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08:悪意の集い。

エピローグなので短めです。

そのへんご了承ください。



8「悪意の集い」



 ―—その室内は、ひんやりとしていた。

 同時刻、三人の悪党が仲良さげに酒を酌み交わす中、同じ魔界の、似た悪党が集まる室内だったが、その空間は嫌な悪意に包まれていた。

「やっぱり失敗に終わったね」

 壁に背を預けていた堕天使が、にこりと笑った。

「人間の悪意というのも対してアテにならないね。魔女なんていうから少し期待したけれど、結局向こうの戦力強化になっただけだった」

 呆れているのか。怒っているのか。喜んでいるのか。

 どうともとれるような表情で、堕天使はその銀髪を揺らして赤い悪魔に微笑んだ。

 悪魔の方は、着流しの隙間から白い包帯を垣間見せている。

「あの死神の血をひくというのは実に厄介だな。できれば殺してしまいたい」

「殺せるの? あんな帝王の近くに置かれて?」

「…………」

 堕天使に問われて、悪魔は沈黙した。

「なんだか最近うまくいかないねえ。君のとこの子、また一人帝王に奪われたんでしょ?」

「……くれてやったのだ」

「同じことじゃない」

 唇を尖らせて、堕天使は言った。

 二人はこの魔界に暗躍する悪党のうち、魔界を『混沌たる世界』にすることを望む者だった。

 その都度様々なものを利用して企みをくわだてるのだが、今回も頓挫したというわけだった。

 企みの多くを死神がつぶしていることを。

 帝王の関係者がつぶしていることはわかっているのだが、二人とも死神を消し去れるほど力は持っていない。

「……案ずるな。次の計画はもうすでに考えている」

「へえ?」

「魔界もしょせんは『日本の神』が作り出した世界。ならば日本の神がかつて世界をかきまぜた神器を使いこの世界を変えてしまおうと思ってな」

 悪魔はそうつぶやくと、数枚の写真を取り出して堕天使の方に投げた。

 受け取った堕天使は、写真に視線を落とす。

「矛?」

「そう、天沼矛という」

 ああ、と堕天使は声をあげた。

「それって昔、日本列島をつくりあげた時の矛だよね? それでここをかきまぜようっていうわけ?」

「そのとおり。もう手は打ってある」

 あっけにとられたように、堕天使は「へー」とつぶやいた。

 確かに壮大な計画だ。

 そして矛のある場所は魔界ではない。

 帝王の遠く及ばない場所。

 人間の住む世界。

 日本のとある町である。

「確かにこれならいけそうだね……」

「であろう? 貴様にも協力してもらうぞ」

 にたりと、赤い悪魔は笑った。

 堕天使もにこりと微笑んで、「もちろん」と返した。

 数枚ある写真のうち、一枚だけそっとポケットに忍ばせて、堕天使は写真を悪魔に返した。

「楽しみだねえ」

 なんて返して、彼はちらりと視線をやった。

 ポケットに入る――自分と同じ色の髪と目を持つ少女の写真を、気に掛けるように。


 ―—そうして数か月が経ち。

 魔界の帝都では一人の少女が帝王城を巣立って行った。

 きたときの無表情からは、壊れた心からは想像できないほどの笑顔で、すっかり板についた男装姿で。

 彼女がこれから向かう先は、国が違うとはいえ元は自分のいた世界だった。

 そんな少女の手を、黒いマントを羽織った仮面の男がひいた。

 両親のように接してくれた帝王夫妻に手をふって、少女は去っていった。

 少し寂しくなった帝王城には、しかし変わらずとどまり続ける白髪の幼女と。

 赤いマフラーの死神が時たまに入り浸るようになって。

 


 かくして物語は、白い虎の名を持つ少女のもとへと、つながっていく。


茶番にお付き合いいただきありがとうございました。

これにてペルソナノングラータ!は完結です。


もしかしたら続編書くかもしれないけどその前に別の場所で『シロトラ。』を投稿せにゃならんのでそのあとかと思います。


白髪の幼女ことルトには同じく別サイトにて今度は漫画で活躍してもらう予定であります。



お付き合いいただきありがとうございました。

また何か投稿した際にお会いしましょう!


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