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僕の森

作者: 能勢恭介

  一、


 アパートの前の道が、森になっていた。

 朝、いつも通りに目覚めたはずなのに、……僕は、まだ夢を見ているのだろうか。

 首をかしげながら、僕はとりあえず冷蔵庫をあけ、ミルクを一杯飲んだ。

 二杯目のミルクをあおりつつ窓を見ると、やはり、窓の外は森なのだ。

 そんな馬鹿な!

 大体、窓の外は細い路地に面していて、路地の向こうはこぢんまりとした住宅街が広がっているはずだ。そこに住宅街がなければおかしい。

 なのに、……窓から見えるのは、あくまで涼しげに、さわやかに風にそよぐ、広葉樹の森なのだ。

 コップを水道ですすぐと、僕はベッドに腰かけた。

 さほど広くもないこのアパートの二階が、部屋が、……白壁の僕の部屋は、心なしかグリーンのフィルターをかけたように、うっすらと染まっている。

 僕はもう一度、窓辺に立ち、どこまでも澄んだ空の下で枝を広げる木々を眺めた。ハルニレ、ドロノキ、カエデ、……思いつく限りの樹の名前を、頭に浮かべた。

 いや。この際樹の名前などはどうでもいい、そもそも、なぜ昨日までは道路だった場所が、いきなり森にならなければならないんだ!

 頭が果てしなく混乱していた。

 机の上で時を刻み続けるアラームクロックのねじを巻く日課のことさえ忘れ、そして、そいつが八時きっかりに、派手な音を鳴り響かせるということすら、僕は忘れていた。

 !

 時が来た。

 部屋いっぱいに、一昨年の大学祭で買ったねじ巻アラームのベルが響き渡る。

隣の部屋からも、時計が目覚めた音が聞こえる。

 八時。月曜の一講義目は、九時一○分からだ。あと三○分以内に部屋を出なければ、桜坂の電停を八時四三分に発車する市電に乗り遅れる。それはすなわち、出席重視のサカモト教授の講義に遅刻することになるのだ。

 僕は否応なく現実に直面する。

 今度は右隣りからラジオが聞こえ出した。八時五分から流れる国営放送の天気予報だ。各地の予想天気まではっきりと聞き取れる。このアパートはしゃれた造りだが壁が薄い。

 試しにもう一度窓を見る。やはりそれはきちんとそこに根づいていた。

 僕のどこかが、その森は覚えがある、と囁きかける。だけど、僕の大部分は、森がそこにあることだけを認識していて、どこかの囁きに気がつかない。

 着替えを済ませてもやはり森はそこにあるので、僕は仕方なく、『スカイブルー』を一本箱から取り出し、これまた去年の大学祭で買った外国製のオイル

ライターで火を点ける。ふだんは点きが悪いライターが、今朝に限って一発で点火した。

 いいことがあるのか、それとも悪いことかな。

 ちりちりと音を立てて、『スカイブルー』は、青い螺旋階段を窓辺にたな引かせる。マイルドな味が、僕のふわついた心をなだめてくれる。半分ほど喫ったころには、もう森がそこにあるのが当然であるような気がしてきた。そもそも前の道は車はほとんど通らないし、道自体、空沼病院のすぐ下で行き止まる袋小路だ。誰も困る奴はいないだろう。

『スカイブルー』を一本灰にし、その名の通りの空 色のパッケージを胸ポケットに入れ、カバンにルーズリーフを突っ込むと、僕は部屋を出ることにした。軋むドアに鍵をかけ、薄暗い階段を降り、僕は森に出た。

 驚いたとに、アパートの出入り口からは、きちんと森の中に通路ができていた。足元を見ると、森はそこに突然ぽつんと、まるで誰かが置いたかのように現れたらしく、アスファルトの路面は土の地面になっている。それは二階の窓から落とした植木鉢の、あれに似ている。

 ペッパーミントにも似た森の匂いを、胸いっぱいに吸い込み、そのまま十歩も歩くと、森は唐突に終わり、足もとはアスファルトの路地に戻っていた。

 振り返ると、僕のアパートの前だけが、森だった。

 本当に、誰かがアパートの前に、森の植木を置いたかのようだ。

 僕は何だかおかくしなり、ひとり笑いをかみ殺しつつ桜坂の電停に向かった。

 ただ、ふと振り返った森が、僕に笑いかけたような気がして、少々妙な感覚を覚えた。

 桜坂の電停へは、アパートの前の道をハルニレ公園で右に折れ、そのまま十分も歩けば、電車通りの月森つきもり通りだ。道端ではセイヨウタンポポが黄色い花をつけ、空地にはセイタカアワダチソウが空を仰いでいる。

