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前編「恋をした」


――はらわたのやしろに近づいてはならぬ。



この地に住まう生類ならば、鳥も獣も花も草木も知ることわり。言うまでもないことだが、はらわたの社とは神話時代から存在する神社である。

城下町から二つの山を越えた先にその地はある。

緑濃い山里の生まれものすら、用がなければ決して近づかぬ――と言えば、どのような扱いなのか異邦人にもわかることと思う。

しかし世の中、掟と規則は破ることに意味があると信ずる手合いがいる。

たとえば自分とか。


(いい天気だ)


山野の道にしては、やけに整理された道であった。尤もそうでなければ、シャルクウのような町方育ちがやってこれるはずもないが。

荒ぶる神、神話時代に厄災を振りまいた死の化身を祭る社――そんな物騒極まりない場所へ続く参拝の道だ。

捧げ物の一つも持たず行くのも無粋に思い、鞄には雷鳴鳥(人間の手のような足が四本生えており、見た目が気持ち悪いことに定評がある)の燻製と塩味の握り飯を三つ。

ほとんど自分の弁当であり、不信心に疑いの余地はなかった。


そもそも少年は地元の人間ではない。生まれも育ちも城下町、使用人にかしずかれて育ったような身分である。

その割りに足腰が頑丈なのは、ご先祖様の混血の賜物という奴だった。エルフの長命、オークの生命力様様である。

資産家である父は郊外に別邸を持っており、シャルクウが移り住んだ山里の屋敷もその一つだ。

彼が実家を離れたのには理由がある。


ここには、弟がいないからだ。


事の発端はよくある話である。豪腕で知られる商人が老いを感じ、自分がもうろくしないうちに跡継ぎを決める、と言い始めた。

そしてシャルクウの母は産褥さんじょくで亡くなっており、父は後妻との間に次男を設けていた。

つまり、揉めるべくして揉める構図。

幸いにも義母はよくできた人で、シャルクウ同様、この宣言に戸惑っている側だったが――当事者同士、気まずくないわけもない。

そして何より、少年の弟は、彼よりも跡継ぎに向いていた。

神童、天才などと言うものは一〇歳を超えれば化けの皮が剥がれる――などと物の本には書いてあったが、どうやらシャルクウの異母弟に限っては違ったらしい。

二つの大陸の主要言語四つを話し、エルフの長老と議論を始める才気あふれる子供だった。

まだ一二歳である。

実際問題、シャルクウは弟の才覚を認めていた。

父親の跡目を継ぎ、使用人たちの生活を取り仕切ることに執着する理由もなかった。


(これじゃあ反対する意味もない)


お家騒動の類はごめんだった。ましてや憎くもない兄弟と骨肉の争いなど、自分には最も向いていないことではないか。

いかんせん、少年には熱意というものが欠けている。特に自分自身が関わることとなると、てんで駄目だ。

だがシャルクウの冷静な部分は、家督を譲るだけでは自分が食うに困る、と打算的に物事を見てもいた。

若隠居と洒落込ませて貰えればよいのだが、のんべんだらりと天寿を全うするおのれも想像が付かない。彼のように飽きっぽい人間は、自由人なり穀潰しの生活にも二年ぐらいで飽きるだろう。

よくない、これはよくないぞ、と思った。


(……肝試しの一つもすれば気も紛れるか)


