妹系
小岩井は、スカウト先のキャバクラの店紹介を始めた。
「小箱なんだよね。せいぜい、客は15人くらいしか入らないんだよ。でね、いまの店のコンセプトが、ドレス系なんだけどね、ちょっと異色な人を入れようと思っている訳よ」
私がいま勤めている店もドレス系だが、ほとんどが女子大生というアルバイト感覚な人が多い。そのため、店の女の子も楽しめるようにと、コスプレデーが月に4回もある。人によっては、そのコスプレデーしか出勤しない子もいるくらいだ。
ちなみに、私もコスプレは大好き。かといって、コスプレ喫茶では働きたくない。といっても、以前は、秋葉原のコスプレ喫茶では働いた経験がある。でも、あのときは、客のひとりにストーカーされて、迷惑をした経験があった。
小岩井は説明を続けた。
「異色な人というのはね、ドレスで出せる大人びた雰囲気ってあるでしょ。それとは真逆な感じ。そう、妹系な感じというか、今でも言えば、萌え、っていうの?最近のお客さんの中には、その萌えが好きな人がいてね。かといって、店全体を変えてしまうほどの人数がいるわけでもないし、女の子もそれほとしたがらない。それにね、店全体を変えてしまうと、これまでの客層は間違いなく逃げると思ってるわけ」
たしかに、私は「妹系」とも、「萌え系」とも呼ばれたことがあるし、そう呼ばれることがうれしい。しかも自覚がある。だからこそ、コスプレ喫茶でも働いていたわけだし。
「少し考えさせてください」