 北緯五○度の夏の扉が、もう半分開いている。

 そう、桜が散り、樹たちの葉が鮮やかな色をつけ始めると、この地方はあっという間に夏が来る。その様は、葉が色づき、一枚の最初の秋が散ると、もうあっという間に冬が訪れるスピードと似ている。ここでは、冬以外の季節は、駆け足で過ぎていくのだ。

 大橋時計店の角を左に折れると、鉄の車輪と、モーターの唸る音が耳についた。

 僕が乗る電車とは逆方向、桜坂線を北へ、つまり、街の西側に衝立のように広がる山の裾野へ、そこに広がる森へと向かう、下りの電車が、電停に到着していた。

 桜坂線の終点は、西里にしのと大学の森林生態研究所がある森の中だ。

桜坂を出た下り電車は、空沼病院の電停を過ぎると単線になる線路を、数えるほどの客を乗せ、スローペースで走る。

 もともとこの先は、空沼病院のほかは全寮制の高等学校と、例の研究所があるだけで、人自体が少ないのだ。それでも、交通局が桜坂線の空沼病院以北を廃線にしないのは、おそらく、かつてこの線区が、開拓時代の街の産業を担っていた森林資源と、軟石を運ぶ森林軌道の名残りであるからにほかならないだろう。

 すっかり花が散り、青々とした葉を茂らせた桜並木の坂道を、上りの電車が下ってくる。

 下り線とは違い、上りの桜坂線は、沿線に中央図書館、市役所に中央駅があることから、乗降客が多く、電停には列ができている。僕はいつも、列の中間くらいに並ぶ。

 軋むドアが開く。

 僕は電車に乗るとき、いつも運転台がよく見える、最前席に座った。ここだと、十五分ほどの通学時間も、運転士の仕事を見ているだけで退屈しないからだ。

 ブレーキ解除、ノッチを力行位置に入れる。アルトリコーダーのような警笛を一回鳴らし、電車は動き出す。

 僕が電車に乗る時間帯は、制服を着た生徒たちの姿はなく、通勤客が多い。

彼らが通学生と違うのは、どこか顔に生気が感じられないことだろう。常々僕は、そんな大人にはなりたくない、と思っている。

 でも、いつの間にか僕は二○歳を過ぎていた。

 進学のために住み始めた、地方最大のこの街の水にも、ようやく慣れた。

 僕が生まれ育った街は、この街から特急列車で二時間ほど、さらに北の盆地にある。この国でもっとも冬の厳しい街。軍の駐屯基地があるためか、この街……西里市より重い雰囲気が包む。けっして嫌いではなかったけれど、開放的なここの方が、僕は好きだ。

 電車は『中央図書館』を発車した。僕が降りるのは、次の電停『大学前』だ。

今日は順調に電車は走っている。ごくまれに、軌道を塞いだ車のために、ダイヤが乱れることがあるのだ。僕はさほど時間を気にする人間ではないが、サカモト教授の講義がある日に延着するのだけは、勘弁してもらいたかった。

 ブレーキが細く甲高い悲鳴を上げる。

 電車はほぼいつも通りに、『大学前』に到着した。

 ここで何人か、僕と同じくらいの年格好の連中が電車を降りる。どれも僕と同じ学生だ。

 僕が通う西里大学……例の森林生態研究所を運営している……は、電停から歩いて三分ほどのところにある。三分も歩かせておいて、『大学前』とはちょっと詐欺的だ。もっとも、地下鉄の駅名にある『区役所前』などよりは、まだましなほうだろうが。

 スズカケノキが、風に揺れている。

 大学へ通ずる石畳が、ちょっと鋭く日の光を反射していた。その上を、いくぶん乾いた靴音が、いくつもいくつも歩いていく。

 一講義目の教室へ向かう学生たち。

 誰も、どこか、僕に似ている。

 僕も、どこか、彼らに似ている。

 緊張感のまるでない、モラトリアムな表情。

 初夏の風が吹き抜け、僕は、もうすぐ長袖の要らない季節が来ることを、実感する。

サカモト教授の講義は社会学で、彼の専攻は「比較考現学」という、あまり耳慣れない分野だ。詰まる所、僕らが毎日生活していく場合、現代の社会生活や文化が、どれほど僕たちの行動を制限し、僕たちに影響し、僕たちをどう変えて行くのか、そんなことを諸々外国などと比較して研究する学問らしい。

 サカモト教授はいつも、くぐもった声でうつむき加減にしゃべり、絶えず何かを悩んでいるような表情で講義を進める。同じ文学部でも、僕のゼミナール担当のミナミサワ教授……いつも陽気で小難しい理論を嫌っている……とはエライ違いだ。