朝餉の後、一杯の白湯を飲みながらシャルクウはそう決めた。

この軽率さに満ちた決断自体、二、三年前に読んだ本の受け売りだった。曰く、男は冒険して成長するとか何とか。

シャルクウはそういう少年――ウルク(混血を選んだオーク種の末裔)の学友に「貴様、人間だけは向いていないな」と断言される程度に――だ。

要するに芯がなく、それゆえに無茶をやらかす質の悪い若人わこうどであった。

里から歩くこと二時間、ようやく見えてきた社は――遠目にも異様な景色に彩られていた。

ぬめぬめと光を反射しているかのような、獣のはらわたに似た肉の塊が、周囲の木々と立ち並ぶようにして林立しているではないか。


赤黒い森など、初めて見た。


山の中腹に位置する件の社は、山々の表面を覆う森と棲み分けるようにして、極彩色の臓物を花開かせていた。

臓物、といったがそれは見た目の話である。人間のそれと比するには、大きすぎるのだ。図体のでかい巨人でもなければ、到底、躰の中に収まるはずもない。

ううむ、と気圧されながらも歩を進める。途中、老木よりも背の高い肉塊の目蓋が開き、目があったような気がした。

気のせいだと思いたかったが、鷹のように鋭い異形の眼球は、ぎょろりとこちらを睨んだままである。普通ならここで帰るんだろうな、とシャルクウは思う。

しかし少年は意地っ張りだった。


「よし、見てろ」


意気揚々と歩き出すまで、わずか五秒。

つまりシャルクウは大馬鹿ものであった。









はらわたの社、と原住民に呼ばれる聖域に引きこもって久しいが、この地を訪れる知性体には三つのパターンがある。


一つ、捧げ物と引き替えに病の快癒を祈る原住民――汎用臓器を包んだ肉袋を与えてやると、魔術的医療によって助かる命が多いらしいと知った。

二つ、聖域の維持条件や他の侵略体を巡る交渉――上手くいくときもあれば武力衝突に陥ったこともある。

三つ、邪神を討ち取ろうという復讐者/英雄志望者――話し合いで終わらぬ場合、人知れず養分になっていたのは言うまでもない。


これらに含まれぬものもいるにはいる。肝試しに来るような物好きである。

しかしそういう輩は大概、威嚇を兼ねた外皮の操作で腰を抜かして帰って行く。

それが侵略体の日常だった。

つまり彼女から見て、そいつはとんでもない不審者だったわけである。









化け物の瞳に睨まれながら、歩き通すこと三〇分(メートル法と時間単位は神話時代に渡来した伝統ある表記である)。

不揃いな石を積み上げた階段――傾斜は緩やかで、相当な手間をかけて整備されていた――を昇り、シャルクウは、はらわたの社の境内に足を踏み入れた。

まず目に付くのは、石畳のごとく地面を覆った鉱物の色。

踵で叩けば、こつこつ、とずいぶんいい音がする。一体どんな素材なのか、門外漢の少年にはわかるはずもなかった。

思いのほか、汁気がない。もっというなら、極端に湿気があるというわけでもなかった。


すっと頭上を見上げる。


日差しを透かすように、薄い皮膜が天蓋になっていた。これならば雨水が社の内部をぬらす、ということもあるまい。

社の内部は、意外なほど整理されていた。

たとえば道中に存在した鳥居(呼吸音がうるさいこと以外は普通の形状だった。まさか挨拶してくるとは思わなかったが)の配置は等間隔だし、

外周部にみっしりと群生する肉塊どもの印象と裏腹に、人為的な印象がぬぐえなかった。

ある種の美意識が反映された建築、とでも言えばいいだろうか。

屋敷の使用人に言わせれば、かつての邪神――今では対価さえ払えば病や傷を治してくれるそうだが――の住まう神域とのことだが。

ここに住んでいる奴の顔を拝みたくなるような、不気味でありながら無機質な空間である。


(邪神ってどういう姿なんだ)


