・・・・思いきって、尋ねてみることにした。
「あの、大家さん」
「はい~?」
「あの。二階の、部屋のこと・・・・・・なんですけど」
そう尋ねると、大家さんは「ええっと、ねえ~」と、やや渋面をする。あまり、話したくなさそうなのは明らかな表情だったのだが、
「まあ。三ツ木さんと″あの子″は、長いからねえ~」
と、 いくつかは端的に教えてくれた。
二〇一号室と二〇二号室の住人が『裏野ハイツ』の一番の古株であること、その中でも特に『二〇二号室』には訳ありな事情がついていること(この辺は大家さんの歯切れもかなり悪かったのだが)。そして、『二〇三号室』に来た住人の大半は、短い期間で入れ替わり立ち替わりに居住者が変わること等々。
『二〇二号室』の件は、私も″当時″その一端を垣間見たように思うので、まあ何となくの理解ではいたものの。
「″アナタたちが居た頃″が、一番穏やかな時季だったかもしれないわねえ~」
と、大家さんがしみじみ思い出すように呟く。「大体は、みんな、ねえ・・・・・・?」と、言われた私にはよく分からないひと言も添えられたが。
″慎ちゃん″と″話し合い″をした夜の後、私たちはしばらくこのハイツで一緒に過ごしたのだ。いよいよ出産の準備が本格的になる段階で、慎ちゃんの実家の神奈川に移る運びになったのだが、短いながらも一緒に過ごせたのが、懐かしい思い出になっている。
″あの頃″の″慎ちゃん″の″変わりよう″には、本当に驚いたものだった。
「優しいお父さんに、なりましたよ」
そう言った私に、大家さんもまた優しげに笑みを返してくれた。まあ、変わったきっかけが″あの夜の話し合いの結果″によるものというのも、アレだが。
「あら」
と、大家さん。聞くと、これから不動産屋さんが入居希望者を連れて、ハイツの見学にくるらしい。
そろそろ、お暇する頃合いだろう。
「ま~あまあ。慌ただしくしちゃって、ごめんなさいねえ~」
「いいえ。お邪魔しまして~」
一礼して、腰を上げる。ベビーカーに子供を乗せるなど、帰り支度を大家さんに手伝ってもらったりしつつ、再び暑い空の下に出た。
ミンミンミンミンミン。
ますます、暑さが増している気がした。
「またねえ~」
再びベビーカーのシートに乗せられた子供に向かって、大家さんが優しく手を振る。
本当は、もう少し『二〇二号室』のことについて聞いてみたかったものの、まあ一度あらためてココに来られただけでも良かったと思う。
「では、また」
一礼して、ベビーカーの持ち手に手をかけ、私は来た道をゆっくり引き返していった。一度、二度と振り返り、大家さんに手を振る。何度かそうしたところで、ふと前方から歩いてくるひと影に出くわした。
ミンミンミンミンミン
「--と、まあ。部屋の間取りとしては、大体そんな感じになりますかねー」
スーツパンツにワイシャツ姿の中年男性と、その横を並んで行く若い男性。
「ええ、まあ・・・・・・小野寺様のご要望をまとめさせて頂くと、大体そんな感じに--」
聞こえてくる会話から、スーツ姿の男性が不動産屋らしいと何となく察せられる。とすると、向かう先は--
「あらあら」
と、大家さんのカラッと明るい女声が聞こえてきて、私は予想通りだったかと得心する。
「ああ、大家さん」
不動産屋の中年男性が、気さくに挨拶をしつつ横道を挟んで私の側をすれ違っていく。
もう一人の、若い男性。
彼は、不動産屋の男性について行く際、すれ違っていく私の姿を、じっくり上から下まで舐めるように見回した。
「・・・・・・っ」
その執拗な目線が、やがて私の押すベビーカーに留まり、終いには「ち、っ」と、小さく舌打ちまでする音が、私の耳にもはっきり聞こえる。「何だよ、子持ちかよ」と・・・・・・この男性の、そんな心の声が聞こえた気がした。