D号館の二○一教室は、僕が席に着いたころには、もう半分ほどが埋まっていた。出席重視のため、やむなく出席する学生が多いのだ。でも、僕は何となくあの変人教授が気に入っている。じっくり聞けば味が出る、そんな講義内容だからだ。それに、彼の学問へのアプローチには、しばしば音楽的表現が用いられ、多少は難しくも、その理論は興味深い。ただ、一度でも欠席すれば、講義はさっぱりわからなくなってしまうのが、難点といえば難点だ。

 カバンからルーズリーフを取り出し、鉛筆をロールさせていると、友人で同じゼミナールの、松ヶ枝湧一まつがえゆういちが声をかけてきた。彼もこの講義を履修している。松ヶ枝は、サカモト教授のこの講義があまり好きではないらしく、「選択必修だから、しかたない」とぼやきをもらすことがしょっちゅうだ。今朝も、しぶしぶ出席するのが見え見えの顔をしている。聞くと、昨夜は彼女の家に泊まりだったらしい。一昨年……一年のときに知り合った彼女とは、松ヶ枝は本当に仲がいい。べたべたという雰囲気ではない。もうそんな時期は終わったのだろう。

始業のベルが鳴り響く。サカモト教授は、律儀な講義の割に、始業時間ぴったりには教室に来ない。どういうわけか、四分遅れでやってくるのは、彼の研究室を始業時間ぴったりに出てくるからに違いない。

 始業ベルが鳴ってから、僕の時計で三分四七秒たった。教室の扉が静かに開く。途端に、ざわめいていた教室が水を打ったように静まる。気難しい初老の教授の入室だ。これから九○分間は、筆談を用いなければ松ヶ枝と会話はできない。僕は新しく、松ヶ枝との筆談用に、ルーズリーフを取り出した。


 今日は午前の講義が終わると、午後は丸々空いている。

 サカモト教授の講義のあとは、これまた退屈な倫理学に出席し、僕は松ヶ枝と別れ、大学正門から一分ほどの喫茶店『コニファー』へ向かった。一昨年から行きつけの『コニファー』は、昼食ラッシュの学食よりはるかに空いていて、なおかつ料理も旨い。気になる値段も、学食と比べて決して高くはない。つまり、穴場というわけだ。松ヶ枝と来ることも多かったのだが、ここ一年ほどは、夏海さん……松ヶ枝の彼女だ……と一緒に弁当を食べることが多くなり、昼休みは必然的に僕と疎遠になった。一応僕は美術部に在籍している。しかし、廃部寸前の部室には、部員など滅多に来るはずもなく、また、ゼミの友人たちは、最近では学校に来ること自体が希で、結局僕は一人、昼食をとるはめになるのだ。

 日替りランチを頼み、いつもの窓際で『スカイブルー』に火を点けた。今日はなぜかオイルライターの点きがいい。

 ふと、僕は鼻腔の奥に、ペッパーミントに似た香りを感じた。

 そうだ、あの森は、一体……。

 今朝、唐突に現れたアパートの前の森が、僕の中によみがえった。

 今思い出すと、あの森が本当に存在していたのか、あやしく思えてきた。大体、そんなことがあってはおかしいのだ。突然、道路に森が生えてくるなんて……。

 しかし、確かに僕は木々のざわめきを聞いたし、樹皮の温もりにも触れ、そして森の香りすら感じた。僕は寝惚けていたわけではない。だとすると、アパートの大家か誰かが、あそこに森を植えたのだろうか。

 そんなはずもない、と、僕のどこかが瞬時に否定した。

 テーブルに、チキンライスとサラダのセットが運ばれた。ペッパーミントの香りは、食欲をそそるチキンライスの香りに消えた。僕のどこかが、僕が以前からあの森を知っている、と告げる寸前に、食欲が僕のすべてを支配していた。



  二、


 三日が過ぎた。

 相変わらず、森はそこにあり続けている。ただ、一つはっきりしたのは、どうやら僕にしか、あの森は見えないらしいということだ。

 昨日、美術部の友人が僕の部屋を訪れた。野瀬という名のそいつは、もう何度も僕の部屋を訪れている。しかし、彼は森の存在については、一切触れなかった。さり気なく、僕が風景の変調について訪ねても、「相変わらず、殺風景な部屋だ」という返事が返ってきただけ。要するに、彼には森が見えていなかったのだ。

 僕にしか見えない森。

 僕の頭が、どうかしてしまったのだろうか。

 森がそこに現れてから三日目は、朝から雨が降っていた。新緑に降る雨は、木々を鮮やかに潤す。緑雨とは、まさにこのことだろう。

 昨日僕を訪れた野瀬から、たまには美術部の部室へ来るように言われていた。

新入部員も何人か入ったのだという。廃部寸前だった部にも、かつての活気が戻りつつあるのだそうだ。

 そんな話を聞いたからではないが、午後の講義が終わったあと、僕は久しぶりに、ボックス棟へ足を運んだ。

文化系クラブすべてが入るボックス棟は、大学図書館の裏手にある。コンクリート打放しの四階建てだ。異常なほどに靴音が響く階段を、三階まで上り、廊下を突き当たりまで行く。突き当たりの右側が、美術部の部室だ。

