プロローグ
季節はめぐり春になる。4月8日、桜がひらひら舞い降りる中、私は朝早くから両親と一緒に家を出る。今日は私の中学校の入学式だ。今までとは違う制服を着て学校へ向かうが、着慣れないセーラー服に少し重みを感じる。
入り口で写真を撮り、新入生専用のバッチをもらい、自分の教室に向かう。教室までの道のりで、窓に映った自分は随分と大人びているように感じた。
教室に入り、席に着いたらすぐに、隣の子が話しかけてきた。
「ねえねえ、あなた名前は??」
「私は平井遙」
「よろしく!!私は——」
入学式のよくある会話を隣の子としながら、平穏な日々を感じる。そして実感する。ここにはもう彩芽はいないんだなと。少し安心しつつも、どこか寂しく感じた。
「遙ちゃんは、何か特技ってある??」
「特技??私は特にできることは何も…」
「そう??まだ話し始めたばっかりだけど、遙ちゃんは優しい気がするから、それだけで十分!!」
「そ、そうかな…??」
全く予想していない方向の回答が来て、私は少し驚いた。そして同時に、不思議と心の奥底から溢れる温かい気持ちが溢れ出す。今まで親に励まされた時にしか感じなかった不思議と安心するような、そんな気持ち。私は嬉しくなる自分を落ち着かせながら感謝を伝えた。すると相手はニッコリと笑って、こう言った。
「私たち、いい親友になれそうだね!!」
私はその言葉を聞いた瞬間、血の気が引いた。楽園から底なしの落とし穴に落ちたような感覚がした。これまでに刻まれた心の傷の隙間から走馬灯のように次々と当時の感覚が溢れてくるのを感じて、動悸が激しくなる。
彩芽によって刻まれた深い心の傷跡。その瞬間は、その傷跡が開くような感じがして、今すぐその場から逃げ出したいと思った。
「遙ちゃん??」
自分の中の世界に夢中になっていて、気がついたら相手は私の顔を覗き込んで不思議そうに見ている。そりゃそうだ。ここにいる人たちは、小学生時代の私を知らない。彩芽のことなんて私のことよりさっぱりだ。
つまり今の私は親友になると言うことを断ることもできる。環境が変わった今、もうここには彩芽はいない。つまり縛ってくるものは何もない。しかし同時に紫苑や奈月、美雲先生もいない。つまり親友という枷から、自分で逃げないといけない。
しかし私はもう、手遅れだ。彩芽がいない今でも心の奥底に絶対に外れない枷がはめられたまま今を生きている。その証拠に、私の頭の中に「断る」と言う2文字が存在しなかったからだ。
「そうだね、親友に……なれるといいね」
そう言った自分は、穏やかに笑っているが、目の奥が死んでいる。そんな自分が向こう側の窓に映っていた。
私はその時感じた。彩芽によってはめられた私の心の枷が外れることは、もうないのだと。
〜ご挨拶〜
どもども、ろったりかです♪
ここまでご覧くださった方、非常に粘り強いですね?
っと、そんなことは置いておいて、ここまで読んでくださってありがとうございました!
次回作はまだ未定ですが、気が向いたらまた書きます^^
親友と心の枷、これにて閉幕!




