第11話 清彦くん! ち、違うの!
「ほら。入って入って清彦」
「お邪魔します」
放課後。
以前話していた通りに、俺は幼馴染の綾乃の家に来ていた。
「じゃあ、私の部屋行こ♡」
「いや。まずは、理恵さんに挨拶しないと」
「そんなのいいから。早く私の部屋に行こ♡ 私、もう我慢できないから」
「ダメだ。友人の家にお呼ばれする時は、保護者の方にきちんと挨拶するのがマナーだと俺はしつけられてるんだ」
無論、そんなのは方便で、単に俺が幼馴染のママの理恵さんに会いたいだけだ。
「ふ~ん、しつけね……。まぁ、いいや。ママ~。清彦が遊びに来たから、挨拶したいって~!」
2階へ続く階段へ向かって、綾乃が声を張り上げる。
この間、家の中の掃除をしたが、2階には綾乃の部屋と理恵さんの書斎がある。
今は、まだ日中の時間なので、在宅仕事をされている理恵さんは書斎の方に居ると思われたが。
「い……いらっしゃい清彦くん」
「あ、ママ。リビングの方に居たんだ」
「う、うん。清彦君が来るって綾乃ちゃんから連絡があったからさ」
そう言いつつ、理恵さんはソワソワ落ち着かず、視線も泳いでいた。
そして、その格好は。
「あれ? ママ。今日は外で担当さんと打合せあったんだっけ? そんなよそ行きの格好して化粧もして。メガネじゃなくてコンタクトだし」
娘である綾乃が言う通り、理恵さんは前回会った時とは違って、小綺麗な黒のニットセーターにサス付きのチェック柄のモカブラウンのロングスカートという可愛めコーデだった。
──いい……。こっちの世界のママって、とても高校生の娘がいるとは思えないほど若々しいから、こういう可愛めな服装も似合うな。
「う、うん……ちょっとね」
そう言いながら、理恵さんはチラッとこちらを横目で見てくる。
そんな理恵さんに俺は……。
「お邪魔してます理恵さん。お久しぶりです」
敢えて事務的な挨拶をする。
「え……あ……うん……久しぶり」
「この間は、夕飯を御馳走になっちゃいまして、ありがとうございました。綾乃と食べたお寿司、美味しかったです」
本当は前日に家に来ている事をおくびにも出さずに、俺は久しぶりに話をする体で理恵さんと話をする。
なお、これはわざとだ。
「ほら。挨拶したし、そろそろ私の部屋に行こ、清彦」
「おう」
急かす綾乃に腕を引っ張られる形で、俺はリビングを後にした。
去り際にチラっと後ろを見ると、何か言いたそうな理恵さんが佇んでいた。
◇◇◇◆◇◇◇
「ふ~っ。ちょっと部屋の中、暑くない? 清彦」
「いや。春先のいい気候だよ」
「ちょっと私、制服の上着脱ぐわ」
「窓を開ければ気持ち良い風が入って来るよ」
「それだと、始まった時に外に音が聞こえちゃうよ……」
「始まるって何が?」
「え⁉ そ、それは……」
「ほら。明日から授業が本格的に始まるって言ってたから、英語と数学の予習するよ」
「うう……」
すっとぼけてカバンからノートを取り出し、綾乃の部屋に置かれたちゃぶ台に座ると、しぶしぶ綾乃も自分のノートを取り出して、ちゃぶ台の上に広げる。
──フフッ。綾乃の奴、やりたいオーラが出過ぎだっての……。
知らんぷりしつつも、心の中では笑いを堪えるのに必死だった。
前世の感覚で言えば、ようやく女の子を自分の部屋に連れ込めた童貞男子みたいなもんだよな。
そりゃ、色々と必死になるし、色々とあからさまになるわな。
(チラッ。書き書き。チラッ。チラッ。チラッ。書き。チラッ。チラッ)
綾乃、めっちゃこっち見てくるし。
全然、勉強に集中出来てねぇじゃん。
そりゃ、そうだよな。
思春期男子の精神ならば、自分の部屋に異性と2人きりで、集中何て出来ないよな。
「の、飲み物取って来るね! ちょっと時間かかるかも!」
まだ勉強が始まって15分くらいしか経っていないが、モヤモヤもんもんが止まらずといった様子で、綾乃は堪らず席を立って部屋を出て行った。
階下に飲み物を取りに行くのに、何で時間がかかるのかは分からないが、まぁ女の子にも色々とあるのだろう。
──それに、こっちとしても、ある程度の時間、席を外してくれるのは好都合だしな。
そう思った俺は、ゆっくりと音をたてずに歩いて綾乃の部屋を出る。
そして、すぐ隣の部屋のドアを勢いよく開ける。
「っ⁉ 清彦くん! ち、違うの! これは、その……」
急に部屋に入って来た俺に向かって、理恵さんは必死に弁明を始めた。
だが、残念ながら入室した時点でスマホカメラのムービーを録画状態で回していたので弁明は無意味だった。
俺が入室した瞬間。
理恵さんが、コップを壁に当てて、聞き耳を立てている姿がバッチリ映っているのであった。
ここ、エッチな同人マンガ展開やな。
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なお、ここ最近投稿時間が遅めなのは、インフルエンザで家族が私以外全滅したり、私も中耳炎にかかっているからなので、回復したら元の投稿時間にもどると思いますので、あしからず。