 ちらつく蛍光灯が耳障りな音を立てていた。すれ違う学生たちは、やはりどこか僕に似ている。廊下突き当たりの窓から、湿った風が吹き込み僕の頬をなでた。

 部室の扉は、きしみつつ開いた。さほど広くもない部屋には、絵具と溶き油と、そして少しだけ甘い香りが漂っていた。キャンバスに向かう野瀬。談笑する部員たち。そして、

 そして、部屋の隅に、緑色のキャンバスが、イーゼルの上で佇んでいるのが、僕の目に飛び込んだ。

 それを既視感と呼ぶことを、僕は知っていた。部室の隅に佇む緑の絵を、僕は知っていた。

 白い壁、くすんだ木製の机、ペン立て、所々塗装の剥げた窓枠と、両開きの窓。窓の向こうで風に揺れる新緑の木々。それはまるっきり僕の部屋の風景だ。そしてキャンバスに描かれている森は、まさに、僕が三日間見続けている、あの森そのものだった。いや、それ以前に、僕はこの絵を見たことがある。いつか、どこかで……。

 僕は、部室に足を何歩か踏み入れたまま、棒立ちになっていた。僕の異変に気づいた野瀬が、声をかけてくれた。彼の声は、僕をキャンバスの中からこの部室へと呼び戻した。

 僕は礼の代わりに、緑の絵を、森の絵を描いたのは誰かと野瀬に尋ねた。聞けば、描いたのは今年入った新入部員だという。彼女……笹野未樹という部員らしい……は、今日はもう部室へは来ない。森をスケッチするために、一人、森林生態研究所まで画材を抱えて行ってしまった。

 野瀬は、それだけ言うと、また忙しなく筆を走らせ始めた。

 この雨の中をスケッチに行った彼女。

 僕の部屋に来たこともない彼女が、どうして僕の窓を描けたのか、そして、

僕にしか見えない森を、なぜ描くことができたのか。

 傘を雨粒が叩いている。

彼女のミタメを野瀬から聞くと、僕は怪訝そうな部員の視線を背に、部室をあとにした。

 今から森林生態研究所へ向かったとして、その子に会える保証など、どこにもない。でも、僕の足はごく自然に、電停へ向いたのだ。つき動かされる衝動、何かをひしひしと感じながら、傘をもつ手に、力が入っていた。

 パンタグラフから火花を散らし、月森行きの電車が停車する。

 月森。

 森林生態研究所は、枝越しに月が美しく見え隠れする広葉樹林の中に建っている。僕は一度だけ、松ヶ枝と、夏海さんとの三人で行ったことがあった。

 森林生態研究所、などと大層な名前がついているが、実際は、森林資料館とでもいった雰囲気の施設だ。学生に限らず、誰でも入ることができる施設だが、さほど面白い設備があるわけでもなし、野鳥の観察や、心が荒んだときに訪れると、いくぶん癒された気がするような、そんな所だ。

 電車が桜坂を上り切った。空沼病院を過ぎ、線路が単線になると、道の両側は森になる。

 車内には、僕と運転士以外に客はいない。いくつか電停を過ぎても、乗る人間も降りる人間もいなかった。

 線路が大きく左にカーブした。

 終点は、カーブを曲がりきって、すぐだ。

 ブレーキが鈍い金属音を立てる。電車は終点の「月森」に停車した。電車を降りた僕は、傘を開く。ぱらぱらと、雨滴が軽快なリズムを奏でる。

 森林生態研究所は、淡い霧の中に煙っていた。レンガ積みの建物で、電停からエントランスまでは、若干の上り坂だ。

 僕の背後で、何かが爆ぜるような音がした。パンタグラフから火花を散らせて、電車が折り返していく。一時間に一本。次に街へ向かう電車が来るのは、四時過ぎだ。

 傘をたたみ、研究所のガラス扉を開く。管理室は白熱灯でぼんやり浮かび、ネクタイを緩めた若い男性が、ちらりと僕を見遣る。学生証さえ見せれば、あれこれと聞かれる必要はない。

 彼女がいるとすれば、おそらく二階の展望室だろう。展望室からは、森の奥深くまで、よく見渡すことができるからだ。僕がスケッチをするとすれば、やはり展望室へ行くだろう。

 二階へ上る階段の壁には、研究員や、森が好きな人たちの撮った写真や、西里大学出身の著名な画家の絵が、いくつかかけられている。館内に響く、湿ったような靴音を聞きながら、展望室へ向かった。

