新宿
<第1話>
私は新宿東口でひとりでウィンドショッピングをしていた。
アルタや丸井、高島屋などを見ては、街角の小さなショップ等も見て、楽しんでいた。
すると、「さくらや」の近くでいきなり男が声をかけてきた。
「ねえ、ねえ。君、かわいいね」
馴れ馴れしいので、無視をしていたが、
「どこの店で働いているの?」
と続ける。古めかしい野球帽をかぶり、サングラスをかけて、肌が不自然に日焼けしていた。
服装はラフな格好で、ジーパンに白のポロシャツだった。
ナンパかと思って、無視しようと思っていると、その男は、何かをわざと落した。思わず目が行ってしまったが、それはピンクのハンカチだった。
「あ、あれ、ハンカチがどこかに。。。。」
わざとらしい演技だったが、そのパフォーマンスがキモ可愛い感じだった。
思わず笑ってしまった。
「あ、笑ったな。じゃあ、僕の話を聞いてもらおうかな。そうじゃないと、かっこわるくて、この街を歩けないよ。僕は一生、笑い者だ」
と言ってシュンとしていた。
私はそのシュンとした姿を本気とは思わなかったが、可愛く見えた。
私よりは確実に年上だろう。おそらく一回りくらいちがうはずだ。
でも、そのやけに可愛い感じが、親近感を与えくれた。
「じゃあ、話を聞くくらいなら」
そう私は答えた。
「僕、こういうものです」
差し出した名刺には、「伊藤さとし」とあった。
会社名は「ハートフルライフ」。
わざとらしい名前だった。
おそらく、流れからいって、どこかのキャバクラか、風俗店のスカウトマンだろうな、って思った。
「ちょっとだけお茶しない?」
話を聞くと言った手前、断れなかった。
「まあ、お茶くらいなら」