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桜と君の顔

初めて「小説家になろう」に投稿しました。

拙い文章ですが読んで見てください。

こんなことになるなんて夢にも思わなかった。

俺は病室でただ茫然としていた。


「パパあ、なんか頭痛い」

六歳の娘の愛華にそう言われたことが始まりだった。

最初はただの頭痛だとしか思わず、寝かしつけただけで、そこまで気にも留めていなかった。

しかし、明らかに愛華の様子がおかしくなっていった。

次の日、愛華は頭痛に加え、別の症状も訴えてきた。

「パパ、頭が痛いよ」

「なんか手が動かしづらい」

「フラフラする」

これはまずいと思い、愛華を近くの病院に連れて行った。

しかし医師は、別の、もっと大きな病院に連れて行くことを勧めた。

だから、県外の大学病院に連れて行った。

すると医師は予想外のことを言ったのだ。

「お父さん、落ち着いて聞いてください。娘さんは今、悪性の脳腫瘍によって脳を蝕まれています。放射線治療を施しても、もって半年かと…」

目の前が真っ暗になった。奈落の底に落とされた感覚に陥った。

愛華があと半年…?まだ六歳だぞ…?

愛華は大人にすらなれないというのか。

そこからの医師の話は耳に入らなかった。


愛華に全てを伝えることは出来なかった。

俺は家に帰ると物を投げ、とにかく荒れた。

これは夢だ。夢なんだ。

腕をつねった。でも痛かった。夢ではないのは明らかだった。だが信じたくなかった。

怒り、憤り、悲しみ

全てを吐き出すように暴れた。

涙が溢れた。


次の日、目覚めた俺の目の前には、荒れた部屋があった。その部屋がまた俺を現実に引き戻した。

「夢じゃ…なかったのか…」

俺は再び絶望した。

キィィ…

扉が開き、愛華が顔を出した。荒れた部屋と俺の顔を交互に見て、心配そうな顔で俺を見ていた。顔色は良くなかった。

その顔を見て、俺は気づいた。

俺なんかより、愛華の方が辛いに決まっているじゃないか。

なのに俺は自分だけが被害者であるかのように荒れていた…。

自分が情けなくなった。

愛華に話そう。全てを。

それぐらいのけじめはつけなくてはいけない。

俺は愛華を部屋に呼び出し、全てを話した。

「愛華、お前の体には今、悪いバイキンがいるんだ。そのバイキンはとっても強い。愛華は病院で頑張ってもあと…半年しか…生きれないんだ。それでも病院に行って頑張るか、病院に行かないかは愛華が決めなさい。急なことを言って申し訳ないが…決めてくれないか。愛華は…どうしたい?」

声が震えた。自分が泣きそうになった。

愛華は一瞬驚いた様子を見せたが、しばらくの沈黙のあと、決心したように言った。

「病院に行って戦いたい」

「そうか…でも病院に行ったら、注射とか、愛華にとって怖いこととか沢山することになる。それでも病院に行きたいか…?」

「うん」

「そうか…わかった。愛華がそうしたいなら病院に行こう。」

本当は病院に行って、入院なんてさせたくなかった。残された時間をずっと愛華と過ごしたかった。

俺は愛華の幼い時、事故で妻を亡くし、男手ひとつで愛華を育ててきた。わがままでちょっとずる賢い愛華には散々苦労させられてきたが、別れが近くなると愛華と過ごしてきた時間の全てがとてつもなく愛おしく感じてしまう。

ソファの上で一人、俺は昔愛華が言っていたことを思い出していた。

「パパ!愛華ね、大人になったらアイドルになる!アイドルのまわりの人はね、目がすっごいきらきらしてるの!愛華もみんなの目がきらきらしちゃうようなアイドルになりたい!」

涙が頬をつたった。

あぁ、そういえば愛華はずっと大人になりたがっていた。アイドルどころか、大人になることすら許されないというのか。

悔しさと、悲しみが込み上がって、涙を止めることが難しかった。


愛華の入院生活が始まった。愛華は毎日必死に頑張っていた。

注射も痛がらずに我慢した。薬の副作用にも耐えた。

そして何より、弱音を吐かなかった。


家から病院まで、車でニ時間。俺はできるだけ病院に行った。愛華を悲しませないようにするためだ。

愛華は毎日を必死に生きていた。しかし、少しずつ弱っていっているのは俺から見てもわかった。


入院して約半年。余命が刻一刻と迫っていた。

愛華は動くことすらままならなかった。1日のほとんどをベッドの上で過ごした。

放射線治療によって全身はむくみ、薬の副作用で髪が抜けていた。

食事はせず、点滴の栄養で命を繋いでいた。


ある日、愛華はいつもより穏やかな顔をしていた。

「…ねぇ」

愛華は俺に語りかけてきた。

「愛華…どうした」

愛華は顔を窓に向けた

「さくら」

外を見ると、満開の桜があった。

俺ははっとした。

ここ数ヶ月、めまぐるしく時は流れ、季節のことなど気にしていなかった。

その時、ふと思い出した。

愛華は桜が好きだった。

「パパ、見て、桜!桜!」

そう言ってはしゃいでいた。

だが今の愛華にはしゃぐ力は残っていない。ただ小さく微笑むだけだ。


満開の桜の中、愛華は息を引き取った。

「愛華、愛華ああ…愛華っ…うああああああああっ!!」

桜を見た時のあの愛華の笑顔を、あの拗ねた顔を、もう二度と見ることはできない。

あの元気な愛華に会うこともできない。

俺は泣き叫んだ。

崩れた。

壊れた。

俺は弱い人間なのだ。

窓の外では、桜の花びらが一枚、ひらひらと下に舞い落ちていった。

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