 その子は、捜さずともすぐにわかった。

 窓へ向いた椅子に座り、背を丸めつつ、鉛筆を忙しそうに動かしている。白いうなじがくっきり見えるショート・ヘア。真っ白なブラウスが、彼女のイメージに直結する気がした。

「こんにちは」

僕は何の躊躇も感ずることなく、彼女に話し掛けていた。

「笹野、さんでしょ、美術部の」

 円いひとみが、潤んだように僕を見つめている。

「夏森、です。美術部の……。知らないと思うけど」

「はあ」

 彼女の第一声は、警戒心が少し込められていた。

「野瀬から、笹野さんがここに来てるって聞いてね、」

「はあ」

「あの……、窓から森が見える絵を描いたの、君でしょ、」

「はい、私ですけど……」

 笹野未樹は、握っていた鉛筆を、くるりとロールさせた。

「あの絵、……、なんて言うのかな、ちょっと、気になって、ね」

 僕がそういうと、彼女は何も言わず、じっと僕を見続けた。

 大体、何と説明したらいいのだろう。君が描いた絵は僕の部屋だ、まるで三流の口説き文句みたいじゃないか。

「あの絵、ですか」

 未樹は全く表情を変えず、あまり抑揚のない口調で言った。

「……あの絵、私が高校生の頃に一度描いたんです。でも、あんまりよくなかったから、」

 言葉の合間に、雨が若干強くなった。

「あんまりよくなかったから、もう一回描き直そうと思って」

 未樹はそう言うと、口もとに少し微笑みを浮かべた。どこかはにかんだような微笑みは無垢で、そして僕は、この子にも既視感を感じた。やはり、僕はどこかでこの子に会っている。はっきり感じた。

「夏森さん、でしたっけ、……どこかで、会いませんでした?」

 僕の既視感は、彼女の一言で、一気に現実性を帯びた。やはり、彼女とはどこかで会っているのだ。

「……夏森さん?」

 彼女に呼ばれ、僕ははっとした。

「今度、部室へ行くから、その時また、あの絵のこと、聞かせてもらえるかな」

「はあ……、いいですよ。未完成ですけど……」

 僕はこれ以上、彼女と話すことができなくなっていた。なぜかはわからない。でも、思い出すべき何かが、僕のどこかで、微かな物音を立てているのだ。すぐにでも部屋へ戻らないと……、そうすればその何かが、すっと出てきそうなのだ。

 僕は、彼女に別れを告げると、足早に森林生態研究所を後にした。

 雨は変わらず降りつづけていて、雨脚は来たときよりも強くなっていた。

 時計を見ると、帰りの電車がここへ来るのは、あと四○分も先の話だった。


 僕は部屋へ戻ると、机や物入の中を徹底的に調べあげた。

 彼女の顔は、だいぶん前に、この部屋で見たことがあったのだ。それは、写真などの類いではない。僕のスケッチブックに、確かに彼女は描かれているはずなのだ。そのことに気づいたのは、電車が空沼病院を過ぎた転轍機で、大きく揺れたときだ。ふっと、記憶が降りてきたのだ。

 あった!

 まだ美術部に部員が大勢いたころ、僕がインスピレーションで描いたスケッチ。

 僕は、音楽や、夢や、ふとしたことから、突如映像が頭に浮かぶことがあった。それはどこか知らない街角だったり、森や野原や、喫茶店の画だったりする。すると、僕はそれを描かずにいられなくなる。彼女のスケッチも、そうしてふと浮かんだ画の一つだった。

 笹野未樹のあの微笑みが、スケッチブックの一ページに描かれていた。

 偶然?

 いや違う。確かに、僕は彼女に会ったことがあるはずだ。そのことは、物入の奥から出てきた一枚の小さなキャンバスが証明してくれた。

 長いこと、その絵を僕が持っていることなど、忘却の彼方に置き忘れていた。今、僕は窓から見える森を、両手にしていた。

 緑の絵。

 確か、この絵のタイトルは、そんな名前だった。

僕の中でいくつもの記憶のカケラたちが、次々と連鎖的につながっていく。

 『緑の絵』を僕が初めて目にしたのは、僕が入学した年の大学祭だった。市民サークルの展示会が学内で開かれていて、そこで僕はこの絵を見たのだ。高校生の女の子が描いたという『緑の絵』は、僕の部屋そっくりそのままだった。ただ一つ、窓の外の景色を除いては。こんな偶然もあるんだな、そう思い、ちょうどチャリティバザーも兼ねていた展示会で、この絵を買った。

 そうだ、あのとき彼女にも会っている。会っている、というか絵の作者だということを、誰かに教えられた。顔を遠めにちらりと見ただけだった気がするが、彼女の無垢な表情は、きっと僕の中に残ったのだろう。

 でも、あんまりよくなかったから……。

 売ってしまったのだろうか。

 窓の外を見る。

 ?