肝心の所を聞き忘れていた。やはりお家騒動というのはよくない。いつもの自分らしからぬ失態ではないか。

ひとまず、中央に立てられた建造物へ向かって歩き出す。ざっと眺めた限り、その大きな屋根と骨組みは、床と同じ鉱物で出来ているように見えた。

近づくうちに、何かがぶら下がっているのが見えてきた――屋根から軒下にかけて、暴れ茄子のように果実をぶら下げているらしい。

まさかの建物は、果実をならす樹木の一種なのだろうか。

それにしても、動きやすい衣装と言うことで、旅着を選んだのは正解だった。部屋着に毛の生えたような衣装なら、もっと疲れていたはずだ。

すると、この得体のしれない場所で一休みする羽目になっていただろう。ぞっとしない想像である。

益体もない考え事をしていたから、気付くのが遅れた。無造作に視線をあげたとき、果実のようにぶら下がっていたものの正体がわかった。


人間の躰のあらゆる部位が、それ単体で生き物のように【飼育】されていた。

半透明の皮膜に包まれて、赤い心臓が元気に鼓動を鳴らしている。腸管がとぐろを巻いている。

人の腕が、足が、ぷかぷかと浮かんでいた。屋根のようなものの正体は、これらの肉塊を育てる果樹園だったのである。

あまりにも常軌を逸した光景に、思わず目を背けた。


「…………邪神ってすごい」

「すごいんだ?」


独り言のはずだった。

たった今、目を逸らした場所に視線を戻す――いつの間にか人影。

向かって正面のど真ん中、建物の扉とおぼしき部位から、音もなく女人が顔を覗かせていた。

およそ陰惨な光景に似つかわしくない少女が、ゆっくりと姿を現した。彼我の距離は、シャルクウの歩幅で一〇歩ぐらいだろうか。



一目で、ただ者ではないとわかった。



このあたりの土地では見かけない、南国を思わせる褐色の肌。金とも銀とも付かぬ色合いの、金糸か銀糸を束ねたような髪の毛。

そして何より、陽光できらりと輝く髪の合間、こめかみのあたりから生えた二対四本の角――翡翠で出来ているかのような、宝石めいた角だった。

どちらかと言えば小柄な女である。あどけない顔立ちから判断して、年頃はシャルクウとそう変わるまい。

だというのに、鮮烈なほどに異性を感じてしまった――柔らかそうな丸みを帯びた肢体、たおやかな体つき、こちらを見やる涼やかな面差し。

何より、目に毒だったのはその衣装だ。ぴったりと躰に張り付くような衣薄い衣で、袖のない、手足の付け根が露出しかねない際どいものだった。

一言で言うと、いやらしい。

桃色の唇に、ぞくりと背筋が震える。


「そこのお前、用件を手短に言え」


凛とした声は、小川のせせらぎのごとく心地よい。シャルクウは一目で少女に心奪われた。

たとえ周囲の景色が明らかに狂気の産物――腑分けした人体の中身が、色とりどりの果実のごとくぶら下がった果樹園――だとしても、

可愛いものは可愛いし、天女を思わせる造形美を持つ乙女の魅力は損なわれない。

そういうわけで少女の詰問に応えることも忘れ、思わず口走った一言がよかった。

ぽつりと零すには、大胆すぎる口説き文句。



「綺麗だ」



少年は恋をした。一目惚れだった。理由は特にない。日常の重苦しさからの逃避だとか、ちょっとした気の迷いだとか、魔性に幻惑されただとか、色々と理屈はつけられよう。

もちろんそんな生臭さを置き去りにするから、恋という奴はとびきり厄介なのだ。

あの褐色の肌と来たら、くらくらする。

チョコレート(創世神話に登場する天上の食物。蕩けるように甘いという)とは、きっとあの色濃い肌のように香るものに違いない。

そう、チョコレート色の肌。甘く香る神前の菓子。

つまり、美味しそう。

なんだろう、この表現はすごくよくない気がする――シャルクウ一五歳、この歳にして背徳感を味わっていた。

思春期特有の自意識過剰だったのは言うまでもない。


「……目的を、言え」


じれったそうな声に、やや怪訝そうにひそめられた眉。

それでようやく、シャルクウは自分が惚けていたことに気付いた。不覚だった。取り繕おうと口を開いたら、これまたひどい台詞が出てきた。


「興味本位の散歩だったけど、今は違うかな――あなたに興味がある」


言い切ってから、これはどちらかというと失言だよな、と気付く。

もちろん少女は「何言ってるんだこいつ」とでも言いたげに眉根を潜めた。そして、




次の瞬間、シャルクウから見て死角の部分、背中側から勢いよく何かが飛び出た。




触手だった。皮を剥いだ獣の筋肉のような、雄々しく隆起する赤い肉。一本一本がシャルクウの腕ほどもあるそれが、シャルクウと少女の間合いを詰めるように伸びて来ていた。

なるほど、あの衣装のようなものの機能性が理解出来た。

オルク(海の民が祭りの時期に喰らうという海洋生物。昔は武士に討伐されていた)よろしく触手を出すためにわざわざ布地の面積が小さくしてあるのだ。皮膚の露出面積が機能性に繋がる。