これだから、″男″は・・・・・・。
まあ、こんなことはよくあること、だったが。
「小野寺様」
と、不動産屋の男性に呼ばれて、若い男性は私の側を通り過ぎていった。
じっくり、ねっとり。
あからさまな目線を、私の身体のあちこちに寄越しながら。
ミンミンミンミンミン
息を落ち着け、少ししてから振り返る。ちょうど、大家さんがその男性二人を、『裏野ハイツ』に案内するのが見えた。
「さあ、さあ」
と、大家さんの声。
「どうぞ、こちらへ・・・・・・」
のんびり間延びした声に連れられて、若い男性が一歩、二歩と、『裏野ハイツ』の敷地に入っていった。
そんな光景を見届けてから、私は再び鉄道駅の方を目指して歩き始めていった。
「全く、ねえ~?」
ベビーカーを押しつつ、そこに乗せられた子供に語りかける。
「シュウちゃんは、ココに来るような大人になっちゃ、ダメだからねえ~?」
冗談混じりに言いつつ、しかし言っている途中で、本当に″そんな大人″にはなって欲しくないなと、真面目に思い直した。
うーん、シュウちゃんが『昔の』慎ちゃんみたいになったら・・・・・・それ、すっごくイヤだなあ~。
しっかりしなきゃな、という思いで、私は再び鉄道駅目指して歩き始めていった。
じゅくじゅくじゅくじゅくじゅく。
ふと、のこと。
″いつかの真夏の夜″に聞いたセミの鳴き声が、一瞬だけ私の耳に聞こえたような気がした。
・・・・・・はい、終わりました。
『どうぞ、こちらへ・・・・・・』、これにて完結になります。ワーイっ♪
いやぁ~、長かった!本っ当に、書き上げられて良かった!!
もうコレ、終わんねぇ~よ・・・・・・夏ホラ間に合わなかったし、書く意味あるん?・・・・・・何度、放り投げようと思ったことでしょうかww
本作品は、『小説家になろう』の『夏のホラー2016』という企画用に、『小説家になろう』の利用を始めて間もない作者(ユキ@yukimaru)が「よっしゃ、これくらいの期間ならイケるやろ。いっちょ、執筆練習に弾みつけさせてもらおか~♪」と、本当に軽いノリで構想に入ったのがキッカケです。
いやぁ~、『キング・オブ・A ho』でしたねwww
見事に〆切りオーバーしますたw
うーん、何がいけなかったのか。。。
1、暑さに負けてすぐ集中力が切れた。
2、眠気に負けて1日でも徹夜で執筆する気概がなかった。
3、リア充(時間盗られる的な意味でw)で外出過多に。
4、栄冠ナインと甲子園を目指していた(vita版w)
・・・・・・はい、完全に自分のせいですorz
よくまあ、完結まで持ってこられたものだ(我ながらw)
ここまで、読んで下さった皆さまのお陰です。
夏ホラの〆切り終わってからも、自分の作品に目を通してくれる方がいた・・・・・・これが、本当に(いや、本っ当マジで!)自分の励みになりました。どこかで、誰かが、自分の書いた作品を読んでいる、、、本当、スゴい時代に生きてるものだ。
いつ終わるかも見えないような(途中で投げ出す可能性のが高かったw)、こんな作者の書くものに目を通して下さって、本当に(いや、本っ当マジで!)ありがとうございましたm(_ _)m
今後は、本作の改稿(誤字脱字ひでぇww)、書きかけの他作品を仕上げたり(これも、ヒドい放置状態ww)、また新しい何かしらを書いたりと(パワプロに行っちゃうかもww)、とりあえず、ちまちまやっていくことにします。
最後にもう1度、
ここまで『どうぞ、こちらへ・・・・・・』を読んで下さり、本当にありがとうございましたm(_ _)m