 森が、少し霞んだ気がした。

 雨に煙ったのかと思い、もう一度見る。

確かに、森自身が、うっすらと霞んでいる。まるで、昔博覧会で見た出来損ないの立体映像のように。

 『緑の絵』を、壁に立てかけ、僕は窓際まで寄る。

 出来損ないの立体映像は、元どおりの実体に戻っていた。

 僕は首をかしげつつ、『スカイブルー』に火を点けようとした。すると、オイルライターは以前の点きの悪さが蘇っていた。



  三、


 森が窓の外に現れてから、二週間が過ぎていた。

 あれから彼女……笹野未樹とは、美術部の部室で三度ほど会った。未樹は、首をかしげながら、緑のキャンバスとにらめっこを続ける。

僕が彼女の『緑の絵』を買ったことは、二度目に部室で会ったときに話した。本当は、話そうかどうしようか迷った。さんざん迷った挙句、結局打ち明けた。僕が『緑の絵』を持っていることを知った未樹は大層驚き、そして、以前どこで僕と会ったのか理解し、納得していた。

 部屋の窓の外に現れた森と、彼女との関係。僕は新たな事実を知った。未樹が美術部に入部した日は、まさに僕のアパートの前に森が現れた日だった。僕にしか見えないあの森の謎を解く手がかりは、彼女が握っている気がしてならない。

 未樹が二枚目の『緑の絵』を完成できないのは、画面に何かが足りないからだという。

 僕が持っている『緑の絵』には、一脚の椅子が描かれている。

 窓際の、左側。

 机と同色の、軋み出しそうな椅子。

 未樹は、椅子がくせものなんだと、円い目を細めながら呟いた。

 森はというと、相変わらず窓の外にあった。葉の色は色を増し、鮮烈さを失いつつある。次第に、こなれた、落ち着いた緑色に変化していく。

 西里は、この一週間ですっかり夏の色が濃くなった。電車も窓を開けて走ることが多くなり、大家の飼っているポチも、木陰……僕しか見えないあの森ではなく、大家の庭にあるりんごの木……で昼寝する姿をよく見かけるようになった。

 暦は、六月中旬を既に過ぎている。あと一月もすれば、千キロも南の首都に負けず劣らない、猛暑がやってくるのだ。

 森が現れて二週間と少々が過ぎたある日、久しぶりに松ヶ枝と『コニファー』で昼食を共にした。

 店内のシーリング・ファンが、ちょっとだけ回転が速くなっていた。

 僕が『スカイブルー』に火を点けると、松ヶ枝はあからさまにイヤな顔をした。もちろん冗談なのだが、僕が煙草を吸うたび彼は禁煙を即す。松ヶ枝の言い分はこうだ。

煙草なんか吸ってると、いつまでたっても彼女なんかできないぜ。

 全く余計なお世話というもので、コーヒーも飲まない僕の唯一の嗜好品にケチをつけるのは、松ヶ枝に、夏海さんと別れろ、と言うくらいむちゃなことだと彼は気づいていない。

この日の日替りランチは、マスタード付きのソーセージとトーストのセットだった。あの黒くて苦い液体を飲めない僕は、大概いつもミルクだ。ミルクを飲みつつ、松ヶ枝の近況報告を僕は聞いていた。

 夏海さんは、来週のゼミ発表を控え、あんまり松ヶ枝の相手をしてくれない。

 兄貴が車をくれると言っているが、どうしようもないポンコツだ。

 他愛もない話が延々続き、日替りランチが僕の胃に収まったころ、松ヶ枝はにやりとして、僕にある話題を切り出した。

彼がどこからか仕入れてきた噂話。……僕と誰か知らない女の子が、虹の丘公園を仲良く歩いていたのを、知り合いが見た。

 僕はミルクを噴き出しそうになった。

 誰よ、お前、いつの間にそんな仲のいい女の子見つけたのよ。

 鼻にミルクが入って苦しむ僕に、松ヶ枝は至上の笑顔で尋ねる。やれやれ、誰から聞いたのか、事実は少々歪曲している。

 その女の子というのは、おそらく笹野未樹のことだ。確かに、僕は虹の丘公園……未樹が住む第四区にある、ちょっとした規模の公園……に彼女とスケッチに行ったことはある。でもそれは、別段デートに誘ったわけではないのだ。先週、野瀬が写生会をやろうと言い出し、集まったメンバーの中に、未樹と僕が混じっていただけの話。先週の日曜、あの公園には美術部員がほかに三人いたのを、松ヶ枝は知らないのだ。

 しかし実際、笹野未樹と僕は、どうも絵の傾向が似ていることもあって、話は合った。

 細密な風景画を好み、得意とするところ。淡い色より、多少濃く鮮やかな色使いをする点。

 僕は彼女に似ていたし、彼女は僕に似ている。

 ただ、好意を持っているか、といえば、それはわからない。僕は、そういう意識を持つことを、できる限り避けたいと思っているし、それは多分彼女のためにもなるような気がするからだ。 なぜ? 僕が抱える堂々巡りの永遠の課題。僕は自他共に認める変わり者だから……。女の子に好かれるわけがないし、好きになっては相手に失礼だろう?

