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貞操逆転ギャルゲーに転生してヒロインのママ達ばっかり攻略してたらヒロインが病んだ  作者: マイヨ@電車王子様2巻【4/24発売】


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第33話 このマザコンが!

「で、何だよ慶喜。わざわざ授業をサボらせて」


 午後の授業の開始のチャイムを背中に、人気のない階段下のスペースに連れ込まれた俺は、連行した慶喜に訊ねた。


「……うるせぇよ大将。俺は午前の授業もサボってるんだよ」

「いや、それは俺に関係な」


「大ありだから言ってんだよ!」


 慶喜の剣幕に、俺も思わず背筋が伸びる。


「今朝、早見から電話が来たんだ。泣きながらな」

「綾乃から? いつの間にか仲良くなってたのか?」


「ああ。一方的に伝えておいてよかったよ。遅かれ早かれ、こうなると思ってたからな」


 溜息をつきながら慶喜が大きくため息をつく。


「で、綾乃はどうしたんだ?」

「……心当たりはあるんじゃねぇのか大将?」


 心配する俺に、ジトっとした目を向けてくる慶喜。

 それにより繋がる、週末のテニスの新人戦での綾乃のおかしな様子。


「まさか……理恵さんと俺の仲が綾乃にバレたか?」

「そうだよ。おかげで、俺は早見から泣きながら人生相談を受ける羽目になったんだよ」


 うーむ……。

 俺の予定では、まだ綾乃には理恵さんとの仲は隠しておくフェーズのつもりだったんだが、どこかでポカがあったか。


 俺も浮かれていたな。

 迂闊。


「まぁ、遅かれ早かれだったからな。綾乃は今どこにいる?」

「って、待て待て大将。何する気だ?」


「何って。綾乃に、理恵さんとお付き合いしてるよって言うだけだが」


 ことが露呈している以上、ここで変に取り繕うのは悪手だ。

 まぁ、幼馴染と自分の母親が恋仲というのは、娘の立場からしたら中々に衝撃の事実だとは思うが。


「それじゃダメなんだよ! お前、早見のこと、バッサリ振る気だろ!?」

「そうだが。それが一番だろ」


 その気も無いのに引っ張る必要は無い。

 そうやってサバッと介錯した方が、結果的には本人のためになる。


 俺も、中身はいい年の大人なんだから、そうやって嫌われ役を買って出るくらいの経験はあるし。


「それは絶対ダメなんだよ! これは世界平和のためなんだよ!」

「世界平和? 意味が分からん」


 そもそも、慶喜はなんでこんなに慌ててるんだ?


 どうやら、陰で綾乃の相談に乗ったりして親しくしていた様子だが、まだ入学して1か月も経っていない頃なのに、何をそんな必死になって。


「あ~~、やっぱ大将は、転生者だけど、ここがゲームの世界って知らない口かよ……」


 うぇ!?


「て、て、転生者? 何のことだか~」

「今更、そういう取り繕い要らねぇんだよ大将」


 何で、慶喜がその事を⁉


 たしかに、この男女比1:99の貞操逆転世界にしては俺は愛想のいい男を演じてきたが、そこまで逸脱した行動は取っていなかった。


 せいぜいが、ちょっとママが好きなだけで。


「憶えてるか? 大将と下の名前の話題になった時、『最後の征夷大将軍と同じ名前の癖に、そっちが大将呼びかよ』って」

「あ、ああ……。それがどうしたってんだよ」


 何も不自然なことは……。


「……こっちの世界の日本史では違うんだよ。徳川最後の将軍は……っていうか、初代から第十五代まで全て、こっちの世界では女が将軍だ。慶喜なんて名前の将軍は居やしない」


「──っ⁉」


 そ、そうか……。

 そんな所に罠があったとは……。


 男女比1:99の世界に転生して来て日が浅い俺では気づけなかったか。


 でも、そうするとおかしな話になってくる。

 じゃあ、何で慶喜は……。


「そして、俺も転生者だ」

「やっぱり、慶喜もなのか! 男女比1:1の世界からの」


「そうだよ。俺も大将も、男女比1:99貞操逆転ギャルゲー『月詠学園』にキャラとして迷い込んでるんだよ」

「お前も転生者⁉ ちなみにこっちの俺は、入学式からの記憶しかないんだけど」

「それは俺も同じ。で、大将が主人公で、俺がその男友達ポジションのキャラだ」


「そうなんか。ただ、俺は慶喜の言う通り、月詠学園なんてゲームは知らないんだよな」


 別にママキャラを攻略できると評判のギャルゲーじゃなければ、俺がプレイすることは無かった訳だし。


「だから、こんな正規ルートから外れてたんだな……。いきなりヒロインのママキャラを攻略しやがって……。そんなルート、ゲームに無いってのに……」

「いや、そこはほら……俺も別の世界に転生してはしゃいでいたっていうか……」


 なんだろ、この感じ。

 何か知らんが恥ずかしい。


「それで、ここからが本題だ大将」

「前から思ってたが、その大将って呼び方、どうにかならんのか?」


「うっせぇ! これはゲームでの慶喜の主人公の呼び方なんだよ! こっちがゲームのノリに合わせてるのに、肝心の主人公のお前が好き勝手に動きやがって!」


「な……なんかゴメン」

「俺の、ゲームのネームドヒロイン以外のキャラとハーレムを築く計画が台無しだよ!」


 いや、お前も好き勝手しようとしてたってことじゃん。

 こんなん、どっちもどっちだろ。


「話が逸れた……。で、早見綾乃ルートだが、恐らくはBADエンディングルートに入ってしまっている可能性が高い」

「BADエンディングって?」


「早見が、反男性テロリストグループを組織するルートだ。10年後に男性だけ死滅するウイルスを世界にばら撒いて、世界は滅亡する」


「はぁ⁉ なんだ、そのバカげた結末は! これ、ギャルゲーなんだろ!?」


 なんで、たかが高校での恋愛模様が世界情勢に影響を与えるんだよ⁉


「この月詠学園は、世界でも有数の俊英が集まっている。そんな彼女たちが、男性への想いを反転させたら、恐ろしいカタストロフィが起こるんだよ」

「ええ……」


 たかが、青春時代に一回や二回失恋したくらいで、世界を憎むとか世界を壊してしまおうとか中二病かよ⁉


「とにかく! 色んな意味でバッドエンドからは抜け出さなきゃいけないんだ! でないと10年後には俺も大将も終わりだ!」

「そんなのイヤだ! 折角、ママと楽しく過ごせる世界に来れたのに、10年ぽっちでこの世界が終わっちまうなんて!」


「そもそも、大将のせいなんだよ! 幼馴染の早見なんて、基本安牌の初心者ご用達ヒロインなのに、初手でいきなりゲームにないルートに進みやがって! なんだよ、ヒロインの母親と付き合いだすって。このマザコンが!」


「あ? 聞き捨てならねぇな。俺は全てのママ達を愛しているが、ただママに甘えてる訳じゃ……って、待てよ。綾乃が真実を知ったって言うなら、理恵さんが危ない!」


 ゲーム転生だ、世界が滅ぶだの荒唐無稽な話を聞いていて、すっかり気が逸れてしまっていたが、俺は重要な事を思いだした。


 そう思い至った俺は、慶喜の静止を振り切り、夢中で学校外へ走り出していた。

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