第3話 理恵ママは実質、処女!
「男性保護法に、男性特別手当……。本当にここは男女比1:99の世界なんだな」
帰宅し、家にあるパソコンで色々と調べたり、家にある書類などを眺めた結果、ここはやはり男女比1:99で貞操逆転している世界なのだなと再認識した。
「マッチングアプリも『男と本当に出会える!』みたいなのばっかりだし」
色々と調べていたら、あっという間に俺のブラウザのバナー広告は、その手のお見合い斡旋系のスポンサーサイトで埋め尽くされていた。
男女比が1:99なんだから、女の人が男とマッチングするなんて宝くじで高額当選するような確率のはずなのに、『当社のサイトでは続々カップル成立‼』と謳われていた。
これ、男はサクラじゃね?
「まぁ、こんな歪な男女比だから一夫多妻制は合法どころか政府推奨ね。はいはいテンプレ、テンプレ」
貞操逆転世界に夢や憧れを持っている奴ならワクワクする所なんだろうが、俺としてはそんな事はどうでも良かった。
だって、真っ先に調べたキーワードが空振りだったからだ。
「クソッ! なんで、ママを寝取ってOKという民法の条文が無いんだよ!」
パソコンデスクに振り下ろした鉄槌の衝撃で、机上のキーボードが少し跳びはねる。
本当にガッカリだ……。
前世でも、ママキャラを攻略できない事に絶望していたが、異世界へ転生させておいて尚、俺の願いを聞き届けないとは。
この転生を仕組んだ神のような存在を俺は呪いそうだ。
「はぁ……。そういや、この世界って男女比が1:99だから、あっという間に人口減少で滅ぶんじゃねぇの?」
腹いせに、こういう極端な男女比世界設定の弱点とも言うべき部分をつついてやろうと思い立った俺は、重箱の隅をつつくが如く、出生率等についてネットで調べ始めた。
「ふ~ん……。今の出産の大半は精子バンクを利用して人工授精で行われているのか」
でも、何故か人工授精だと男は生まれないから、男児が生まれる可能性のある男子は出来るだけ妻を娶って子作りに励むべしと。
一応、最低限の世界観設定の整合性は取ってるんだな。
「ほぉ~ん。そもそも婚姻できる女の人自体が希少で、大半は未婚の母なのね」
調べるのも飽きてきたし夜も更けてきた。
そろそろ止めて風呂入って寝るかと思って、俺はたくさん開いていたブラウザのタブを閉じていく。
そして、たまたま隣り合ったタブ同士を見た所で、俺は雷に撃たれた。
精子バンクのサイトと、シングルマザーに対する公的扶助制度についてのページの組み合わせが、俺の脳内にある仮説を稲妻のように走らせる。
「この世界は、人工授精で子を生す……。でも、大半は未婚の母……。という事は!」
慌てて俺はスマホを開き、連絡帳アプリを開く。
大して連絡先が登録されていないので、目的の人物の連絡先はすぐに見つかった。
『は、はいモシモシ。め、珍しいね。清彦の方から電話してくるなんて。あ、さっきの夕飯のお寿司、美味しかったね』
「夜遅くにすまない綾乃。至急確認したくてな」
『え、子宮⁉ う、うん……私はもう、準備オーケイだよ』
どうやら綾乃は、電話してても問題ないようだ。
でも、既に夜も遅い時間になってるので手短に済まさねば。
「あのな、綾乃。綾乃のお母さんの理恵さんは、結婚してたか?」
『……え? そんなのしてないに決まってるよ』
イエス!
「じゃ、じゃあ綾乃は人工授精で生まれたって事だよな?」
『う、うん……』
イエス! イエス‼ イエ~スッ‼
──って事はつまり、理恵ママは実質、処女だって事じゃねぇか!
ママなのに処女……。
ただでさえ神々しい存在であるママに、さらに処女性が加わるなんて。
本来は両立しえない矛盾した性質の組み合わせ。
これは、男女比1:99の歪な社会だからこそ生まれる奇跡だ。
ありがとう神様。
さっきは、クソとか天に唾を吐いてゴメンなさい。
一生、貴方について行きます。
「清彦は……やっぱり結婚相手は、純粋人間の方がいいの?」
蚊の鳴くような声が、電話口から聞こえる。
「ん? 純粋人間ってなんだ?」
『人工授精で未婚の母から生まれた命は紛い物で、男女の営みから生まれた人間こそが、純粋に人間だっていう考え方……。自然懐妊が出来た純粋人間は、イコール上流階級の人間だから、やっぱり清彦も奥さんにはそういう人を選んで……』
「なんだ、そのくだらない思想は」
『え?』
「心底くだらん。寧ろ俺にとっては邪教的な考えですらある。そんな物、この俺が決して認めない」
『清彦……』
「命を何だと思ってるんだ。綾乃にも、そして綾乃を産み育ててくれた理恵さんにも失礼だ」
ママが処女であるという奇跡を愚弄するだなんて、万死に値する思想だ。
そんな戯言を抜かす奴がいたら、俺が修正してやる。
『清彦……。私だけじゃなくて、ママの事まで大事に想ってくれてるんだね……』
「当たり前だろ」
『私、今とっても幸せだよ』
「奇遇だな、俺もだ。じゃあお休み」
何せ、今日はこの世界に純潔なママがいる事が判明した記念すべき日なのだ。
この日を一生忘れない。
俺がもし、ひとかどの人物になれたならば、今日、4月1日を祝日にする。
そう心に決めた俺は電話を切った。
今日は興奮で寝られそうにないな。
気付いてしまった主人公。
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