 好意を持つ持たないにかかわらず、彼女と接するのは楽しかった。気の合う人間と、好きな絵を描くことがこれほど楽しいとは、気づかなかった。部室から足が遠ざかり、何となく惰性にまかせた日々が続き、そして最近、ようやくまた絵を描くのが面白くなっている。僕は昨日久々に画材店へ行き、今年に入って初めて、新しくスケッチブックを買った。

 でも、未樹は絵を描くことをストレートに楽しんでいるわけではなさそうだった。例の『緑の絵』は、完成しないまま部室の隅のイーゼルに載っている。

 椅子の上に何を置くか。

 そのことが、彼女を悩ませているらしい。

三本目のスカイブルーが根元近くまで灰になっていた。

松ヶ枝が一つ大きなあくびをした。

 風に乗って、中央駅近くに建つ時計塔の午後一時を知らせる鐘の音が聞こえた。

『コニファー』で昼休みの一時を過ごした何人かが席を立ち始めた。松ヶ枝も三講目があるらしく、そろそろ出ようぜ、と僕をつつく。

 『スカイブルー』をもみ消すと、ひときわ白い煙が、初夏の光を浴びて拡散していった。


「もし、椅子の上に何かを置くとすれば、何を置く?」

「ううん、……植木鉢かな」

「植木鉢?」

「そう。例えば、そうだな、マリーゴールドとかより、サルビアみたいな、赤い花がいいんじゃないかな」

「赤い花……」

「駄目かな」

「しっくり来ないなぁ」

「じゃあ、ベンジャミンみたいな、観葉植物は?」

「駄目よ、背丈がありすぎるし、窓の外と同じ色になっちゃうもん」

「いっそのこと、何も置かないのはどう、」

「それじゃあ、夏森さんが買ってくれた、あの絵と一緒になっちゃう」

「そうだなあ」

「何かないかなぁ」

「未樹ちゃん、なんで俺が持ってる方の『緑の絵』が気に入らないの?」

「あれは、……何か、物足りないのよ。そうね、何も料理ののっていない食卓みたいな感じ」

「ふうん……」

「窓の外を引き立てるっていうか、絵に、ストーリーがないじゃない、あの絵」

「ストーリーね」


 僕らの会話も出口が見えない。


 三週間が過ぎていた。

 未樹には、僕だけが君の描いた森が見える、僕の部屋から見える景色はまさに君が描いている絵なんだ、とまだ伝えられないでいる。

 伝えてはいけない。不思議と、そんな気がするのだ。例えば、最後の最後に謎あかしが待っている、推理小説を読むように。

 彼女は一度も僕の部屋へは来たことがない。だから、未樹が描いている絵が僕の部屋そのままだということは知らない。

 僕だけが見える森。

 でも僕は、彼女なら、あの森が見えるような気がした。

 七月最初の日曜は、未樹の絵そのままのまるでパレットでといたように鮮やかな青空が、森の上に広がっていた。

 僕は窓際に佇み、もうすっかり風景としてなじんでしまった森を眺めていた。

 葉のざわめき、森の匂い。窓を開ければ、枝に手が届きそうだ。

この森は、彼女の想像イメージなのだろうか。

 僕はそんな疑問にとらわれる。

 彼女は、僕がこの景色を毎日眺めていることを、実は知っているのではなだろうか。

 僕は、未樹に森林生態研究所で会ったあの日、森が霞んだことを思い出していた。

出来損ないの立体映像。

 あれから、何度か『緑の絵』を持ち出しては、森を眺めた。気持ち、微かに森が霞むように見えた。目の錯覚だといわれれば、そうなのかもしれない。

 そもそも、森とは何なのだろうか。

 植物の極相?