そんな不思議な生き物もいるんだな――この少年、恐怖を感じるよりも先に見慣れぬ衣装の分析を始めていた。


「一つ、訪ねても?」

「……」


無言で威圧感あふれる視線を返してくる少女――どうやら喋れという意味らしい。これほどやりにくい相手もいないな、とシャルクウは内心、嘆息している。

しかしよく考えてみるとそもそも相手は、はらわたの社に住んでいる存在なのだ。もしかしたら巫女の類なのかもしれない。

すると多少の浮世離れはあって然るべきでは、と自分を納得させる。ちょっぴり暴力的な形状の触手を背中から生やす、きっと田舎にはこういう神秘の持ち主もいるに違いない。

うんうん、と真顔で頷きながら、軽やかにシャルクウの口が開かれた。


「その触手――背中からあなたが生やした物体を使って、俺をどうするつもりなのか言語で説明して貰えると助かる」

「威嚇だ。場合によっては、可哀相なことになる」


想像以上に危機的状況だった。シャルクウは泣きたくなったので、眉を広めて悲しそうに溜息を吐いた。

見れば、四本の触手のうち、二本が首切り刀のような分厚い刃に変化している。

残りの触手は、先端が筒状の構造に変化しているから、吹き矢か何かを飛ばす仕組みなのかもしれない。


「丁寧な解説ありがとう。落ち着いて聞いて欲しい、俺は敵じゃない」


武器を持っていないことを証明すべく、ゆっくりと両手を頭上に挙げた。

しかし鞄は肩紐で引っかかったままだったので、少女はそちらを警戒している。


「以前、エルフの魔術欺瞞に引っかかって爆殺されかけた。そのまま動かないで」


一々、説明してくれるとは律儀な娘である。

何故かシャルクウは少女に好感を持ち始めていた。思いのほか、自分の好意は安いらしい。


「鞄の中身も見てどうぞ。怪しかったらひと思いにやればいい」


この期に及んで表面上は気丈に振る舞えている自分を自画自賛――鞄が触手によって奪い取られ、少年の目前で見聞され始めた。

器用にも、本体から離れた触手だけで中身を漁っているではないか。

ひょっとして触手の方が本体の生き物なのかこの娘。疑念を抱き、シャルクウは戦慄した。

それはそれで躰の構造が気になるけど。


「これは、何?」


触手がひっつかんだ雷鳴鳥の燻製を鼻先に押しつけられる。雷鳴鳥は雷鳴鳥だろう、と思いつつ、見た目も悪いし世間知らずの子なら知らなくても仕方ないかな――と納得。

とりあえずシャルクウは説明することにした。


「町方でよく売られている家畜の保存食。肉質がよくて美味い」

「……食用だったんだ、これ」

「見た目は悪いけど、美味しいよ。何なら一つ、どう?」


人間の掌に似た足が可食部位、という奇っ怪な食材を前に、少女は形容しがたい顔になった。

いきなり異境に迷い込んだことを思い出したように、視線を左右に泳がせている。

ぽつり、と問いかけ。


「……捧げ物?」


そうだと言われたら受け取らねばならない、という悲痛な決意が感じられる声だった。

シャルクウは目ざとい少年だったので、目を逸らしながら真実を告げた。


「いや、その……俺は手荷物、あらためられてるだけだし、無理して食べなくてもいいんじゃ……?」

「あっ」


何かに気付いたかのように、うめき声を上げたきり、冷徹な顔に戻る少女。

しかしその褐色の肌には、うっすらと冷や汗が浮かんでいた。

おそらく、ことの経緯をど忘れしていたのであろう。この娘、自分が思っているより間が抜けているのではないか。

少女の背中から伸びた触手に依然、生命を脅かされつつ、妙に冷静な雑感を残すシャルクウだった。









結局、誤解が解けるまで一時間かかり、その間、シャルクウはあの手この手で少女の理性に訴えかけ続けた。

その度にどうしようもない勘違いが生まれ、少女が勝手に混乱し、事実がわかった途端に取り繕う生暖かいやりとりが繰り返されたのは言うまでもない。

日も上がりきった真昼時、シャルクウと少女は並んで神社(人間の手足や臓物のようなものがぶら下がっている謎の施設)の階段に座っていた。

この一時間あまりで、シャルクウはすっかり、それらの異物に慣れてしまった。

何故、年端も行かぬ少女がこのような異界に一人で住んでいるのかは気にかかるが、そもそも状況が異常すぎてそこから訪ねるべきなのか迷う。

第一、考えても見て欲しい。ほっそりした肢体の、美しい少女の背筋や太股が嫌でも視界に入ってくるのだ。

ちょっとしたお肉の一つや二つ、気にならなくなって当然ではないか。


少女は先ほどから、こちらに興味を失っているようだ。特に用事もない物見客など、相手するまでもない、といったところか。

すっと立ち上がり、シャルクウは勝負に出た。


「あ、そういえば自己紹介がまだだった。俺はシャルクウ、あなたは?」


駄目元で名乗り、右手を差し出した。少なくともこの地方において、右手での握手は親愛を意味する。

神話時代からエルフの伝承と共に続く、古い古い風習の一つである。


「人類帝国文明再現分遣船団所属、環境改変要塞第七号。そっち風の名前は……アルジャッヘ」


仰々しい肩書きだった。

しかも意味が半分もわからなかった。それも当然、シャルクウの知らない世界の、遠い遠い昔の言葉が混ざっていたからだ。

その悪戯心も含意も知らぬまま、ただ、少年は嬉しさに頬をほころばせる。


(名乗って貰えた。よし、幸先いいぞ俺!)


炒った小麦のような、色濃い手が自分の指先を包み込む。そのきめ細やかな感触に、吃驚してしまいそうになった。

差し出された少女の掌は、想像していたよりずっと温かくて――その熱に包まれるだけで、シャルクウの心臓はどくどくと脈打ち、鼓動は天井知らずに跳ね上がる。

思わず、勢いでとんでもないことを口走っていた。


「あなたに惚れたんだけど、俺、どうすればいいかな」


アルジャッヘは、ぱっちりした目蓋を何回か瞬かせた後、首をひねって視線を天井へ向けた。

ぐるぐる、ぐるり。眼球の動きがざっと二周した頃、こちらに視線を移す。

目が据わっていた。


「それを聞いた私にどうしろと?」

「わからないので言ってみたんだ。どうしようもないな、これ……」


半ば喜劇めいた、しまらないやりとりが出会いだった。

それは、うららかな春の日差しの終わる時期、生命あふれる夏を控えた季節のこと。

少年は幸せだった。恋を知ったからだ。




しかし少年はまだ、怪物の痛みを知らない。


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