 原始、過酷な陸地へ進出し、乾燥に強く生まれ変わり大地に根を張った頼もしい生命体。

 生物学的考察など意味がない。森はもっと身近だ。

森の道を歩くとき、僕は考えることがある。例えば、森が世界や人の一生に感ずるさまざまな出来事だとするならば、道をひたすら歩く僕は、今を生きていく僕自身の投影なのではないだろうか。

 ぬかるむ道、うねる道、分かれ道、アップ・ダウン。

 一人森を歩いていても、僕は決して孤独は感じない。夜、深甚な畏怖を感じさせる暗い森でさえ、僕は受け入れることができる。

 森は、僕の中にあるような気がするからだ。

 ややこしい話はよそう。

 未樹の絵は未だ完成を見ていなかった。毎日未樹一人、部室の隅で描けない絵の前で悩んでいた。僕はどうすることもできなかった。彼女の中の森を僕は見ることができないからだ。

 椅子。

 絵の中で、ちょうど椅子の部分だけが空白だった。

 描けない。つながらない。私の中で何かがつながってこない。

 椅子。

 日曜の午後、初夏の太陽は眩しい。僕は、机の前のくたびれた椅子を、彼女の絵の通りに置き、腰かけた。

 ベッドの上や、立ちあがった状態から見る森と、それは少し違って見える。

 頬杖をつき、ぼんやりと森を眺めていた。

 『スカイブルー』を箱から取り出し、一本くわえる。オイルライターで火を点けた。今日は、またひさびさに一発で点火した。そのき僕に予感が降りてきた。それは、彼女に会ったときに感じた既視感とは、正反対のものだ。

 森が僕にさやきかける。カケラたちはもうすぐ一つになる。未樹の森を僕は見ることができるようになろう、と。

 煙を逃がすため、少しだけ窓を開けた。

 緑の香りが、僕の鼻をくすぐった。どこかそれは、未樹の匂いに似ているように思えた。


 未樹から電話があったのは、翌日僕が夕食の準備をしていたときだった。ずいぶん上気した声で、すぐに部室まで来てほしい、彼女は言った。

 とりあえず炊飯器の電源が入っているのを確認すると、僕は部屋を出た。今なら、六時二七分に桜坂の電停を出る電車に乗れる。

 アパートを出た僕は、ハルニレ公園の手前で後ろを振り向き森を見た。なぜだか森が、僕を急かしたような気がしたからだ。

 大橋時計店の前に来たところで、車輪が軋むおなじみの音が、桜坂から聞こえた。ちょうど電車が到着したのだ。時間通り。

 電車は空いていた。こんな時間に中心街へ向かう客は、もうほとんどいないのだ。

 いくつかの電停を通過し、大学前の電停についたとき、空には見事な夕焼けが広がっていた。日没まで半時間あまり、表情を刻々と変える空は、僕の目に、はっきりと残る。

 学内はすれ違う学生も少なく、ボックス棟には、明かりのついた窓が数えるほどしかない。僕は一段飛ばしで階段を上る。交換されたばかりの蛍光灯だけ、変に白々としていた。

 部室のドアを開けると明かりはついておらず、夕焼けに照らし出された画材が、オレンジ色に染まっていた。

「未樹ちゃん、」

 部屋の隅のキャンバスを見る。逆行気味で、よく見えない。僕は目を細める。

「夏森さん」

 未樹は、部屋の奥で、稲積山へ沈もうとしている夕日を眺めていた。

「できたの?」

 僕が問うと、未樹は振り返り、黙ってうなずいた。

 潤んだようなひとみが、夕日を受け、一瞬きらりと光る。何だか、僕はこのまま未樹が一枚の絵の中に消え入りそうな不安にかられた。

 そうだ、この風景も僕は見たことがある。

 窓辺、夕日、振り返る女の子。

 それは、僕が美術部に入って、初めて完成させた絵だった。

すべて、僕の想像イメージなのか?

じゃあ、僕は、未樹の想像?

 どれくらい時間が流れたのか、部室はますますオレンジの帯の中に包まれていく。

 斜陽に、まるでスポットライトを浴びるように浮かんだ未樹の『緑の絵』。椅子には、後ろ姿の人間が描かれていた。左手で頬杖をつき、右手には煙草。後ろ姿で表情はわからない。だが、森をじっと見つめる若い彼は、さまざまな思考を巡らせている。そのことが、見るものにいろいろなストーリーを思わせる。

 僕。

 いや、あれは僕ではない。みんなだ。

 みんな、僕に似ている。

 僕も、みんなに似ている。

 そして、未樹も……。

「……いい絵、だね」

 未樹を振り向き、僕は言った。素直な感想だった。

「ありがとう」

 僕を見つめながら、未樹は答えた。

 僕の森。

 おそらく、森は僕の中にあるのだろう。だれもが持っている、森。実体として見えた僕の森は、絵の中に。

「……いい絵、だね」

 僕はもう一度呟き、未樹を見つめた。逆光線。微笑み続ける未樹。すべてがつながり、一つの輪になった。バラバラだったカケラたちは、キャンバスの中で一つになった。固定化され、結晶となり、安定したイメージたち。


 それ以後、僕は窓の外に、森を見ていない。


(おわり)


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